第六話 『人』とはなにか
エミリア様の部屋に残された私は、テーブルの隣の椅子に座らされた。エミリア様も椅子に座る。
「まず、フランツェスカ様、あなた、少し前に、リーゼロッテ様のこと、アーデルヘルム様のこと、交尾相手と言ったでしょう。」
エミリア様、悲しそうな顔をしている。それ以来、言ってないのにもかかわらず。
「ごめんなさい、エミリア様。あの、悲しいですか?」
ああ、私、あの時、そんなに悪いこと言ったんだ。
「あのときは鞭を取り出して、ごめんなさい。」
「いえ、私が言ってはいけないことを言ったので、エミリア様が悪いことは絶対にないです。」
「では、なぜ!なぜ、そう言ってはならないかはわかりますか?」
どうしよう、わからない。
「わかりません。」
そう言うと、また、エミリア様は悲しそうな顔をした。
「良いですよ。フランツェスカ様、これから、ちゃんと、『家族』について、学んでいきましょう。」
「まず、フランツェスカ様、『人』とはなにかわかりますか?」
「『人間』とは違うのですか?」
「はい、あなたの言う『人間』とは、きっと魔法が使えない、私達のことでしょう。では、あなたにとって、『シルフ』とはなんですか?」
シルフ…とは、そんなの考えたこともなかった。でも、今までの私たちの扱いを考えると、導かれる結論は…
「『人間』の言う通りに働いて、大きくなったら、交尾して赤ちゃんを作ったり、魔石を取り出されて砂になるものです。」
「違います!違う!そんなはずない!」
エミリア様は、苦しそうに叫んだ。エミリア様をまた悲しませてしまった。
「良いですか、『シルフ』は、フランツェスカ様は、『人』です。『人間』の仲間です。自分でお話できるでしょう?エルフリーデ様は、あなたを『妹』と言っているでしょう?『人間』と同列の知性を持つ、『人』なんですよ!」
エミリア様はずっと悲しそうだ。そう言うと、エミリア様は、呼吸を整えた。
「まず、『人』とはなにかのお話をしましょう。『人』とは、考える力を持つもの、つまり、『人間』と『魔法種族』です。『魔法種族』の中に、『シルフ』、つまりあなたが含まれます。」
どうやら、私は『人』らしい。
「『人』は『人』に優しくしなければなりません。フランツェスカ、つまり…相手が意思と主体性…つまり、悲しませたり、苦しませたり、ましてや命を奪うようなことはあってはなりません。」
では、今、エミリア様を悲しませている私は…私はきっとすごくだめなことをしているのだろう。
「ごめんなさい。」
それしか言えない。エミリア様を悲しませたくないのに、エミリア様には喜んでほしいのに、全然できない。
「…今日はここまでにしましょう。さて、お昼ごはんの時間ですよ。」
エミリア様は笑顔を作ってそう言った。無理しているのは、私にもわかる。なんで笑っているのだろうか。悲しそうなのに…
「私はお昼ごはんが楽しみです。朝のマッシュポテトは美味しかったです。」
エミリア様のマネをして、私も嬉しくなくても笑顔を作った。そうすれば、もしかしたら、エミリア様も喜んでくれるかもしれないと思ったからだ。
「ええ、それでは子供部屋に移動しましょう。」
エミリア様は笑った。でも、悲しそうだ。
私はご飯を食べる部屋に向かった。
先にルート様が座って待っている。フリーダ様はまだイストニーチク語の勉強中のようだ。
しばらく待っていると。フリーダ様がやってきて椅子に座った。フリーダ様は少し疲れている?
そして、ニクシー様により、前には白い塊が置かれた。
「至高なる者の慈しみに感謝して…」
「「「「いただきます。」」」
この挨拶にも慣れてきた。
「これはミルヒライスと呼びます。」
「はい。」
また、初めて食べるものだ。今度はどんな味がするのだろう…味は、なんかすごく美味しい。毎日美味しいものが食べられて嬉しい。
何回か口にミルヒライスを入れたときだった。
「…フランツェスカ様、食器に頭を近づかせないで、食べてください。」
すこしだけ、驚いた顔で、ニクシー様が私に言った。
「はい。」
これは、難しくなった。フリーダ様の洋服を汚したくないし、頑張らないと。
なんとか汚さずに食べきった。
そして、フリーダ様はエミリア様の部屋に、私はクラウス様の部屋に向かうことにした。




