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第七話 急変

 次はクラウス様のお部屋に入った。

 「ごきげんよう、クラウス様。」

 「ごきげんよう、フランツェスカ様。まずは、机の前に座ってください。」

 「わかりました。」

 机の前に座ると、先の尖った棒と紙が目の前に出された。

 「フランツェスカ様、まず、二本の指で尖っている部分が下向きになるように持ってください。」

 「はい。」

 言われたとおりに持ってみた。

 「次に、使っていない指を軽く握ってください。」

 「はい。」

 言われた通りに軽く握る。

 「後は、一番長い指を棒に添わせてください。」

 「はい。」

 四苦八苦しながら、手を動かしていると、なんか三本の指でしっくりと棒を持てるような感じの手の形になった。

 「そう!それです。その形を覚えてください。」

 「はい。」

 クラウス様、嬉しそうだ。クラウス様が喜ぶ棒の持ち方を覚えた。

 「申し忘れていましたが、その棒は、鉛筆と呼びます。」

 「鉛筆。」

 クラウス様は更に嬉しそうになった。…エミリア様のことも、それくらい喜ばせることができればよいのに…

 「それでは、鉛筆の先端を紙につけてください。」

 「はい。」

 言われたとおりにつけた。

 「肩の力を抜いて、手前にスーっと…」

 「スーッと…」

 なんということだろう。鉛筆の先端の軌跡の跡に黒い線が残った。

 「よくできました。次は、文字のお勉強です。」

 「文字ってなんですか?」

 「言葉を紙に残して置くためのものです。」

 「そんなのがあるのですか!?」

 そんな事ができれば、紙さえ運べれば、遠くにいる人にも言葉が運べるのではないか!

 「ええ。」

 「文字、覚えたいです。」

 「それでは、まず、基本の文字からやっていきましょう。」

 それから、私は、多くの文字を覚えた。これでも全部ではないようだ。

 「フランツェスカ様、お時間になりました。これで今日のお勉強はおしまいです。」

 「はい。」

 おしまいと言われれば、おしまいだ。勉強、もっとやりたいのに…

 そんな時、コンコンとドアが叩かれる音がした。

 クラウス様がドアを開けると、外にはフリーダ様とニクシー様がいた。

 「クラウス様、次はフランツェスカ様のお遊びの時間です。」

 お遊び?また知らない言葉が出てきた。

 「フランツェスカ様、エルフリーデ様とニクシーさんについて行ってください。」

 「はい。」

 とにかく、また新しいことを勉強できるのだろうか。楽しみだ。

 お遊びということで、フリーダ様に外につれてこられた。

 「フランツェスカ、何して遊びますか?」

 そう言われると非常に困る。

 「フリーダ様、遊びってなんですか?」

 「えーっと、縄跳びしたり…おままごとしたり…かけっこしたり…」

 初めての言葉をまた並べられた。

 「そうだ、フランツェスカ。あなた、シルフなのですよね?」

 「はい。」

 フリーダ様にそう言われると、すこしだけ苦しくなった。エミリア様の悲しそうな顔を思い出したからだ。

 「…魔法が使えるのですか?」

 「わかりません。」

 言われてみれば、私は魔法を使えるとは聞いたが、使ったことはない。なので、本当に使えるかはわからない。

 「ならば、ものは試しです。シルフは、風を動かすことができると聞きましたので、やってみてください。」

 「はい。」

 フリーダ様ができると言えば、できる気がしてきた。

 風を感じて…その方向を変えれば良い…どう変えればよいのだろうか…

 「…急に動かせと言われても困りますよね。そうだわ!」

 私がしばらく困っていると、フリーダ様は葉っぱを持ってきた。

 「この葉っぱを上に浮かせてください。」

 「わかりました。」

 葉っぱを手に乗せて、風を集めようとした。

 その瞬間胸のあたりが苦しくなった。私は胸を押さえて倒れてしまった。うまく息が吸えない?のかもわからない。とにかく苦しい。口からは声にならないようなうめき声が漏れるだけだ。

 「フランツェスカ!!ニクシー!ニクシー!!どうしよう、フランが!!!」

 「何事ですか、フリーダ様…どうされたんですか?!フランツェスカ様!?」

 フリーダ様とニクシー様が駆け寄ってくる。すごく悲しそうな顔をしている、またやってしまった。

 そうして、私の意識は、闇に落ちていった。


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