あれ、私がヒロインの筈なのに…
…私、ヒロインよね?
私、香山リカには親友がいる。その子、藤咲カレンはとても可愛い。まるで、ゲームに出てくるヒロインの様な……
いや、実際は私がヒロインのはずなんだけどね?
ぶっちゃけると、私は転生者です。
しかし、ヒロインの立ち位置はそのままに顔が前世のまま生まれてしまいました。要するに、平凡顔。
私も「こんな平凡な私がヒロインとかありえんわ(笑」とか思ってたんだけど…
この世界が、《アーティルフルラバー》という前世にあったゲームの世界そのままで、私の名前がヒロインと同じで、攻略対象の兄も現実にいるから多分私はヒロイン。
おっかしーなぁ。兄はゲーム時のままめっさイケメンなのになぁ。何故、私は平凡顔…。
「もう、お昼休み始まったよーリカちゃーん!さっきからボーとして、どーしたのぉ?」
おっと、噂の我が親友・カレンちゃんが迎えに来てくれた。まじ可愛い。
「えへへ。ごめん、ごめん。すぐ準備するね!」
私達は、お昼は食堂で食べるのが日課なのだ。
「うっわ。混んでるー…」
食堂は既に混雑していた。カレンちゃんは「そうねぇ〜」とあんまり気にしてなさそうにしているが、私は知ってる。
昼休みが始まってすぐに食堂に来ていれば、席は取れたのだ。それなのに、私がボーっとしていた所為で取れなかった…
しょぼんとしていると、
「あれ、藤咲たちじゃん。どうした?……なるほど、席取れなかったんだな。」
隣のクラスの佐々木リオが声を掛けてきた。『気の良い同級生な攻略対象』佐々木リオだ。…が私は知ってる。佐々木がカレンちゃんのことを好きなこと。
「大方、香山がボーっとしてたせいなんじゃないか?藤咲に迷惑かけんじゃねーぞー。」
う。その通りです。
佐々木はいつも私のことをからかってくる。いや、今回はまぁその通りなんですけど。
「そんなことないよ。私達は今日は中庭で食べるの。食堂にはたまたま寄っただけよ。…だから、席譲ってくれなくたって構わないわ。」
あぁ、カレンちゃんが私をフォローしてくれた!優しい!もう、絶対カレンちゃんがヒロインで良いんじゃないか⁈
そして、ごめんよ佐々木。折角荷物退かす準備してたのに…
「リカちゃん、購買行こー。それで中庭で食べよーよ。私、とっておきの場所知ってるんだぁ。」
購買は時間が遅かった為か比較的空いていた。お昼休みが始まってから時間が経っていたこともあり、私は調子に乗って何個もパンを買ってしまった。太る…。
「香山。」
不意に私の名前が呼ばれた。振り返ると、『堅物だが情熱的な攻略対象』風紀委員長・瀬野ヒロヤ先輩がいた。
瀬野先輩とは面識がある。入学した当初にカレンちゃんのファンクラブが発足された。その時に、ファンクラブ内で揉め事が起きた。瀬野先輩はその揉め事を諌めた1人だ。その時の揉め事には私も関与したから(決して、私は喧嘩には参加してない)そこで瀬野先輩と知り合った。…カレンちゃんを通して知り合うとかマジヒロインカレンちゃんだわ。
「先輩?リカちゃんに何か?」
じーと私を見つめる先輩にカレンちゃんが代弁してくれた。
「いや、君の食事はそれだけか?見た所、菓子パンばかり選んでいるな。それでは、食事のバランスが悪い。…藤咲の様にサンドイッチなど食事用のパンも選ぶべきだ。」
「うぅ。そうですね…」
よくよく見ると、私の選んだ沢山のパンはどれも菓子パンばかりだ。気が付かない内に甘いものばかり選んでいたらしい。よく気がついたな、先輩…
「しかし、どちらにしてもパンだけというのは如何なものか…。そうだな。折角だ。今度、香山の分の弁当も作って来ようか…」
「え、先輩ってご自分で作ってるんですか⁈凄い!わぁ、楽しみ!是非!やったぁ!」
そこまでは知らなかった。多分、設定資料集に載っていたのだろう。(私は未購入のまま死んだ…)でも、本当知らなかった!ゲームではそんな素振りみせて無かったのに…
「ふ…あぁ、楽しみにしてく……」
「ねぇ、リカちゃん。先輩も朝忙しいんじゃないかな…私達は部活も委員会も入ってないから暇だけどぉ、先輩は風紀委員長だし〜。」
あ…。確かに。つい、新事実を知って浮かれてしまった。お恥ずかしい。
「でもぉ、先輩の言ってることも最もよね〜。…そうだわ!今度一緒にお弁当作らない?2人で作ったらきっと良い料理が出来ると思うの!その為には早起きしなきゃね!朝からリカちゃんと一緒だなんて新鮮だわ。ふふふ、楽しみ。…と、今日のお弁当だけど。私のサンドイッチを半分こしましょう?リカちゃんのも一口ちょうだい?あらいけない。そろそろ早くお昼食べなきゃね?…それでは、先輩さようなら。ご忠告とぉーっても感謝します。」
珍しくカレンちゃんがはきはきとした口調だった。いうて、いつも朝一緒に登校してるから特に新鮮というわけでも無いけど…カレンちゃんってお料理作り好きだったっけ?くぅ〜…っ、この女子力の差!カレンちゃんマジヒロイン!そして、先輩の言うことを素直に聞く姿勢!こりゃ、かないまへんがな。
流石カレンちゃん!まじヒロインだわぁー…
カレンちゃんが連れて来てくれた場所には、滅多に会えない攻略対象、孤独を好む男・志島アマネ先輩がいた。私でさえこの学園に来てそろそろ半年ちょっとになるが1、2度しか見たことが無い。しかも、学校行事で。…それを普通の日に軽々と探し当てたよ、カレンちゃん!
