それは、知ってしまった物語
女は、とある王国の海に住む人魚の姫の5女だった。
女は頭が割れそうになるほど混乱した。
なぜなら、海の中で呼吸ができていたから。
人魚という存在が存在していたから。
そして、あの女性が末っ子だったから。
妹である彼女は、歌が大好きで歌っていない時はないと言われるほどの女の子だった。
また彼女は、まだ見ぬ陸上の地に憧れてもいた。
女も、他の姉妹も、彼女にねだられ外の話を聞かせてやった。
特に彼女は女になついた。女の話はまるで地面に立っているかのような語りで、さらに他の誰もが知らない歌を歌えたからである。
そして、彼女が15歳になり、外の世界を見ていいと許可されたその日の夜、秘密の話として彼女に打ち明けられたその話に女は驚愕する。
それは、彼女が王子を助けたということ。
そして、彼女が王子に一目惚れしたということ。
声を失っていたあの時の目に宿る思いの強さを知っていた女は、王子を思う事を止めさせることができなかった。
そして女は数日後、彼女が声と引き換えに海深くの魔女から足を生やす薬を貰い、地上へ向かった事を知る。
その数ヶ月後、女は彼女が王子と結婚しなければ泡となって消えてしまう事を知る。
だから女は彼女が助かる方法を探した。なぜなら、王子の横に立つのは彼女じゃないと知っているから。
探しだした方法、王子を殺す事が彼女を救う事になるのなら髪なんて必要ない。
女は魔女に自分の髪を渡す。
そうやって手に入れたナイフを彼女に手渡した。
しかしその夜、彼女が渡したナイフを捨て、泡となって消えていく姿を女は目の当たりにする。
狂いそうになる心を抑えて女は思う、自分はどうなってもいい、彼女が幸せになれる世界ならなんだっていい。
そうしてもう一度世界が繰り返すことを願い、心臓にナイフを突き立てた。