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第15話 貴族の日常

 「お疲れ様です、お嬢様方。フランツェスカ様、より一層おきれいになられましたね。」

 「ありがとうございます。」

 ニクシー様にそういわれると嬉しくなった。嬉しかったのが伝わったのだろうか、ニクシー様は嬉しそうに頷いた。

 「もうすぐ靴職人が来ますので応接間にご移動をお願いします。」

 「「はい。」」


 応接間につくと様々な巻き尺を持った職人さんがいた。

 「ごきげんよう。今回もよろしくお願いします。」

 フリーダ様がそう言う。今回も、ということは顔見知りなのだろうか。

 「ごきげんよう。フランツェスカ・ヴァルヴィンド・フォン・シュヴァルツヴァルトです。よろしくお願いします。」

 「こんにちは、お嬢様方。私はシューベルトと申します。よろしくお願いします。」

 シューベルト様はこうして頭を下げた。

 「エルフリーデ様、外出用の靴の確認をさせてください。」

 シューベルト様はフリーダ様の靴を確認する。

 「エルフリーデ様、この減り方は…」

 何故かニクシー様とフリーダ様に緊張が走る。

 「きれいな減り方をされてますね。」

 二人は胸を撫で下ろす。今の緊張するところなの?

 「シューベルト様、いたずらに焦らさないでくださいませ。」

 フリーダ様は少し怒っている。

 「失礼しました。焦らしたつもりはないのです。」

 「あの、靴の底の減り方を確認されるのは緊張するようなことなんですか?」

 私は意を決して聞いてみた。

 「はい。靴の減り方はその人の姿勢や歩き方を表す鏡のようなものです。正しくない姿勢でいますと、正しくない靴の減り方になります。なので、靴の底の減り方を気にされる方は多いですよ。」

 「そうなんですね。教えてくださりありがとうございました。」

 その後、足を様々な尺で何度も計測した。

 

 足をたくさん計測された後はお昼ごはんだった。

 私のお昼ご飯は魔法種族で食事が少なくても良いので一品だけだけども、ルート様やフリーダ様はかなりの量のご飯を食べる。私はスープを食べるけど、ルート様とフリーダ様はこれに加えてお肉と野菜をたくさん食べている。一度、同じ量食べさせてもらったけど、食べすぎて、苦しくなってお腹を壊してしまったのだ。美味しかったのにな。

 「このスープ、いらない。」

 ルート様は不機嫌そうに言った。確かに刺激的な味わいだ。フラキというらしい。

 「ルート様、もし、これが、皇帝から食べなさいといわれたものでも断れるというのですか?」

 「言っちゃだめ。」

 リラ様の言葉に、しっかりと答えるルート様。フリーダ様がなんか嬉しそうにしている。

 「でも、今は良いでしょう?」

 「駄目です。いつもできないことは皇帝の前でもできません。」

 皇帝…この国の一番偉い人らしい。どんな人なのだろう?

 「じゃあ食べる。」

 そう言って、ルート様は嫌そうな顔で、フラキを完食した。

 「良い子です。ルート様。」

 「僕、良い子。」

 そういった、ルート様の目には少し涙が浮かんでいた。ルート様にとってはそれほどまずいものだったのだろう。


 午後のクラウス様の授業では運筆の練習をした後、文字の復習をした。文字は全部覚えることができた。

 「それでは、単語を覚えましょう。」

 「はい。」

 「まず、これを見てください。」

 文字の羅列を見たが、なんて書いてあるのかはわからない。

 「これがあなたの名前です。フランツェスカと書いています。」

 これがフランツェスカ…私の名前なのだろうか?

