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陽が廻る

「あのねあのね、錬金術見れたんだ！」

　夕飯の席、ゲンが郷土料理に目を輝かせている向かいでコカナシもまた同じようにしていた。

「よかったねえ。見たいって言っていたものね」

　母親の言葉にゲンが口の中の物を飲み込み、代わりに疑問を吐き出す。

「錬金術に元々興味が？」

「ほんの数日前からですけど、違う錬金術師の方が来られていましたのよ。昨日旅立たれましたけど」

「へえ、珍しい。知り合いかな」

「たしか……アルスさん、でしたね」

　その名前に反応しない訳がない。キミアとゲンは机をひっくり返しそうな勢いで立ち上がる。

「何か言っていましたか？」

「特に何も……」

「……それなら、いいですけど」

「何かあったんですか？旅立つ前に料理を振る舞ってくださったり、言葉数は少なかったですけど良い人でしたよ？」

「いや、少しばかり。家庭のいざこざと思っていただければ。それよりこの料理に使っていたあの調味料ですが……」

　＊

　日は地の裏側へと渡り、二人は客室のベッドに座っていた。

「どう思います？」

　主語につく名詞はもちろんアルスだ。

「錬金術師として最高こ環境であるイスカを出たって事はお前を……いや、エルフの血を探しに来たか」

「そうですよね……」

「ともかく此処を出たというのなら危険はないだろう。ルートを少し考えなおすのは……ま、明日でいいだろう」

　取り出した地図を開く事なく、ゲンは布団に包まる。それを見てキミアも同じようにする。

　日が反対渡り、また二人の立つ地へと顔をだす。その陽を見た村人は、一人としていなかった。