第四話 運命の再会は最悪の形で
ガラリと空いたその空間。今まであった家具や電化製品がそこにないというだけで、この狭っ苦しいアパートも多少は広く見える。
「アンタこの期に及んでどこほっつき歩いてくるの!夜の食事に遅れたらゲンコツだからね!」
「わーーってるよ……バッセンの親父にもお世話になっただろ。挨拶し忘れたからよ。」
「あらま。アンタって割と律儀なとこあんのね」
もう既に荷造りを終えたどころか引っ越し業者に全て持っていってもらった後だ。母親とのいつものやり取りもどこか非日常な響きの音になる。
「行ってきます」
「汗だくで帰ってくるんじゃないわよ?」
「シャワーくらい浴びれる時間に帰ってくるさ。それと……さ。」
「行ってらっしゃい。なぁに?」
息子の言いたいことなど流石にお見通しといったところか。何やら期待するようなニヤニヤした顔でこちらを見てきた。
息をたっぷり大きく吸い込んで、じっと母の目を見て、こう言った。
「結婚おめでとう。母さん」
この夏休み。恭たち二人家族は引っ越しという人生の転機を迎えた。ーーー母親の結婚という一大イベントを引っ提げて。
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別に寝耳に水、という話でもなかった。恭の母親はまだ31。老け込むにはまだまだ早すぎると思っていたのもそうだし、絢辻さんという方とお付き合いしているというのも知っていたことだ。
絢辻さんと母、それに……数年前に亡くなっていた絢辻さんの奥さん、この三人は幼稚園からの幼馴染であったというから驚きだ。
恭も忘却の彼方ではあるものの、会ったような記憶もないではない。俺たちは母親の生まれ故郷である福島に帰って、その絢辻家で暮らすことになる。転校や引っ越しは避けられずこのような慌ただしい夏休みを送っているわけだ。
今日は出発前の最終日。毎月半額プリペイドカードを恭ために取っておいて売ってくれていたバッティングセンターの親父に別れの挨拶だ。完全に忘れていたのでお詫びの菓子折りも忘れていない。
「…………転校も引っ越しも正直ウェルカムだけど、問題はなぁ」
恭の頭を悩ませるのは絢辻さんの連れ子。形としては義妹、もしくは義姉という形になるのだろうか。恭と同い年の絢辻未来なる少女のことである。母親曰く小さい頃に会ったことも一緒に遊んだこともあるらしいが、前述の通りかなり朧げな記憶となってしまっている。
『いい子よぉ?礼儀も正しいし可愛いし頭もいいし可愛いし正直だし可愛いし』
ーーー恭の母親はずっと娘が欲しかった反動もあってかやり過ぎなくらい猫可愛がりしていたが。問題は親子仲じゃない。
理由は単純。怖いのだ。同年代とのコミュニケーションが。クラスメイト、チームメイト、ご近所付き合いと全てのコミュニケーションを失敗してきた恭である。今度は同い年の女の子が一つ屋根の下暮らすのだ。ラブコメ的なドキドキよりも違うドキドキの方が勝るのは必然であった。
(俺のせいで母さんの新婚生活台無し……とかなったら目も当てられねえ。慎重に、慎重に接さねえと)
そんな考え事をしているうちに今日も盛況にマシンと打球音が響くお目当ての場所へ。見慣れたベンチに見慣れたおっさんが足を組んで座っている。この光景も今日で見納め、となっても少しも悲しくない。
ここのオーナー。大道のおっさんである。
「よっ。菓子折り持ってきたぞ」
「相変わらず敬語の使えねえガキだな……ほれ座れ座れ」
そのデカい手で自分の隣をボンボンと叩く。遠慮なく恭はそこに腰を落ちつけた。
恩人ではある。このおっさん、オーナー兼勝手に子供の有望株を見つけては打撃の指導をする困った中年として有名だ。野球は大学までやっていたらしく、一応……恭のキャッチャーの先生でもあった。