 「はい。…あの、よろしいでしょうか?」

 「許可します。」

 「書いてみても良いですか?」

 私の名前、シュヴァルツヴァルトからの贈り物くらい、早く書けるようになりたい。

 「良い心意気ですが、淑女たるもの先走りすぎてはなりません。今日は元々、フランツェスカ様が自分の名前を練習する日にする予定でした。」

 それから、私は何度も、フランツェスカ・ヴァルヴィンド・フォン・シュヴァルツヴァルトと書いた。そこで、あることに気がついた。

 「発言よろしいでしょうか?クラウス様。」

 「許可します。」

 「文字って、例外はありますが、一文字に一音が対応しているのですか?」

 それを聞いたクラウス様はかなり驚いた。

 「これは次の日に言う予定でしたが、そうです。ただ、どの文字がどの音に対応しているかは明日詳しくやります。」

 どうやら正解だったようだ。

 その後も何度も自分の名前を練習して、クラウス様の授業は終わった。

 

 クラウス様の授業の後はお薬の時間だ。

 「偉大なる先人よ、どうか、フランツェスカ様をお助けください。」

 「お願いします。」

 ニクシー様と私でお薬に対してお願いをした。

 その後は、お薬を胸に巻いて、ニクシー様がスイッチを押して、しばらく待った。お薬からは少し音がする。しばらくすると音がやんだ。

 「今日もありがとうございました。」

 「ありがとうございました。」


 お礼を言った後はフリーダ様と人形遊びを初めてした。

 「まずは、この人形たちはお父様、お母様、お姉様、赤ちゃんです。」

 「はい。」

 人形にも家族がいるのか…まるで人間やウンディーネのようだ。

 「まずやってみせますね。」

 フリーダ様はお姉様人形とお父様人形を両手に持った。

 「ごきげんよう。お父様。」

 フリーダ様がお姉様人形にきちんと挨拶をさせた。

 「こんにちは。」

 フリーダ様がお父様人形にきちんと挨拶をさせて、椅子に座らせた。

 「良いですか?フランツェスカ。お父様はこれからお仕事をします。忙しいので、お話はできませんが。子どもたちのことを気にかけています。」

 「本当に人間のようですね。」

 「はい。人のロールプレイングです。」

 そうなのか。

 「では、アーデルヘルム様もフリーダ様やルート様に対して、そうなのですか?」

 「ええ。そして、フランツェスカに対してもです。」

 …なんか、実感がわかない。

 「フランツェスカはお父様もお母様も知らずに育ったと聞きました。だから、まず、お父様に対して父親と思えるように、一緒に練習していきましょう。」

 フリーダ様は私に微笑んでそう言った。

 「はい。」

 きっとそれもシュヴァルツヴァルトのためなのだろう。そう思わなければ人形遊びなんてやっていられない。…フリーダ様には申し訳ないけど、私はこの遊びは好きじゃない。


 寝る前、ニクシー様と話し合いをした。フリーダ様はルート様と遊んでいる。

 「フランツェスカ、お人形遊びは面白くないでしょう。」

 ニクシー様にそういわれてしまった。私はフリーダ様を悲しませたくなくて、頑張って楽しいふりをしたけど、近くで見ていたニクシー様にはバレてしまった。

 「…はい。」

 やっていると、自分が一人ぼっちだったことを突きつけられる気がして嫌になるのだ。人形にもお父様とお母様がいるのに、私は一人だった。

 「でも、大事なことです。」

 「シュヴァルツヴァルトの淑女としてですか?」

 「いいえ、淑女としてではなくて、一員としてです。」

 そうだ、シュヴァルツヴァルトのためなんだ。お人形遊びも頑張らなければならない。

 フリーダ様が戻ってきた。

 「明日は何をしましょうか?」

 「広いお庭を探検したいです。」

 私は、いろいろなものを見てみたい。

 「フランツェスカ様、それは面白そうですね。どこに行きましょうか?」

 そもそも私は何があるかわからない。

 「困りました。何があるかわかりません。」

 正直に言うことにした。

 「私は温室でお花を見たいです。」

 フリーダ様には行きたいところがあるみたいだ。正直助かった。

 「そうですね、それでは明日を楽しみにしてもう寝ましょう。」

 「「おやすみなさい。」」

 フリーダ様と私はニクシー様に挨拶した。

 「おやすみなさい。」

 ニクシー様にそういわれたら、今日も疲れたのかすぐに寝てしまった。

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