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それは、繰り返す物語

 女は、とある王国の海の深くに住む魔女だった。

 彼女は、自分が魔女になれたと気付いた時、とても喜んだ。

 なぜなら薬の中身を変えられるから。

 魔女は、声を失わずに人間になれる薬を研究し始めた。

 そして、深く絶望した。

 どれだけ作っても、何度材料や作り方を変えても、声を失わずに人間になる薬は完成しない。

 まるで、そうなることが決まっていたかのように声を代償としなければならなくなる。

 ついに魔女は自分の舌を切り落とした。

 代償となる声を人魚姫の声ではなく自分の声にすればいいんじゃないかと思ったから。

 しかし、その薬は完成しても効果が発揮される事は無かった。

 何も変わらなかったのである。

 後少しで人魚姫がやってくる、魔女は薬を渡さないことにした。

 渡せば人魚姫は死んでしまうから。

 だから、魔女は今まで作った薬を倉庫の奥底にしまいこんだ。

 魔女は人魚姫を追いやった。心は痛んだが人魚姫が死なない為には必要なことだと思い我慢をした。


 翌日、魔女のもとに人魚姫の姉達が訪ねてきて、人魚姫に飲ませたのはどんな薬かを聞いてきた。

 魔女は困惑した。自分は薬を渡さなかった、しかし姉達が訪ねてきている。

 魔女は急いで倉庫を調べた。

 すると置いていた筈の薬が一本分消えていた。

 魔女は絶望して自らの命を断った。


 女は、とある王国の海の深くに住む魔女だった。

 魔女は驚いた。

 連続で同じ人物になったことは無かったから。

 それでも、魔女は人魚姫を救うため人間になる薬を全て処分した。


 人魚姫は魔女が眠っている間にレシピを見つけ、薬を作っていった。

 魔女は自害した。


 女は、とある王国の海の深くに住む魔女だった。

 魔女は薬のレシピも、処分した。


 人魚姫は偶然薬を作りあげてしまった。

 魔女は自害した。


 女は、とある王国の海の深くに住む魔女だった。

 魔女は材料も全て処分した。


 人魚姫はそれでもどうにかして薬を完成させ、陸へ向かう。

 魔女は自害した。


 女は、とある王国の海の深くに住む魔女だった。

 人魚姫は薬を手に入れた。

 魔女は自害した。


 女は、とある王国の海の深くに住む魔女だった。

 人魚姫は薬を手に入れた。

 魔女は自害した。


 ▽ ▽ ▽


 幾千幾億と繰り返される世界、魔女は姿を変えることを許されず。人魚姫の命を奪う薬の原因として生きていく。

 何時からか魔女は、声を失い、死へ向かう人魚姫への贖罪のため、自らの声を無くすために舌を切り落とすようになったのだった。

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