「弟子入りしてきた時はうんと小さかったのになぁ。まあ中身はまだまだクソガキのままだが」
「…………感謝してる。アンタがいなきゃ間違いなく俺はここまで来れてないし。この街で最後に会うのも、アンタで良かった」
「おいおいおい、随分しんみりするじゃねえの」
ーーー感謝もある。技術的な指導だけじゃなくて、俺の悩みにも真剣に一緒に向き合ってくれたこのおっさん。向き合ってアドバイスをくれていたからこそだ。チームを敗北へ導いてしまったその負い目が、恭の言葉の語気を弱める。
「アンタのいう通り、俺はクソガキだ。俺のやったことも、思ってたことも、全部間違いだった。これじゃ、みんなが俺から離れていくのも当然だ。やっと……やっとわかったんだ」
「ーーーお前以外の同級生みんな辞めちまったアレのことか?何もお前だけの責任じゃ……」
そこまで言って、おっさんは何か考えるように口を噤む。
「いや、違うな。お前さん、今年で何歳だっけか」
「11だけど」
「その歳で自分のやったことの過ちを認めて反省できるってのは立派なもんだ。誇っていい、偉いぞ」
その大きな手でワシワシと恭の頭を撫でる。不思議と心地よくて、それほど悪い気は湧いてこない。
「良くも悪くも転校ってのは人間関係をリセットするいい機会だ。ワシも子供の頃は転校多かったからな」
「………そーなの?」
「そうだよ。俺も最初の学校では友達作ってたが、二個目の学校ではずっと一人ぼっちだった。作るだけ別れるのが辛くなるから無駄だと言ってな」
「なんか理屈がわかる気がするわ」
「でもなぁ。やっぱり青春を豊かにするのは気の合う友達と、やっぱり可愛い女の子よ。お前さんは後悔しないように、特に可愛い女の子には優しく接してあげなさい」
最終的に女の子の話に着地したのが若干気になるが……おっさんの話には妙に説得力がある。恭は終始黙って聞いていた。
「それとな、人間というのは大きい流れができたらそれに身を任せてしまう生き物だ。長いものに巻かれるって学校で習ったか?」
「習ってないけど……本で読んだことある」
「だがお前は周りのみんなになんと言われても、どんなことをされようと絶対自分を曲げなかった。それは、誇るべきことだとも、俺は思う」
「でも……結局それは間違ってて」
「正解不正解の話じゃない。いい根性してるって話だ」
その後も新生活の話やら思い出話やら、なんやかんやとあっという間に1時間も話し込んでしまった。小学生の自分よりもずっと年上の、目の前のおっさんの方が寂しそうで。もう少し、もう少しと話題を選び続けた結果である。
「ーーーおっさん、そろそろ行ってみるわ」
「気をつけてな。あんまり親不孝ばっかりして親御さんを泣かすんじゃねえぞ?」
「わかってるよ………ひんこーほうせいを心がけることにする」
「まーた難しい言葉覚えてるもんだなぁ」
後ろ手を振って、最高にカッコつけながらベンチを後にする。もう会えない、なんてことはないが……妙に寂寥感が心を覆ってしまって。目を見てお別れなんてしたら泣いてしまいそうだった。
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バッティングセンターを出た頃にはもう真上の日差しがガンガンに照っていた。12時を回ってコンクリートで目玉焼きが焼けそうなくらい熱されている。
「…………夕食まで残り5時間ちょっと。全然急ぐこともないか。スーパーでも行って涼むかな」
財布を持ってきていないから何か買えるわけではないが、クーラーにお世話になるくらいならお店の人だって許してくれるだろう。そんな目的でブラブラと歩いていた、そんな時だった。前から何やら騒がしい声が聞こえてきた。
「この娘めっちゃ可愛くね?ねぇ何歳?何年生?」
「じゅ、11ですけど……」
