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血みどろ冷酷・女嫌いの辺境伯の元へ王命で嫁がされたけど、もしかして溺愛されています?  作者: 青佐厘音


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12 赤い花


 

  「エルサさん。今日の予定を聞いてもいいかしら?」

 支度をして、これからの予定をお世話係兼護衛のエルサさんに聞いた。


 「私のことはエルサ……とお呼びください。グラシア様」

 スッと頭を下げた。

 そうね。

 私はエンスタタイト領 ゼイン・エンスタタイト辺境伯の妻となったのだから気をつけなければならない。

 私の失敗はゼイン様の恥になってしまう。


 「エルサ、ね。そう呼ぶわ」

 微笑んで返事をした。

 「ありがとう御座います」


 「今日はこれから、ゼイン様と一緒に朝食を召しあがってもらいます」

 「ゼイン様と? わかったわ」

 先に起きたので、もう召しあがったと思っていた。


 エルサに案内されてついていく。

 食事の間へ行くと、ゼイン様が待っていた。


 「お待たせしてしまって、申し訳ございません」

 カーテシーをしてお詫びをした。

 書類に目を通していたが、テーブルに置いてこちらを見た。

 側近の方が書類を片づけていた。


 「いや。待っていない。先ほど朝の鍛錬から戻ってきたばかりだ」

 目つきは鋭いけれど、口調は穏やかだった。


 ゼイン様の向かい側に座ると、朝食が運ばれてきた。

 ジュージューと音がして運ばれてきたのは、分厚いお肉が切られたものだった。

 いわゆるステーキというもの。

 美味しそうなソースがかかった、ボリューム満点の朝食だった。

 それはゼイン様の前に置かれた。


 まさか……。私もあのようなお肉が出てくるのか?

 「グラシア様のお好みは、事前にネネ様からお聞きしています」


 私の前に運ばれてきた朝食はパンがいくつかカゴに入っていて、他に野菜たっぷりのサラダ。

 薄くスライスされたローストビーフ、ポーチドエッグ。

 飲み物は紅茶。

 皆、私のいつも食べている物ばかりだった。


 「まあ、美味しそう!」

 お肉が特に美味しそうだった。

 お腹も空いていたので、チラッとゼイン様の方を見る。


 「食べよう」

 そう言って私に頷いてみせた。

 「はい」

 初めて一緒に朝食をいただく朝は、嬉しかった。


 お祈りをしてから、いただいた。

 野菜も、お肉も新鮮で美味しかった。


 「エンスタタイト領で作っている物ばかりだ。口に合ったか?」

 「はい! とても新鮮で美味しいですわ!」

 ニコニコして答えると、ゼイン様を除いた使用人たちが嬉しそうに微笑んだ。


 「そうか。良かった」

 そう言って黙々と食事を続けた。

 「ちょっと……。ゼイン様」

 側近の方が近寄って、ゼイン様に耳打ちをした。


 「……食事が終わったら、庭を案内する」

 口を拭いて私に話しかけてきた。

 「お庭を……ですか?」


 「失礼します! ちょうどお花が満開なので、ぜひ見ていただきたいです!」

 エルサが慌てたように私へ教えてくれた。


 「そうなのね。ゼイン様、ぜひ案内していただけますか?」

 微笑んでゼイン様へ返事をした。

 「……ああ」


 素っ気ない気はするけれど、気を使ってくれたのだろう。

 申し訳ない。


 美味しい朝食を終えて、少し休んでからお庭へ向かった。


 お庭は、侯爵家のお庭より広かった。

 ただ高い城壁に囲まれた場所で、きらびやかを好む王都よりは寂しい感じだった。

 ベンチやガゼボはあったが、武骨に置いてあった。

 

 それでも街で見かけた、赤い花が咲き誇っていた。


 「つまらない庭だろう」

 ゼイン様がぽつりと言った。

 「え。そんなことは……」


 ゼイン様は一輪、赤い花を手折った。

 「この赤い花は、魔物や魔獣が嫌う花だ。街の住宅や店の前の窓辺などに飾ることを義務付けている」

 それで街のお店や家に、たくさん飾られていたのね……。


 「それだけ、このエンスタタイト領に住む者は、魔物や魔獣の脅威に晒されている」

 ゼイン様は悲しそうに、赤い花をみつめていた。

 この庭はきっと街の人が避難して来た時のことを考えて、あまり飾ってないのだろうと気が付いた。


 「……結婚式のあの日、私は馬でエンスタタイトの街中を走りました」

 フッ……と、ゼイン様が私の方へ振り返った。


 「街の人は騒がず、焦らず。静かに避難しておりました」

 私はゼイン様の隣に歩いていって、赤い花を見た。

 「素晴らしいです。これはゼイン様たちの、日ごろの訓練の賜物です」


 「そうだろうか……」

 よそ者の私だから、分かること。

 「騎士でも魔物や魔獣が出現した時に、驚いたり動かなくなる者もいます」


 「酷い時はパニックになって統制が取れなくなることも。なのでエンスタタイトの人々は、強いと思いました」

 私はゼイン様に向かって笑いかけた。

 

 普段から気をつけてないと出来ない動き。

 それを一般人の人々がやれているのは、きっとゼイン様たちが街の人達を守っているから。


 「……ありがとう。グラシア」

 名前を呼ばれてゼイン様を見ると、私をみつめていた。

 真剣な、まなざし。

 顔が、赤くなるのがわかった。


 「これを……」

 ゼイン様はさっき手折った赤い花を、私に渡してくれた。


 「この赤い花は染料になる。化粧品にも使われている。近いうちに何か贈ろう」

 フッ……と笑って、唇を指で触った。

 「えっ……?」


 「赤い口紅が似合いそうだ」

 赤い口紅? そのような色の強い口紅は使ったことがない。

 

 仕事柄、パーティーは別として今まで化粧は地味にしていた。

 そんなことを言ってくれる人は、いなかった。


 「戻ろう」

 「……はい」

 私はただ黙ってゼイン様の後についていった。


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