一歩進んで躓いて
「はっはぁ! すげぇ盾だな! 叩いても叩いても壊れやしねぇ! 頑丈なサンドバッグだなぁ!」
あの大剣に俺の装備じゃ心許なく、俺と智野はコンパクトガードナーで攻撃を凌いでいた。
「しかし、殴った感触が薄い……衝撃吸収かなんかだろ? でも吸収ってのは……」
一度間合いを取り、一瞬で詰めてきて長女は叫ぶ
「限界があるよなぁ!」
早く重い一撃。なんとか受け切ったが……長女の言う通り限界が来た。
再度衝撃吸収をするには排熱が必要だ。しかしそれが終わる前に……そう、今まさに長女の追撃が……
あと少し、あと少し時間があれば……
「排熱!!」
長女の刃が当たる瞬間、智野が叫んでボタンを押す。
排熱機能が起動し、盾の表面から蒸気が発せられる。それはもちろん高温なわけで……
「あっっちぃ!?」
長女が一歩下がる。その僅かな時間で彼が間に合った。
長女の後ろの廃棄路からモウが飛び出す。その手には警棒のような武器。
「てめっ、それは……っ!?」
棒が軽く触れると同時に高電圧が発生し、長女の身が硬くなる。
「智野!」
「わかった!」
モウを脇に抱え、車椅子に足をかける。
「……トンズラ」
今更ながら車椅子らしからぬエンジン音と共に発進し……
何かに躓き、俺たちは投げ出された。
*
「クソッタレが……」
数分も経っていないのにユラユラと長女が立ち上がる。
ゆっくりと、されどしっかりと歩き、車椅子から落ちて気を失ったらしい智野の前に立つ。
「その動かしにくそうな足から切り落としてやるよ」
長女が両手でゆっくりと大剣を持ち上げる。あの状態の長女からなら走って逃げれるだろう。
「錬金……開始」
腹の底に力を入れ、身体全体に体力を巡らせる。倒すことは無理だ、だから智野を抱えて走れるだけの、最低限の身体強化を……
長女の大剣と俺の錬金は同じ音によって停止する。長女のポケットの通信機が大きな音を鳴らしたのだ。
大きく舌打ちした後、大剣を智野の首元まで下ろして長女がソレを取る。
あれでは智野を怪我なく回収できない。また振り上げるのを待って……
「ああん? こっからだろうが! ……ッチ、わーったよ」
長女が通信機を持ったまま背を向ける。
「ビルケの野郎がお前らは殺すな、だとよ。まあ、つまり……生け捕りってやつだ」
言葉が終わると同時に床が消滅する。いや、今の感じからして
「錬金術……分解か!」
気付いた時にはもう遅い、俺たちは長女を残し地下へと落ちていった。