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錬金薬学のすすめ  作者: ナガカタサンゴウ
勝利の大味は大犬も喰わぬ
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大犬の後日談

「……ん」

 目を開ける。腹が減った。

「あ、起きましたか」

 声のした方を見るとコカナシがいた。

「どれくらい寝てた?」

「一日と数時間くらいですね。体調はどうですか?」

「少し疲れはあるけど問題ない。食欲があるくらいだ」

「なら大丈夫ですね」

「先生は?」

「奥の部屋にいます。入ったら怒られるかと」

 錬金術に関するなにかをしているようだ。また新薬の開発かな?

「まだ宿のレストランは開いてませんし……外に行きましょうか」


 外に出ると薄っすらと外が赤くなっていた。冬だしちょうどおやつ時といったところか。

 近くにあったファミリーレストランに入る。俺は普通に食事を、コカナシはデザートを食べすすめる。

「あの後どうなった?」

「白狼の事ですか? 今は競技場で療養中です。競技場は前のパブロフ襲撃の修理中なので」

「療養後はどうなるんだ?」

 研究価値があると言っていたしそういう施設に送られるのかもしれない。それはなんとなく……嫌だな。

「基本は野生に、亜鉛が足りなくなる頃にはグリムさんが責任を持って亜鉛製剤を投与するそうです」

「よかった……」

 ほぼ放し飼い状態だ。亜鉛が足りていれば白狼が暴れまわる事もないだろう。

 色々考えているとコカナシがフォークを置いて口を拭いてこっちを見る。

「白狼が気になっているようですね、見に行きますか?」


 *


「あ、タカくん。もう大丈夫なの?」

「はい。元々体力を使いすぎただけなので」

「それって極限状態だと思うけどなぁ……」

 競技場で出迎えてくれたのはグリムさんだった。

「あの時はありがとう。白狼を見に来たのよね? 案内するわ」

 競技場の一番広い所に出ると白狼が食事をしていた。

「経過は順調よ、もうすぐ外にも出れるわ」

 コカナシが少し近づくと白狼は敵意をむき出しにして大きく吠えた。

「きゃあ!」

「ああ、怖がらなくて大丈夫よ」

 グリムさんが撫でると白狼は黙って食事を再開する。

「グリムさんは大丈夫なんですか?」

「たぶんタカくんも大丈夫だと思うわよ」

 背中を押されてゆっくりと白狼に近づく。気づいた白狼が俺から目を離さない。

 目の前まで近づいたところで白狼が声を上げた。コカナシにしたように吠えた訳ではなく、甘える犬のような声だ。

 撫でてやると顔を舐められた。すげぇ可愛い。

「やっぱり私とタカくんは大丈夫みたい。白狼からすれば味方なのでしょう」

「ここまでくると白狼というより大きい犬ですね」

 どうしてこんなに大きいのか。そんな根本的な疑問をグリムさんに投げかけた。

「専門家の話では突然変異、人間でいうソトス症候群だっけ? それとにた物らしいわよ」

 ソトス症候群は簡単に言うと成長が止まらない病気。人間なら最終的に少し大きいくらいに収まるが犬だとそうはいかないのかもしれない。

「大きくなりすぎる以上寿命は短くなるけど……それ以外は今のところ問題ないって」

「不幸中の幸い、か」

 呟くと同時にグリムさんが手を叩く。

「忘れてた。タカくんにお願いがあったの」

「……?」

「この子に名前を付けて欲しいの。いつまでも白狼じゃおかしいでしょ?」

「俺でいいんですか?」

「他に適任はいないわ、タカくんはこの子と繋がっているんでしょう?」

 コネクトの事だろうか。錬金石そのものを飲み込んだから数年の間は俺と白狼には切れない、ほどけない繋がりがあるはずだ。

「だからタカくんが名づけてあげて」

 笑顔で言われて考える。ほどけない繋がり、か……

「じゃあ……イアンで」

「犬種のイワンをもじったのですね」

「イアン……とてもいい名前ね!」

 イワンをもじったのもあるがそれだけではない。運動をするグリムさんはもう一つ由来に気づいているようだ。

 もう一つの由来はイアン結びだ。

 イアン結びというのは靴紐の結び方で、スポーツ選手なども好んで使う結び方である。

 なぜこの結び方が好まれているかというと一つは慣れたら素早く出来ること、そしてもう一つは……解けない結び方、だからである。


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