「ゲーセン行こうぜゲーセン!お兄ちゃん達が楽しいこと教えてやっからよぉ」
(うわぁ……ナンパかよ……)
見たところ中学生くらいだろうか。不良グループ六人くらいの一団が女の子を取り囲んで圧迫している。
「すみません……あの……」
「小学生だろ?いいカラダしてんなぁ……むちむちじゃん」
「おっぱいでっかくね?」
次第に掛けられる声がセクハラじみたものになっていく。
(助けるか?んんぅ……でもなぁ……)
見ず知らずの女の子のために不良に因縁をつけられるのもなんだかという感じもするが。
(少し様子を見てみるか)
足を止めて物陰に隠れてみた。先ほどよりもよく声が聞こえる位置へ。よく考えてみれば今日の夜に引っ越しということはこの町のヤンキー共にいくら目を付けられようが関係ないではないか。
「話を聞いて……」
「オレの家ジジイとババァいねえからよ。ゲーセンの後は連れ込んでウチでみんなで遊んでやろうぜ?」
「ハリさん巨乳好きだもんなぁ」
「ギャハハハハ!」
見ていられない。女の子どうこうの前に、聞くに堪えない会話である。勇気を出して、恭は一歩を踏み出そうとした。
「コンタクト!コンタクトを落としてしまったんです!みなさん、探して頂けませんか?」
「ああっ!?」
(はい?)
ーーー思わずずっこけそうになった。
守ってあげたくなる声。
だが返答は盛大にズレている。
「すみません、お遊びに誘ってくれているのはありがたいのですが……」
(取り合わんでいい!!!)
「本当に何も見えなくて……みなさんも目が二つあることくらいしかわからないんですっ……」
「ああっ!?テメェ煽ってんのか?犯すぞ?」
「おか……は、犯罪はいけませんよ?」
これ以上聞いてられない。こちらも我慢の限界だった。その場で猛スピードでダッシュして女の子の手につかみかかる。
あまりにも颯爽、というか突然すぎた登場に、ヤンキー軍団も呆然としている。
「…………すいません。コイツ、オレの連れなんで」
「ふぇ!?」
「走るぞ」
一瞬手を引きかけるが……踏み止まった。目があまり見えてないのなら自分の脚で走らせるのは危ないか。
「ふぉあっ!!!な、なにっ!?」
「悪いな、カラダ借りるわ」
履いているのがスカートだったら危なかったが、ホットパンツであれば大丈夫だろう。太腿からぐぐっと持ち上げて背中にもう片方の手を回す。いわゆるお姫様抱っこの体勢か。
「では、頂いていくんで」
「うぉい!ちょっと待て!!!」
「さらばだっ!」
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「なになになになに何するんですかぁぁぁぁぁ!!!」
「何って、不審な暴漢から美少女を救出しにきただけだが」
「不審な暴漢はあなたですっ!ばかっ!下ろしてっ……」
腕の中の少女が大声をあげるせいで後ろの奴らに割と簡単に捕捉されている。これは相手のスタミナ切れまで根性比べか。中学生でタバコなんて吸ってる奴らだ。すぐゼーハー言い出すに違いないのだろうが。
「ていうか重いでしょ!よく人一人抱えてこんなスピードで走れますねっ」
「あ?重くねえよ。むしろ軽い軽い」
「おお………そ、そうですか。」
「変なところで照れんのやめてくれる?」
勝手知ったる狭い裏路地を抜けてちょっとばかり一息つける日陰に来た。腕の中の少女に傷が付かないように丁寧に着地させた。
「変なとこ触らないでくださいっ!今お尻触った!」
「わ、悪い……」
「と、とにかくですね。あなた何者ですか。すみません、本当にシルエットくらいしかわからなくて」
すっとぼけてた訳ではなくて本当に何も見えていなかったのか。その目には若干の怯えが。なるほど、オレが誘拐犯でどっか連れ去られるかもしれないと怯えているのだろうか。
「お前小学五年だろ?俺も同い年だ。安心しな」
