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錬金薬学のすすめ  作者: ナガカタサンゴウ
悪性に対する十戒とソウサク劇
129/200

ワトスンが心得るべきロナルドのルール

 ワトスンに任命された翌日。早速デュパンさんが訪ねてきて、調査に赴く事となった。

「さて、事件のおさらい……の前に探偵助手としての心構えだな。えっと……トモノちゃん、ノックスの十戒って知ってるか?」

「はい、本格ミステリにおいて守るべきルール……ですよね」

「内容はどこまで覚えてる?」

「えっと、確か……」


 1 犯人は物語の当初に登場していなければならない


 2 探偵方法に超自然能力を用いてはならない


 3 犯行現場に秘密の抜け穴・通路が二つ以上あってはならない


 4 未発見の毒薬、難解な科学的説明を要する機械を犯行に用いてはならない


 5 中国人を登場させてはならない


 6 探偵は、偶然や第六感によって事件を解決してはならない


 7 変装して登場人物を騙す場合を除き、探偵自身が犯人であってはならない


 8 探偵は読者に提示していない手がかりによって解決してはならない


 9 ワトスン役は自分の判断を全て読者に知らせねばならない


 10 双子・一人二役は予め読者に知らされなければならない。


 言い終えるとデュパンさんの頭の上に疑問符が浮かんでいた。

「殆ど完璧なんだが……中国人ってなんだ? 俺は万能の怪人って記憶してるんだが」

 そうだ、この世界に中国はないんだった。

「その、同じような意味です。方言みたいな感じで」

「ああ、ならば問題なし。この十戒ってのは意外と実際の事件でも役に立つんだ。俺はこの十戒を基本として捜査している」

「では、犯人は物語の最初から登場している……?」

「犯人は現場に戻る、みたいなものだ。犯人と探偵が超能力を使わないとか常識的なものは省くし……まあ心構えくらいに考えておけばいい」

「なるほど」

「てなわけで犯人だけでなく関係人物は最初に登場、もとい出会っておく必要がある。まずは事件に関わった村人と話すことからだ」


 *


「今まで起きた事件は五件。うち三件は俺が来る前の話だから村長に話を聞こう」

 村の集会場所だという建物にわたし達は入る。中には村長と食事の時にもいた男の人が座っていた。

「探偵さんの助手に任命されたようで、彼の近くにいれば安心です」

 その安心はわたしの身の安全なのか、それとも犯人候補の監視なのか……いや、考えすぎだろうか。


「とりあえず事件のおさらいをしたい。完結でいいから話してくれ」

 皆の前にお茶が運ばれたところで村長が咳払いをする。

「一つ目の事件は狩りに出た青年、当時は獣にやられたと考えていたが今思うとこれも誘拐事件かもしれん」

「この時村を離れていたのは別の狩人の青年……ワトソンは彼が犯人だと思うか?」

 わたしは考える。状況から見て彼は怪しい。しかし彼が犯人ならばアリバイを作ろうとするだろうし、何より……

「他の村人全員にアリバイがあるわけじゃないですよね?」

 満足そうにデュパンさんが頷く。

「その通り、次の事件で彼の無実は証明される」

 デュパンさんが視線を向けると村長はまた口を開く。

「二つ目の事件は先の事件で村を離れていたもう一人の青年が行方不明」

「この時村の皆は犯人であった青年が逃げたと勘違いした……ですよね?」

 村長は頷く。

「三つ目の事件。犬の散歩をしていた少女が行方不明となった。

 連れていた犬は死体で発見された」

「ここで俺が呼ばれて捜査を始めたってわけだ。ありがとう村長さん」

 残ったお茶を飲み干してデュパンさんは立ち上がってハットを被る。

「次へ行くぜワトソン君」

「何処へ?」

「次の事件のおさらいさ、次はちょっとばかし……身と心に染みるかもしれないぜ」

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