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それは、同じ世界の物語
男は、とある王国の漁師だった。
漁師は物心ついたころ、動揺した。
それは前世で兵士をやっていた記憶持っていたため。
そして、その記憶と同じ流れで世界が動いていたため。
漁師は大きくなり、前世の自分が住んでいた町を訪ねる。
漁師はそこで酷く驚愕することになる。
なぜならそこに住んでいたのは見たことのある顔だらけだったから。
まだ若い、見知った仲間達、人気だった飲食店の看板娘。
漁師は前の自分の家へ急ぐ。
そこには自分がいた。前世と全く同じ顔の自分と家族が居たのだ。
この世界に恐怖する漁師の心の中に一つの思いが生まれる。
全てが同じ世界なら、あの女性に会える。
あの女性にもう一度会いたい。
漁師は兵士となり、国に仕えた。
以前の記憶のお陰もあり、王子の近衛となれた。
そして。
王子と一緒に嵐へ巻き込まれて、兵士は溺れ死ぬこととなる。
薄れゆく意識の中で、兵士は王子を抱えて泳ぐあの女性を見た気がした。
兵士は沈んでいく。
女性の下半身が魚のようになっていた事を幻覚だと思いながら。