第14話 淑女の立ち振舞は大変です。
私がウンディーネの里から帰って数日が経過した。
フリーダ様と身支度を整えて、ダイニングに行く。
「おはようございます。ルート様、ニクシー様、リラ様。」
朝、挨拶するのにも少しだけ慣れてきた。
「おはようございます。ルート、ニクシーさん、リラさん。」
「「おはようございます、フリーダ様、フランツェスカ様。」」
「おはようございます。フリーダ姉さま、フランツェスカ姉さま。」
みんなで朝の挨拶をした後、ご飯が出された。
「こちら、ピエロギ(ポーランド風の餃子のようなもの)でございます。フランツェスカ様、今日はフォークに挑戦していただきます。」
「はい。」
新しいカトラリーに挑戦だ。
「まず、スプーンですくうように、ピエロギを一口サイズに切り分けます。」
「はい。」
フォークを寝かせたまま立てて、具材を切り分けた。
「そうです。次に、フォークを立てて、具材に突き刺します。そして、口にその具材を運んで食べます。」
「はい。」
言われたとおりに食べた。
「おいしいです。」
中に入っているのはマッシュポテトとチーズだろうか、それがもちもちしたほんのり甘いなにかに包まれている。
「これからも、たくさん練習して、フリーダ様みたいにうまく食べられるようになってくださいね。」
「はい。」
ニクシー様にそう言われた。
「まあ、私もフランツェスカの美味しそうに食べる姿は見習わなければなりません。」
フリーダ様はそう言ってくれた。私のことを案じているのだろうか…
「恐れ入ります。」
それを聞いて、ニクシー様は笑ってくれた。
「ええ、そうですね、フランツェスカ様、おいしいと思って食べるのはどうか、お忘れなきよう。」
ご飯を食べ終わった頃、ニクシー様から伝言があった。新しい靴を新調するので、午前の芸術のお勉強はあるものの、淑女教育はお休みだそうだ。
フリーダ様と一緒にエミリア様の部屋に向かう。
今日はダンスのレッスンだ。
「今日は、フランツェスカ様に合わせて、基本の練習を行います。」
「「はい。エミリア様。」」
「よろしい。」
「まず立ち方からおさらいしましょう。まず、エルフリーデ様、壁に背を向けて立ってみてください。」
「はい。」
フリーダ様は壁に背を向けて立った。
「御覧なさい、フランツェスカ様。後頭部、肩、おしり、ふくらはぎ、踵が真っすぐになるように立つのです。エルフリーデ様、戻ってきてください。」
「はい。」
そうして、スタスタと歩いて戻ってきた。
「フランツェスカ様も壁に背を向けて立ってみてください。」
「はい。」
フリーダ様みたいに立ってみようとすると、肩がなかなかつかなかった。
「肩を開いて、顎を引いてください。」
そうエミリア様は言って、私の肩と顎を押した。なんか、上からつられているような気分だ。
「よろしい。その姿勢で一歩前に出てください。」
「はい。」
言われた通り、前に一歩でた。
「このまま10分間動かずにいてください。」
「はい。」
いわれた通りに10分待っていた。
「よろしい。この姿勢が淑女の立ち姿です。いかなる時も崩すことのないように。」
「はい。」
これは、かなり疲れる。けれども、シュヴァルツヴァルトの令嬢として頑張らなければならない。
「次に、歩行の訓練を行います。」
「「はい。エミリア様。」」
「エルフリーデ様、本を頭に乗せて歩いてください。」
「はい。」
なんということだろうか。頭の上に本を乗せて、フリーダ様はスタスタと歩いている。そして、くるりと振り返って戻ってきた。本を頭に載せたままである。
「エルフリーデ様、よくできました。フランツェスカ様も、3週間でこれができるようになってくださいね。」
「はい。」
できるできないの問題ではない。やらなくてはならないのだ。
「ですが、フランツェスカ様にはまだ難しいと思うので、まずは、しっかりと歩いてみましょう。きれいな姿勢を崩さないように前へ、踵から着地して、つま先で蹴り上げてください。エルフリーデ様のようにですよ。」
「はい。」
そうして歩き出したがぎこちなかった。
「肩の力を抜いてください。」
「はい。」
こうして、30分歩いた後、なんとか普通に歩けるようになった。
「それでは、本を乗せて立ってみましょう。」
「はい。」
やってみると意外と落ちなかった。
「よろしい。それでは歩き出してください。」
「はい。」
そうして、歩き出すと、すぐに本が落ちてしまった。
「毎日練習あるのみです。自由時間があるでしょう。その時間にとにかく練習なさってください。」
「はい。」
自由時間は治療の後には、いつもフリーダ様と縄跳びをしているのだがそれをやらないで歩く練習をすれば問題ないだろう。それしかできるようになる方法が思いつかない。
「あとはカーテシーの練習です。フランツェスカ様は、少しカーテシーが大きすぎます。あとは立礼です。首を下げてください。」
「はい。」
私はスカートをつまんで首を軽く下げた。
「スカートはつまみません。あと、手は体の側面に添えてください。」
「はい。」
その後は何度も立礼の練習をした。
「…これは、春の社交会までになんとかしなくては。フランツェスカ様、エルフリーデ様。今度からはダンスの時間は別々で行います。あまりにレベルと目的が違いすぎるからです。フランツェスカ様はそのままの時間に、エルフリーデ様は午後に行います。よろしいですね。」
「「はい、エミリア様。」」
こうして午前の芸術のレッスンは終わった。




