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病弱勇者と過保護な魔王  作者: ヤナギ
第一章 病弱勇者
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異世界に転生


 四畳半の小さな部屋。木造の天井に冷たいコンクリートの壁。ボロボロの畳の上にある布団に一人の少年が寝込んでいた。




「ゴホッ! ケホ!」


 しんしんと冷え込む部屋で、俺は風邪を拗らせていた。鉛のように重たい体は咳き込むたびに軋み痛む。


 俺の名前は藤山永治ふじやまえいじ。今日でちょうど十四歳になる。なのに、せっかくの誕生日に寝込む不幸者。

 だけどもう慣れた。生まれつき病弱で風邪なんて日常茶飯事だった。中学校も中退して通信学習で過ごしている。



 今回の風邪は普段より重かった。少し体を動かすだけで節々に激痛が走り、咳き込み続けたせいか喉が痛く辛い。

 俺は体を無理やり起こして薬入れに手を伸ばす。



 だが、中身は空だった。



 そういえば寝る前に飲んだ薬が最後だった。・・・やばいな。

 部屋にあるたった一つのすりガラスに目をやると、無数の白い影がゆっくりと落ちていた。

 こんな状態で外に出るのは危ない。だが俺にとって薬がないのはそれ以上に死活問題だった。

 病院に行こうと起き上がろうとする。



ぐらっ。



目の前が歪み二重三重と景色がぶれて光を失っていく。



「や・・・ばい」




 息するのも苦しい。助けを呼ぼうにも、声も出なければ指すら動かない。


 ごめん、母さん。今まで育ててくれてありがとう。父さん、顔は写真でしかみたことないけど、これから会えるのかな?


 はは、もう・・・眠い・・・や。




・・

・・・。


 キイィィィィィ――――――ンッ!



 耳鳴りのような高音が頭に響く。耳を塞ぎたくても体が動かない。ぐらぐらと船が揺れるように体が振り回されて気持ち悪い。

 追い討ちをかけるように浮遊感に襲われる。声を出すことも身構えることも許されず、ただ成されるがまま。


 これが地獄だと言われても納得できた。途端にバンッ! っと爆発音と同時に地面に叩きつけられた。



「カハッ! ゴホゴホ! おえ! げえぇぇえぇ!」



 接地しているという安心感と同時に、何かが体を這いずり回るような気持ち悪さが襲う。実際に吐いたわけではないが何かを吐こうと嘔吐が続く。


「ち、治癒を! 急いで!」


 甲高い声が木霊する。霞む視界の中、白いフートにローブを纏った怪しい集団が、バタバタと慌てた様子で俺を囲む。

 何をする気なのか。抵抗しようにも体は言うことを聞かない。


「彼の者に安定を。リフレッシュ!」


 白い光が俺を包むと、スゥっと汚物が浄化されるように体調が安定していく。光が収まる頃には、さっきの苦しさが嘘かのように落ちるいていた。



「あの、大丈夫でしょうか勇者様」


 集団の一人がフードをはずす。そこに現れたのは誰もが美人と口揃えるだろう美少女だった。

 肩まである朱色の髪に金色の大きな瞳。うるうると今にも泣きそうな瞳だ。視線をうつすと、その先には尖った耳があった。



「ケホッ。エ、エルフ耳!?」



 俺がいきなり大声を出したせいなのか、第一声がエルフ耳というのに驚いたのか、エルフ少女は目を真ん丸にした。


「えっと、私はハーフエルフでございます。勇者様はハーフエルフが、その、お嫌いだったでしょうか?」


 すごい。これって小説で読んだ異世界物語じゃないか!? よく見れば足元に描かれているのは魔法陣だ! すごい、本当に異世界に召喚されたのか!



「ゆ、勇者様?」


 目に涙を溜め込んでいるハーフエルフ。俺が何も答えずに放置していたせいか、不安そうな顔をしている。


「あ、大丈夫! 俺はハーフエルフも大好きだよ!」


 そう言うと、ハーフエルフは急に顔と耳を真っ赤にして、あうあうっと情けない声を出した。


 ハッと顔を上げるハ-フエルフ。慌てて髪を再度整えながら立ち上がった。


「勇者様。今は色々と聞きたいことや不安に思っていることがあるかと思いますが、今は私を信用してついて来て頂けないでしょうか。私、エリアガーデン第一王女リアンは決して勇者様を傷つけないとここに誓います」


 透き通るような声に聞き惚れていると細く白い手が差し出された。俺はその手を取り立ち上がる。

 しばらく手を握ったまま離さないリアン。俺が疑問に思っていると、名残惜しそうに俺の手を離してくれた。





 広く開放的な謁見の間。青白い大理石の柱に囲まれている。赤い絨毯の先にある、王座に座っている人物は穏やかな笑みを浮かべている。



「おお。勇者よ、よく来られた! 来るのを待ちわびていたぞ。我はこのエリアガーデン国王、ジルフィード・ロー・ベンツだ」



 リアンのように耳は尖っていないが同じ朱色の髪をしている。少し年老いた赤みのある黄瞳で、俺を品定めするように見ている。



「俺はエィ、ケホッ。失礼、エイジ・フジヤマだ」



 どうも乾いた咳が止まらない。気分は悪くないし今までで一番調子がいいのだが。


「エージか、よろしく頼むぞ。こっちは我が娘リアンである。これから勇者の身の回りの世話を手伝う予定だ」

「以後よろしくお願いします勇者様」


 リアンは、ドレスの端を掴んで一礼する。俺がその姿に見惚れていると、国王は軽く咳払いをする。


「さぞかし戸惑っておるだろうが安心するがいい。ゆっくりと時間をかけて説明をいたそう」



「クククッ! その必要は無いぞ、国王よ!」



 謁見の間に女性の声が響くいた。



初小説に挑戦。色々と見苦しい箇所がありますが、今は完結できるように書いていきたいと思う。


ここまで読んで頂き、ありがとうございました。

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