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病弱勇者と過保護な魔王  作者: ヤナギ
第一章 病弱勇者
3/50

五人の魔人

 魔人side


 紫色の岩壁に囲まれた部屋。天井や壁に接地してある魔晶が部屋を照らしている。

 部屋の中央にある円卓には、占いで使うような水晶玉が置かれている。水晶玉にはテレビのような映像が映し出されている。

 それを囲むように五人の影と一つの空席。それぞれが難しい顔を浮かべている。



 映像を見ていた一人が、口を開き鋭い牙を光らせる。


「戦争だ」


 短く発言したのは龍の体を持つ魔人ドラゴ。金色の鱗と瞳を輝かせながら、グルルっと喉を低く鳴らす。


「ん、意義無~し」


 真剣なドラゴとは真逆に軽い口調で答えるのは、可愛らしいピンクのポニーテール少女シエル。

 両頬には可愛らしい桜の模様があり、威圧的なドラゴに凭れ掛かりながら、とんがり帽子をクルクルと指で回している。



 カカッ、シャッ! ・・・スッ


 羽ペンで速書きされた紙が前に出される。書いたのは魔人デュラハン。漆黒の甲冑に赤黒いボロボロのマントを纏っている。あと、頭がない。



「えっと、なになに。夕飯は何を食べたいか? あ~、今日はデュラハンが料理当番なのね。私はワインに合うものがいいわね」


 紙を手に取ったのは金髪の女性エリー。

 顔もスタイルも敵う者なしと自賛おり、かなりの美貌に恵まれた魔人である。口の左右には牙があり、背中には蝙蝠の翼が折畳まれている。



「ほぉ、ほぉ、ほぉ。鷲はお主らが作るものなら何でも歓迎じゃわい」


 白く伸びた顎鬚を鋭利な鍵爪のある手で撫でているのは、鷲の顔をした魔人ジーク。

 全身羽毛に覆われており、触り心地は抜群。巨大な翼を広げると十メートルは超す。



「ぶっちゃけー、私達も何でも良いんだよね~。結局は、お嬢が美味しくに食べてくれるご飯が良いになっちゃうからね~」


 シエルはドラゴの腿に頭を乗せて寝転ぶ。ドラゴは気にした様子もなく成されるままだ。


「そうね。お嬢が一緒に食事をとってくれることが大前提よね」


 同意するエリーはワインに合う物を次々とディラハンのメモに書き足していく。


「お嬢は食事をしなくとも、魔素を吸うするだけで生きていけるのじゃ。あくまでも、食事は娯楽でしかない」


 食事とは、生命を維持し活動するために必要な習慣のこと。その大前提を覆しているお嬢は、味を楽しむだけを目的としている。そのため、食事をする時刻も回数も疎らであり、気まぐれだ。


 つまり我々と食事を共にする機会がすくないのだ。




「あれ、私達って何で会議してるんだっけ?」

「お前は知らずに、俺の意見に賛成していたのか?」


 ドラゴは寝転んでいたシエルの頭を鷲掴みし、水晶玉へ向ける。そこに映し出されていたのは、部屋の隅で落ち込んでいる赤髪ツインテールの魔王の姿。


「お嬢が突然立ち上がり、勇者の気配! っと意気揚々と人間の城へ攻め込んで行ったと思ったらすぐに帰ってきて、何故か部屋に篭って落ち込んでいる」

「ふーん、何があったんだろね?」

「だからそれを解明するための会議だ」


 呆れるドラゴにマイペースなシエルは再び寝転んでしまった。




・以下は『どうでもいい』議事録である。


「原因は勇者を召喚した人間なのは明白。つまり人間を全て滅ぼせば解決する。やはり戦争は不可避だな」


「意義な~し」


「しかしの、人間がいなくなると鷲等も不自由するであろう? 」


「労働力か。失念していたな」


「私たちの食料も生活用品も大切なワインも、全部、奴隷人間達に作らせている物だったわね」


「ならば働き盛りの子供のみを生かすのはどうだ」


「古参の人間は器用で芸術的でもあり、努力家で我慢強い所があるのぉ」


「装飾品は特にとても魅力的よね。稀に目に余る発明もしちゃもんね」


「うむむ。なら、どう戦争するべきなんだ」


「無理に戦争しなくていいと思うよ~?」


「ふふ。よく考えれば、争ってるのってお嬢とエリアガーデン国王が呼び出す勇者ぐらいよね?」


「じゃな。勇者ぐらいしかまともに鷲等と戦えないからな」


「でもバカ国王がいるから~、お嬢も勇者という玩具が手に入るよねー」


「ふぉ、ふぉ、勇者には悪いが、その通りじゃな」


「勇者との戦いは、俺等にとっても娯楽だ。全力は出せずともそこそこの闘いを楽しめる」


「ふむ、鷲は二代目勇者が楽しかったかの。あやつは魔法の使い方が面白かった」


「俺は四代目だな。あいつのような力馬鹿は好みだ。何度か俺を殴り飛ばしてくれたぞ」


「私は八代目の女勇者かしら。とっても可愛いくて美味しかったわ。うふふ、思い出しただけでも体が疼いてくるわね」


「ふ~ん。私はまだ勇者と戦ったことが無いから~よくわかんないや。ところでお嬢は部屋の隅から動かないけど、お腹でも壊したのかな~? 」


「む、体調不良か。その懸念は見落としていたな。普段ならありえんが、絶対とは言えんからの」


「そうね。以前、発熱した時は、魔王なのに風邪で寝込むなど、恥ずかしくて死にたいって言ってたわ」


「なるほど、俺等に悟られないように篭っているわけか」


「お嬢は変なところで子供だよね~」


「うむ、答えが見えてきたな!」




 長い時間をかけて決まった事は一つ。


 カカッ、シャッ! ・・・スッ


「病気かもしれないお嬢のために、栄養満点お粥を作ります」


 全会一致で可決されたため、本日の会議は解散になった。




 その後、全員でお粥を持っていくのだが、「違うわー!!」っと部屋を追い出されてしまったのである。



魔王「次回はエージの番だぞ!」

エージ「風邪が悪化したから、他の人でれない?」

魔王「安心しろ。ベットに寝ているだけでいいそうだ」


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