第10話『初めてのゴブリン討伐』
鍛冶屋を出たあと。
リナが軽く振り向いた。
「じゃあ、さっそく試し切りついでに依頼を受けに行きましょうか」
「え? 今日もご一緒していただいていいんですか?」
「もちろんよ」
リナはくすっと笑う。
「昨日の動き、すごかったもの」
(いや……あれは完全に運だ)
まだ自分で再現できる自信はない。
だが――
腰の短剣に触れる。
(それでも……この短剣、使ってみたいな)
タクミは小さく頷いた。
「では、今日もお願いします」
⸻
二人はギルドに入り、掲示板の前に立つ。
依頼書がぎっしり貼られていた。
「うーん……どれにしようかな……」
リナが腕を組んで悩む。
そのときタクミは気づいた。
「リナさん、この依頼の横にあるアルファベットって何ですか?」
「ああ、それは依頼ランクね」
リナは掲示板を指さした。
「まず、私たち冒険者にはランクがあるの」
「SからEまでの6段階」
「上からS、A、B、C、D、Eよ」
「Sは英雄級。Eは新人や駆け出し」
タクミは苦笑する。
「俺は当然Eランクですね」
「ええ」
リナは優しく微笑んだ。
「でも、みんなそこから始めるのよ」
続けて説明する。
「依頼の方にもランクがあるわ」
「EX・S・A・B・C・D・Eの7段階」
「EXは“災害級”」
「魔王討伐とか国家レベルの依頼ね」
「普通の冒険者が関わることはないし、近年そんな依頼が出たって話は聞いたことないわ」
「なるほど……」
タクミは掲示板を見直す。
「ちなみにあなたはEランクだから、本来はDランク以上の依頼は受けられないの」
「ですが?」
「私とパーティを組んでいるから同行できるのよ」
タクミは納得して頷いた。
「どの依頼が良さそうですか?」
「そうね……」
リナは一枚の依頼書を指差した。
「これなんてどう?」
『ゴブリン討伐 推奨ランクD』
「ゴブリンはウルフより狡猾よ」
「群れになると厄介だけど……」
リナはタクミを見る。
「昨日ウルフを倒せたなら大丈夫だと思う」
「短剣の試し切りにはちょうどいいわ」
タクミは少し考えたあと、頷いた。
「分かりました。それでお願いします」
⸻
受付で手続きを済ませ、二人は街を出る。
街道を歩きながら、タクミは短剣を握る。
(心臓が速い)
昨日よりも緊張している。
(本当に俺にできるのか……?)
リナが横目で見て笑った。
「緊張してる?」
「……はい。正直、怖いです」
「それでいいのよ」
リナの声は優しかった。
「怖いと思えるのは大事なこと」
「でも一歩踏み出せば、次は少し楽になるわ」
タクミを見る。
「タクミには素質があると思う」
「信じて進みなさい」
(素質、か)
正直まだ信じられない。
それでも――
少しだけ勇気が湧いた。
⸻
森に入り、慎重に進む。
しばらくすると――
ガサリ。
茂みが揺れた。
リナが小声で言う。
「来るわ、タクミ」
現れたのは4体のゴブリン。
緑色の皮膚。
ギラついた目。
粗末な棍棒を握っている。
(思ったより……大きい)
ウルフとはまた違う恐怖があった。
リナが短く言う。
「落ち着いて」
「一番近い奴に集中して」
タクミは息を吸い、短剣を構えた。
(やるしかない)
1体が飛びかかる。
タクミは咄嗟に横へ避けた。
そして短剣を振る。
スパッ
「……!」
驚くほど軽い手応え。
ゴブリンの腕が宙を舞った。
(すごい切れ味だ……!)
ゴブリンが悲鳴を上げる。
タクミは思い切ってもう一度振るった。
刃が深く入り――
ゴブリンは崩れ落ちた。
「やった……」
その瞬間。
残り2体が同時に襲いかかる。
(まずい……!)
そのとき。
身体が自然に動いた。
地面を蹴り、大きく跳んだ。
ゴブリン同士が衝突する。
(ラッキーステップが発動した…?それよりも今だ!)
タクミは迷わず短剣を振るった。
2体目、撃破。
(また助かった……)
短剣もすごい。
だがそれ以上に――
(このスキル、本当に命を救ってくれてるな)
残る1体。
「無理しないで」
リナが前に出た。
一瞬。
剣閃が走る。
ゴブリンはその場に崩れ落ちた。
「これで終わりね」
リナが微笑む。
「初めてのゴブリン討伐でここまでできたら立派よ」
タクミは息を吐いた。
「ありがとうございます」
その後も森を進む。
さらに3体のゴブリンを倒した。
だが――
リナが足を止めた。
「……おかしいわね」
「どうしたんですか?」
「普段ならもっと群れているはずなの」
森を見渡す。
「この森はゴブリンの縄張りよ」
「なのに数が少なすぎる」
タクミの脳裏に浮かぶ。
巨大な影。
(……ゴブリンロード)
あの異様な存在。
(まさか関係してるのか……?)
だが口には出さなかった。
リナが言う。
「今日はこのくらいで戻りましょう」
「はい」
街へ戻り、ギルドで依頼達成を報告する。
その後。
タクミはこっそりステータスを開いた。
⸻
名前:タクミ
種族:人間
Lv:3
HP:40(↑+15)
MP:31(↑+15)
ATK:31(↑+15)
DEF:31(↑+15)
SPD:31(↑+15)
LUCK:999
⸻
(やっぱり全部15ずつ上がる)
レベルアップした瞬間の感覚も変わっていた。
(身体の動きが前より洗練されてる)
(今ならゴブリン何体来てもいけそうな気がする)
「どうしたの?」
リナが覗き込む。
タクミは慌てて画面を閉じた。
「い、いえ。なんでもありません」
(……いや、調子に乗るな)
(俺はまだ何も知らない)
(戦い方も、魔物の知識も)
脳裏に浮かぶ。
あのゴブリンロード。
(このままだと、いつか絶対にやられる)
タクミは意を決した。
「リナさん」
「はい?」
「明日から……」
少し頭を下げる。
「戦い方を教えていただけませんか?」
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