マンドレイクの網
「マンドレイク? そろそろ実をつける時期だっけか」
「そう! それなのにマンドレイクの元気がないらしい! これでは大収穫祭は中止だ!」
「あんな祭り無くなってしまえ」
「そういうわけにはいきませんよ」
コカナシが入ってきて扉を閉める。
「去年もいいましたがあの祭は我が家の収入源の一つ。火の車というわけではありませんがあの祭が無くなるのは大打撃です」
「う……それを言われると」
「因みに今キミア様は手を離せませんし私は家事があります」
「残るは君かミス・トモノになるが……君は恋人に行かせるのかい?」
「…………」
こんなの選択肢を与えられてないようなもんじゃ無いか。
「わかったよ。で、俺は何をすればいいんだ?」
「それでこそ我が友! とりあえず現場に向かおうじゃあないか!」
*
「ふむ、これはダメだな」
マンドレイクが多く自生している裏山に俺とアデルはいた。
アデルが手に取ったマンドレイクは素人の俺から見ても状態が悪い。
「少し奥へ行ってみよう。奥に行くほどマンドレイクは多くなるんだ」
アデルについて俺も歩きだす。
「そういえばマンドレイクの実を見たことはあるかい?」
「そういえば見た事ないかも」
錬金で使う時もあるが、成分だけ粉末状に加工されていたりコカナシが他のものと混ぜた後だったりして実自体を見たことは無かった。
「奥にあるマンドレイクの方が成長が早くてね、ここら辺になると実が付いているのが……ほら」
アデルがそう言ってマンドレイクを引き抜く。断末魔のような根の音と共に外へと出たマンドレイクの先には赤緑の実が付いている。
「なんかトマトみたいだな」
「うむ、昔は間違えて食べて大変な事になっていたらしい。そして……」
アデルは少し奥の方を指す。
「アレを取り除くのも中々大変そうだぞ、タカ」
*
成体になると地面から出てうごめく根。未だ謎は多いが地面から出るために周りの土をほぐす為だという説が有力である。それなのに……
「これはどういう事なんだ」
「僕にも全くわからない」
目の前に広がるのは絡まり合う根の壁。まるで壁のように、俺たちの背ほどまで伸びて立ち塞がっている。
「と、とりあえず迂回して進むか?」
「残念ながら川に挟まれているから迂回するなら相当な遠回りになる」
「じゃあコレを退かすしかない、か」
ため息をついて根を掴む。うわ、硬い。
「ちょい、手伝って」
「おうともさ!」
アデルと二人で根の網を揺らす。しかしビクともしない。
「僕の魔法で燃やしてしまおうか」
「山火事まっしぐらだろうな。あと魔法じゃないな」
アデルは網をもう一度引っ張ってため息をついた。
「今日のところは帰ろう。キミアに頼んで除草剤でも貰おうか」




