第2話『転生と“幸運”』
「目覚めましたね」
女の声がした。
視界を開くと、そこは真っ白な空間だった。
その中央に、銀髪の少女が立っている。
静かに、こちらへ微笑んでいた。
「あなたは亡くなりました。ですが、最後に少女を助けた勇敢な行いが評価され、異世界転生の資格を得ました」
「……は?」
思わず間の抜けた声が出る。
少女は気にした様子もなく続けた。
「あなたが行くのは、剣と魔法、そして魔物が支配する過酷な世界です。武力も魔力も持たぬ者は、ただの餌──そう呼ばれる場所」
少し間を置いて、少女は言う。
「ただし特別に、あなたにはユニークスキルをひとつ与えましょう」
その瞬間、目の前に光のパネルが現れた。
【ユニークスキル選択】
・剣術熟練
・魔導知識
・鍛冶の才能
・幸運
(……普通なら剣術か魔導だろうな)
戦う世界なら、その二つが無難に思える。
だが、頭の片隅で過去の記憶が疼く。
不幸続きだった人生。
理不尽な出来事ばかりだった日々。
(……運が良ければ)
(全部どうにかなるんじゃないか?)
タクミは小さく息を吐いた。
「……幸運で」
光のパネルが淡く輝く。
《ユニークスキル:グッドラックを取得しました》
少女は満足そうに頷く。
「では、あなたのステータスを表示します」
再び光が浮かび上がった。
【ステータス】
名前:タクミ
Lv:1
HP:10
MP:1
ATK:1
DEF:1
SPD:1
LUCK:999
「……は?」
思わず声が漏れる。
「体力以外全部1? 運だけバグってるけど……これ死ぬだろ俺」
少女はくすりと笑った。
「ふふ。運はレベルアップでは伸びません。ですが、真価はあなた次第」
「真価って何だよ……」
少女は答えず、ただ楽しそうに笑う。
そして、杖を軽く振った。
その瞬間。
白い空間が崩れる。
俺の意識は光に溶けていき──
次の瞬間。
冷たい風が頬を打った。