「ど、どこで私の年齢を……やっぱりすとーかーさん……」
「お前がさっき自分で言ってたんだけどっ!?」
「…………そうでした」
先ほどから話していて、かなり天然の入ったポワポワ感。服装から見るに……結構良いとこのお嬢様という感じか。カジュアルながら高そうな生地の服を着ている。なんかほっとけない。世話を焼きたくなる顔をしている。
「お前この辺の子じゃねえだろ。1人で来たの?」
「あっ!そ、そうでした。パパがトイレに行っている間に迷子になっちゃって……」
「そりゃまずいな。親御さん心配して探してんだろ。ケータイとか持ってない?」
「ありますけど……すみません。画面も見えなくて」
「俺が操作する。暗証番号言ってくれれば電話の画面ぐらいまではやってやれるさ」
恭に悪意がないのがわかったのか。素直にスマホを暗証番号と共に渡してくれる謎の少女。この『パパ♡』という奴を押したら多分繋がるのだろうか。
画面を開いて渡そうとした瞬間、何やら右手に温かい感触が。恭の小指と薬指を両手でギュッと握っている。
「………すみません。心細くて」
「良いけど。しかし手袋なんてして、暑くないのか?取ったら?」
「よ、余計なお世話です………夏用手袋と言って、暑くもないのです………お嫌ですか?」
「べ、べつに……」
この庇護欲をそそる上目遣い。この女自分の可愛さを意識せずにやっているのだろうか。流石の恭もこれにときめかないほど伊達に思春期はやっていない。ちょこんと握られた手を握り返してやる。
「ーーー父がスーパー栄というところで合流したいそうなのですが」
「ちょうど俺も行こうとしてたところだ。助かるね」
「では道案内をお願いしても?」
「もちろん」
それにしてもだが………服装もそうだがお上品な顔立ちをしている。目はぱっちりと可愛らしい感じだが透き通るような肌は大人の色香を既に感じる。そしてその下の全然お上品でもなんでもないボディは……
「…………胸をじろじろ見ないでください」
「お前目見えてないんだよな?」
「おっぱいへの視線くらいはわかりますっ、もう……えっち」
その胸を隠す仕草がまた男の子の興味を惹いてしまうのをわかっていないのだろうか。
「助けていただいてありがとうございました。父と一緒に落としたコンタクトを探そうと思います。いざとなった時の眼鏡が車にありますから」
「それじゃスーパー栄までのエスコートがお仕事だな?」
「うん………あの、手……」
「別にこのままでいーよ」
やはり心細いのだろう。大通りに出たが、先ほどよりも少しばかりお互いの体の距離が縮まった気がする。こうして歩くとお互いガキながらも何か恋人みたいで役得だな、あわよくば腕に胸でも押し付けてくれんかなぁ、なんてくだらないことを考えていた。
「…………」
「……………」
黙って手を繋いで歩くのもあまり気が良いとは言えない。適当な話題を振るのもまたエスコートの仕事か。
「そういやお前、ナンパに真面目に答えようとしてたけどな。あんなんさらーっとシカトでいいんだぞ?」
「ええっ!?で、でも……せっかく遊びに誘ってくれたのに……」
「遊びってなぁ。えっちなことだぞ。」
「め、滅多なこと言わないでください」
一気に顔が赤くなった。どうやら筋金入りの世間知らずというわけでもなさそうだ。
「滅多なことってよ。都会は怖えんだぞ?すーぐ連れて行かれてなんだかんだされるんだからよ」
「なんだかんだって……まあ、そうですね。おとーさんにも似たようなことを言われた気がします。あ、あなたは違いますよね?」
うんと頷くと、心底ホッとした表情を見せる。脅かしてしまったせいか、俺の手を握る力が先程より強い。
「私、初恋の人がいまして……」
「どした、急に」
「あなたにばかり話題を振らせるわけにいかないから……その……….だめ?」