「……先客がいたみたいね。」と、カレンちゃんはつまらなそうに言った。
カレンのいうとっておきの場所、裏庭の調度教室の死角になるっている場所…に、志島先輩は寝ていた。んー、だけどここなら確かに寝れるなぁ。ここは、昼休みでガヤガヤしてる中にも関わらずとても静かだ。
「ごめんねぇ、リカちゃん。…流石に寝ている人が近くにいるとなると………いずらいわ。」
「そうだね。…次は何処にしようか。」
そろそろお昼休みも終わっちゃう…
困り果てていると、カレンちゃんが凄く嫌そうに
「……仕方ないわね。…ねぇ、リカちゃん。生徒会室はどお〜?」
「え、でも…」
「だいじょーぶだよぉ。お兄ちゃんなら貸してくれるって〜」
カレンちゃんのお兄ちゃんは、なんと生徒会長だ。『ナルシスト生徒会長』藤咲カイト。…カレンちゃんの親友ということで私も先輩に大分お世話になっている。
…まぁ、確かにカイトお兄ちゃんなら貸してくれるかな。優しいし。てか、そろそろお腹減った…
私達が生徒会室へ向かっていると、どこからかの教室が騒がしい。
…何やら喧嘩が起きた様だ。
「おい、こいつの金を奪ったって話は本当か?…それは男らしくねぇな、…てめぇ、舐めたマネしてんじゃねぇぞ。あぁ⁈」
このドスの効いた声は…攻略対象の『純情な不良』田浜ケイゴだ。校内では不良としての有名人だ。しかし、成績が素晴らしい為退学には至らない…らしい。本人がそう言ってたから間違えは無いだろう。
私は、カレンちゃんのファンクラブの喧嘩に関与したした際に田浜先輩と知り合った。私が喧嘩に(物理的に)巻き込まれた時に先輩が助けてくれたのだ。…だから、私は知ってる。先輩は実は凄く優しい人だって事。誤解してる人は多いんだけどね?今回もきっと人助けをしているのだろう。
「リカちゃ〜ん。私、お腹減ったぁ。早く生徒会室へ行きましょう?」
おっと、…田浜先輩のことは気になるけど…仕方ない。そもそも食堂が使えなくなったのは私のせいだからな。カレンちゃんに申し訳なさ過ぎる。
「……田浜先輩なら大丈夫だよ。ねぇ?」
それでも私を気遣ってか、カレンちゃんは声を掛けてくれた。やっぱり、ヒロインの大原則・信じる心があるカレンちゃんはマジヒロインだなぁ〜…
「おや、リカちゃん。いらっしゃい。僕に会いに来てくれたのかな?」
「カイトお兄ちゃん!」
「違うわよ。お弁当食べに来ただけ。…さ、お兄ちゃんはさっさと職務を全うして。私達の事は気にしなくて良いわよ。…それよりぃ〜」
カレンちゃんはカイトお兄ちゃんには少し素っ気無さを感じる。
「どうしたの?」
私をカレンちゃんが見つめる。
「カイトお兄ちゃんは私のお兄ちゃんなのぉ〜。いくらリカちゃんでもそれだけは譲れないんだからぁ〜!」
なるほど、照れてただけだったか!
「あー、ごめんごめん。なんとなーく、昔からカイトお兄ちゃんって呼んでたから馴染んじゃったんだよね…」
「いや、僕は一向に構わな…」
「そうだよぉ!お兄ちゃんは私だけのお兄ちゃんなのぉ!」
「ごめんね…じゃあカイト先輩に変える!」
「え」
「うふふ〜うん、よろしくねぇ。」
こうして、私とカレンちゃんは無事にお昼御飯を食べる事が出来た。カレンちゃんと半分こしたサンドイッチ美味しかったなぁ〜。食事系パンも捨てがたいね。
…にしても、これもう私はヒロイン名乗らない方が良いな。うん。ヒロインはカレンちゃんだ!
カレンちゃんはヒロインが好き過ぎる!
佐々木は、カレンちゃんではなくヒロイン好きです。リカちゃんの勘違い。…そもそも、皆は既にヒロインのこと好きだけど、ことごとくカレンちゃんに邪魔されているだけw




