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錬金薬学のすすめ  作者: ナガカタサンゴウ
ホーンテッド・にゃんション
119/200

音楽の天使

「ようやくみつけた!」

 廃墟の中を探索しているとケイタ様が浮遊しながら俺たちを呼んだ。それに一番驚いていたのはニャルである。

「浮いてる……幽霊の正体は味方にいたのね」

「幽霊には近い存在だけれど正確には違うよ。死んだ後に錬金術でコーティングされた幽霊のパチモンだよ」

「でも私が見た中で一番幽霊に近いわ! 話を聞かせて!」

 ケイタ様は苦笑いを浮かべながらニャルをあしらって俺たちの元に来る。

「この廃墟は広いね、四人いるなら二手に分かれようか」

「じゃあ、あたしは幽霊さんと!」

「だから幽霊では無いんだけど……まあ、いいか」

 早くも諦めたらしく二方向を指す。

「僕たちはあそこから繋がってる別館を調べる」

「じゃあ俺たちは本館をこのまま進んでいくか」

 智乃が頷いたのを見て、俺たちは二手に分かれた。


 *


「さて、幽霊を探すんだったか」

「違う、猫たちが眠っている原因でしょ? ニャルちゃんに毒されすぎ」

 そんな雑談をしながら歩いていると後ろに強い気配を感じた。

 二人同時に立ち止まって前を見ながら口を開く。

「智乃、後ろを見てみないか?」

「そういうのは男の人がやるべきじゃない?」

「俺は男女平等だしレディーファーストなんだよ」

「一文だけで矛盾してるし使い方間違ってると思うよ」

「ともかく俺は見たくない」

「じゃあこのまま後ろを見ずに進む?」

 それは嫌だ。正体が分からない方が幽霊を見るより怖い。

「じゃあ……あれ?」

 突然気配が消えた。ゆっくりと後ろを見たが虫が数匹舞っているだけである。

「なあ」

「なに?」

「見といた方が怖くなかったんじゃないか?」

「……同感」


「また消えた」

「……うん」

 あれから数分ごとに俺たちは背後から気配を感じている。一分ほど待つと消えるのだが、少ししたらまた現れる。

「あれだ、ケイタ様がネッコワークの猫を護衛につけてくれたんだよ」

「猫はここでは寝ちゃうから調査しに来たんじゃない」

「もうそういう風に思っておけよ、てかわかっても言わないでくれ」

「それだとわたしだけが怖くなっちゃう」

「俺を巻き添えにする意味はないだろ」

「なんでも隆也と一緒がいいの」

「……可愛く行っても騙されないぞ」

 不意打ちだったから少しときめいてしまったじゃないか。

 またもや気配を感じて戻りかけた心拍数が増加する。

「もう見てしまわないか?」

「うん、裏切りは無しね。もし裏切ったら一生軽蔑するから」

 それは嫌だ。逃げ場を塞がれたので覚悟を決めるしかあるまい。

「いくぞ、せーの!」


 *


「幽霊じゃなくてジェイソン的なホラーなのかな」

「いや、それよりはアレだ、エリックだかなんだか……」

 智乃の声は震えている。もちろん俺も同じである。

 俺たちが見たのは紳士服を着た男性。しかしその顔は仮面に隠れて何も見えない。

 足はある、浮いてもいない。かといってこの猫島に人はいない筈だ。

 仮面の男は怯える俺たちを見てシルクハットを持ってお辞儀をする。

「ご……ご丁寧にどうも」

 顎から汗が落ちる。冷や汗ではなく体を冷やす為のソレだ。

「隆也、暑いよ」

 それはおかしい。この廃墟は森の中にあって川も流れていて少し肌寒いくらいだったはずだ。

 仮面の男はシルクハットを頭に乗せ、仮面に手をかける。

 そのまま仮面をはずし……

「智乃! 全速力!」

「わかった!」

 ヨロズさんが男心でつけた超速エンジンを起動させる。街中でやると白い目で見られそうなくらいの爆音を鳴らして車体が震える。

「逃げろー!」

 叫ぶと同時に智乃が出てきたハンドルを回す。仮面の男とは逆方面を向いて車いすはその全力をだした。

 少し離れたくらいで後ろを向く。男の右手には外された仮面、しかしその下の顔は遠すぎて見えない。

 そんな幽霊というよりは怪人のような気配を発していた男を見て俺は息を飲む。

「まるで……オペラ座の怪人じゃないか」


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