第三話 入門式
馬車の旅が続くこと10日が経った。
私も、エルフリーデ様の服を着ることに慣れてきた。最初は服が重くて動きづらくて大変だったけど、私のことを待っていてくれるエルフリーデ様のものだと思うと、守られているような感じがして、着るのが楽しくなった。
「お嬢様、もう少しでつきますよ。」
「はい。」
私は返事をした。だが、とても緊張している。
私は、この旅の中で、たくさんのことを学んだ。私は、これから、シュヴァルツヴァルト辺境伯の家族の一員になること。シュヴァルツヴァルト家は代々、マンミンガム帝国のイストニーチク帝国の国境の警備を担当していること。国とは土地と国民(最近人間だけじゃなくて、それに私達魔法種族も含まれるようになったらしい)…よくわからない。シュヴァルツヴァルト辺境伯は自分の土地で自分たちに敵対する人や魔物と戦う力、人間同士の言い争いを話し合いで解決させる力を持っているらしい。
要するに、私は、これからはシュヴァルツヴァルトの土地、チェルノレスを守るために、立派なシルフになるとエミリア様やハンナさん、ケリーさん、執事長(辺境の中で2番目に偉いらしい)のカーティス様、そして、辺境伯のアーデルヘルム・マルクグラフ・フォン・シュヴァルツヴァルト様がとても喜ぶらしい。
この旅の中では初めてのことばかりだった。私が言うことを聞いたり、楽しんだりすると喜んでくれるエミリア様やハンナさん、ケリーさんみたいな人は私の周りにはいなかった。その人間たちもシュヴァルツヴァルトの一員らしい。私は、その人間たちのためなら、何でもできる気がする。
…何でもできる気はするが、何でもできるわけじゃない。やろうとはするが、それがみんなを喜ばせるに足りるのかは正直わからない。
馬車の窓の外から見えてきたのは、大きな囲いの中に立っている大きな大きな建物だった。
「見えてきましたね。これが、あなたの新しい家です。」
「はい。」
これが、私の守るべき場所、私を待ってくれている人間たちがいる場所なのだ。
『家』についたら、まずはお風呂に入れられた。ハンナさんとケリーさんに、いつもよりも良い匂いのする石鹸で体と髪を洗われる。その後、お湯に浸かって、そして、風浴びをする。
そして、『家族』と初めて会うための服に着替える。今までの服は、『人』としての服だったが、今日の服は、『家族』になるための服なので、いつもよりも重いらしい。
家に保管されていた儀礼服を着させてもらうらしい。リーゼロッテ様、つまりアーデルヘルム様の配偶者(交尾相手と言ったらエミリア様が今までで一番怒った。どこからか、鞭を取り出してきて、威嚇された。もう絶対に言わない)がもしものためにと、嫁入りするときに持っていた子供用の儀礼服を着させてもらえるらしい。ところで、嫁入りって何?リーゼロッテ様も、私がシュヴァルツタールに来ることを歓迎してくれている。だから、今日の儀式(入門式というらしい)はリーゼロッテ様のためにも失敗することはできない。
服が着せられていく。肌着の上に、コルセットが巻かれて、ペティコートが巻かれてその上に、ポケットが装着される。更にいつもよりも豪華なペティコートが巻かれて、ガウンを羽織る。胸当てを装着して、上にスカートを履く。そして、ローブを羽織れば完成だ。
そして、私は最後にカーテシーの確認をした。今日のために、短い間で、立ち方、歩き方やカーテシーのやり方を旅籠では叩き込まれてきた。『家族』のためにも、失敗することはできない。
その後は、エミリア様に連れられて、部屋を移動した。しばらく、待っていなさいと言われた部屋で待っていると人間たちが来た。
「はじめまして、私、…お嬢様?と申します。よろしくお願いいたします。」
そして、カーテシーをした。
「はじめまして。私はアーデルヘルム・マルクグラフ・フォン・シュヴァルツヴァルトです。君の義理の父親になるものだ。よろしくお願いします。」
後ろには4人の人間がいる。
「はじめまして。私はリーゼロッテ・エウゲニア・フォン・シュヴァルツヴァルトと申します。あなたの義理の母親になるものです。よろしくお願いします。」
この服を貸してくれたリーゼロッテ様だ。後ろにいる3人の小さい人間はなんだろうか?
アーデルヘルム様は跪いてこういった。
「礼拝堂まで案内しよう。入門式が終われば、君はシュヴァルツヴァルトの家族になれる。」
アーデルヘルム様とリーゼロッテ様に連れられて入った礼拝堂は天井の高い建物だった。歩き方は、周りを見渡さずに真っ直ぐ前を向いて歩くのがシュヴァルツヴァルト流だ。
あまりフカフカしていなさそうな椅子には多くの人がいる。そこには、エミリア様もハンナさんもケリーさんもいる。
一番前のふかふかしていない椅子にアーデルヘルム様とリーゼロッテ様に挟まれて座る。
ローブを着た人間がお祈りをするように言う。それに合わせて、お祈りのポーズを取る。目を閉じて、しばらく瞑想するのだ。
「理性に従い、混沌に落ちずに、至高者の意思を探求することを誓うか?」
ローブを着た人間が私に問いかける。要するに、ちゃんとわがままをしないで勉強しますか?ってことだよね?
「誓います。」
「至高者の秩序のもとに、その名を光の列に加える。」
そう、ローブの人間が言うと、アーデルヘルム様とリーゼロッテ様が前に出て、何かを書いている。
「ここに、フランツェスカ・ヴァルヴィンド・フォン・シュヴァルツヴァルトが理性の民として誕生したことを至高者に宣言する。」
そして、私、フランツェスカ・ヴァルヴィンド・フォン・シュヴァルツヴァルトはみんなの前で、いっぱい練習をしたカーテシーを披露した。




