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第1話『告発の代償、そして転落』
「……これが、正しいことをした人間の末路か」
会社をクビになった俺は、段ボール箱を抱えて駅へ向かっていた。
灰原匠、30歳。
上司の不正を内部告発した結果、会社から追い出された男だ。
入館証は取り上げられ、PCは強制ログアウト。
俺のデスク周りからは、在籍していた痕跡すらきれいに消されていた。
独身。貯金は雀の涙。
不正を告発した結果、俺は“空気を読めない厄介者”扱いされ、リストラの標的になった。
(思えば、人生こんなことばかりだった)
・財布を拾って届ければ、中身を抜いたと疑われる
・大学受験の日は交通トラブルで遅刻して不合格
・恋人に尽くせば「重い」とフラれる
・買ったPCは初期不良、スマホは初日に落として画面が割れる
(……不幸体質、か。笑えないな)
そんなことを考えながら、駅のホームで電車を待つ。
そのとき、視界の端で小さな女の子がバランスを崩した。
「危ない!」
反射的に手を伸ばす。
少女をホームの内側へ押し戻す。
その代わりに──俺の足元が宙に浮いた。
「──あ」
耳をつんざく警笛。
迫ってくる光の塊。
(……最後まで運がなかったな、俺)
視界が、真っ白に塗り潰された。