「ぜひ聴かせていただきたいね。こんなかわいらしいお姫様の初恋を貰っていったラッキーボーイの話をさ」
「お姫様……ふふっ……」
わざと大仰に茶化すような言い方をしたが………割と満更でも無さそうである。
「私と同い年なんです。その人。でも幼稚園の時に一回会ったっきり会ってなくて………」
「へえ。一目惚れってやつ?」
「は、はい……本当に絵本の中から現れた王子様みたいで……あの時は迷子になった私を見つけに来てくれて。手を引いて助けに来てくれたんです。ふふっ……なんだか今も昔も変わっていませんね」
「全くだな」
しかしまあどれほどのイケメンか知らないがこれほどの美少女を一度助けたくらいでここまで落っことすとは。罪作りな男もいたものだ。
「そしてそしてっ!聞いてくださいよっ!その人がですね?なんと……明日からお兄ちゃんになっちゃうんです!あ、その……おとーさんが再婚しまして、母親になる人の連れ子さんが、その人なんです!」
「……………ん?」
「あまり驚きませんね?凄くないですか!運命です!」
「へ、へぇ……それはすごいわ」
何故か、何故だか汗が背中に一筋スーーっと垂れた。再婚で連れ子と兄妹?同い年?やけにどこかで聞いたことのある話である。
「プロ野球選手になるのが夢みたいで……俺がプロになったら一番最初にサインしてやるって。そして……結婚してくれるって!」
「いや、そこまでは言ってないんじゃないかな?」
「何故あなたが訂正するのです?」
ここまで来たら流石にうっすらとしていた記憶もまじまじと脳内に浮き出てくる。
「その人がくれた帽子。今被ってるやつなんですけどね。いつも肌身離さず持ってるんです。も、もちろんちゃんと洗ってますよ?臭くないです」
「う、うん……」
「あっ、その困りますよね。こんな惚気話熱く語られても。すみません、悪い癖です。」
よく見てみれば帽子にも見覚えがある。小さい頃お気に入りでいつも付けていたやつ。一年前くらいに探しても何故見つからないと思ったらまさか……。
「なんで見ず知らずの人にわざわざこんな話……ふふっ、きっと似ているのだと思います。雰囲気とか、話し方とか。ついていきたくなるっていうか。」
「ちなみになんだけど。そいつの名前聞いてもいい?」
「恭くん……その人の名前は恭君です」
その名前を聞いた瞬間、心臓が跳ねた。
その時だった。スレスレの近くを大きめのトラックが接近してくる。
「あぶねぇっ!!!」
「きゃっ!!!」
それを避けさせようとその少女の手を歩道側に引っ張る。その結果どうなったかというと……ちょうどアスファルトと道の切れ目の段差に足が引っかかって……完全に体のバランスを崩した。
(ヤベェ……クソっ!)
咄嗟に体が動いた。世界がスローモーションみたいになって、ギリギリ着地前に地面と女の子の体の間に自分を割り込ませるのに成功する。
「だ、大丈夫か!危なかった……」
「あ………や………」
自分の上から聞こえてくるか細い声。どうやら2人とも仰向けになって二段で倒れているようだ。
ーーーしかし。なんだこの妙に柔らかい。そしてもっちりとした感触。
「へ、へんたいさん………」
「ーーーあ。」
「サイテーですっ!痴漢ですっ!ばかっ!良い人だと思ってたのにっ!」
すぐに少女の胸から手を離すが、時既に遅し。思いっきり掌いっぱいのビンタを喰らう。
「お、おっぱい触られた……揉まれた……恭君のところにお嫁に行けない……」
「………あの、その……」
ーーーまさかのラッキースケベ。周りに人がいなかったことだけが幸いだが……。
「……恭くん。お願いだから状況を説明してくれるかな?」
「おとーさんっ!」
「…………終わった」
もう誤魔化せない。
目の前の少女。
明日から義妹。
そして――自分は彼女の初恋の相手。
こうして俺の新生活は、
最悪で、そして最高の形で幕を開けた。




