表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GOOD LUCK  作者: risiyakaea


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/12

第9話『運命を切り開く一振り』

翌朝。


タクミとリナは、昨日訪れた鍛冶屋の扉を押した。


ガラン、と鈴が鳴る。


「よぉ、来たな」


奥から響く低く太い声。


ヴォルドが腕を組んで立っていた。


「おはようございます」


「おはよう、ヴォルドさん」


二人が頭を下げると、ヴォルドは無骨な手で布に包まれた物をカウンターに置く。


「できてるぜ」


「嬢ちゃんの弟子……いや」


ヴォルドはタクミを見てニヤリと笑う。


「もう立派な冒険者か」


「いえ、まだまだです」


そう言いながらも、タクミの視線は自然と布に吸い寄せられていた。


「さぁ、開けてみな」


タクミはそっと布をめくる。


そこにあったのは――


黒鉄のような深い光沢を放つ短剣だった。


柄にはウルフの牙が巧みに埋め込まれている。


飾り気は少ない。


だが、無骨で洗練された美しさがあった。


「これが……」


「お前が一人で仕留めたウルフの牙だ」


ヴォルドが腕を組む。


「初陣の証ってやつだな」


「持ってみろ」


タクミは短剣の柄を握った。


冷たい金属。


だが、すぐに体温に馴染んでいく。


(……なんだこれ)


握った瞬間、違和感が消えた。


重さも、長さも、まるで最初から自分のために作られたみたいだ。


(異様にしっくりくる)


思わず目を見開く。


「どうだ?」


「……すごく手に馴染みます」


「ははっ」


ヴォルドが豪快に笑った。


「やっぱりな」



「正直に言えばな」


ヴォルドは少し肩をすくめた。


「最初はただの思いつきだった」


「新米に特注武器なんて、普通はやらねぇ」


「じゃあ、どうして……?」


タクミが尋ねると、ヴォルドは鍛冶場の奥に視線を向けた。


そこには古びた大きなハンマーが立てかけられている。


「職人ってのはな」


ヴォルドはゆっくり言った。


「作りたいと思った瞬間が仕事の時なんだ」


「え?」


「お前が持ってきた牙を見たとき、思ったんだ」


ヴォルドは牙を軽く指で叩く。


「この牙は、このガキの刃になりたがってるってな」


リナが目を丸くする。


「牙が……?」


「馬鹿馬鹿しいだろ?」


ヴォルドは笑った。


「だがな、長年鉄と火に向き合ってると、不思議と分かるもんだ」


そして真っ直ぐタクミを見る。


「この短剣に特別な魔法はねぇ」


「だが、お前の手には誰よりもしっくりくる」


「元はお前が仕留めた獲物だ」


「お前と共に戦った証だからな」


タクミは短剣を見つめる。


黒銀の刃が、静かに光っていた。


(特別な力はない……か)


だが、不思議と満足感があった。


(それで十分だ)


(これが俺の……最初の相棒だ)


タクミは深く頭を下げる。


「ありがとうございます」


「大切に使わせていただきます」


ヴォルドは鼻を鳴らした。


「ふん」


「いい目してやがる」


「壊すなよ」


どこか嬉しそうだった。


タクミは短剣を鞘に収める。


腰に下げると、不思議な安心感があった。


ヴォルドが言う。


「だがな」


「気を抜くな」


「この世界じゃ武器の出来より使い手の腕がモノを言う」


「……はい」


タクミはしっかり頷いた。



二人は鍛冶屋を後にする。


街道を歩きながら、リナが横をちらりと見る。


「タクミ」


「いい顔してる」


「そうですか?」


「ええ」


リナは微笑んだ。


「その短剣、きっとあなたを強くしてくれる」


(強く……か)


タクミは腰の短剣に手を添える。


(本当に強くなれるのか)


まだ分からない。


だが――


昨日より確実に前に進んでいる。


そんな気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