第13話 シュヴァルツヴァルトへ
朝、身支度を終えて、昨日のように、ニクシー様とゾヤ様と一緒に朝ごはんを食べることになった。今日までは髪を結んでいなかったが、今日から結ぶことになった。サラサラしすぎて紐では止まらなかったから、ベタベタしたものを塗られたら、結べるようになった。人間の技術は不思議だ。
「はい、お待ちどうさん。今日の朝ごはんだよ。」
今日の朝ごはんはスープだった。ニクシー様には黄色いペースト状のものにソースが掛かっているものがもう一品出されている。
「あの、女将さん。」
私は女将さんに話しかける。
「なんだい、フランツェスカちゃん?」
「昨日はキャラメル、ありがとうございました。今まで食べた中で一番甘かったです。」
「そうかい。気に入ってくれたら嬉しいよ。」
そう言って、女将さんは去っていった。
「「「いただきます。」」」
その後はみんなでご飯を食べる。スープの中には見慣れない丸いのが入っている。食べてみると、ほのかに甘くてもちもちしていて、とても美味しかった。
朝ごはんを食べて、歯を磨いたら、宿から出発することになった。
「女将さん、おいしいお料理ありがとうございました。」
チーズパンもキャラメルも、もちもちスープもとても美味しかったのだ。お礼を言わなければならない。
「フランツェスカちゃん、ちゃんとお礼言えて偉いね。さすが、ニクシーに育てられているというべきか…また機会があれば来ておくれ。」
お礼を言うと、ニクシー様はみんなからちゃんとしていると思われる。覚えた。これからも、ちゃんとお礼を言うようにしよう。
「本当に、何から何まで、ありがとうございました。心ばかりですが、こちらを。」
ニクシー様は何度も頭を下げている。
「ここまで色をつけてくれなくていいよ、ニクシー。」
「いえ、私のような人間やフランツェスカ様のために色々してくれたお礼です。」
「じゃあ、ありがたくもらうよ。ところで、ゾヤ。」
「何?女将さん。」
「うちのデネーシュはしっかりやっているかい?」
デネーシュ様は確か、ゾヤ様とゲロルト様と一緒にいた人だ。
「腕っぷしはいまいちだけど、人当たりが良くて見回りセンスは抜群だよ。まあ、最近、争いもないし、腕っぷしが評価されることはあまりない。つまり、デネーシュはうまくやっているよ。」
「そう、しっかりやっているんだね。」
なんで、女将さんはデネーシュ様のこと、そこまで気にするのだろうか?
「女将さん、デネーシュ様とはどのような関係なのですか?」
「ああ、デネーシュは私達の息子だよ。」
息子…つまり親子なのか。私にとって、リーゼロッテ様に当たる人がデネーシュ様にとっての女将さんということだろう。
「はい、わかりました。」
女将さんがデネーシュ様のことを話すときは表情が優しくなる事に気がついた。
「じゃあ、気を付けて帰るんだよ。」
そうしてわたしたちは帰路についた。
「フランツェスカ!」
帰ったら、フリーダ様が駆け寄って出迎えてくれた。
「只今戻りました。フリーダ様、ルート様、そして皆様。」
「おかえり。フランツェスカ姉さま。」
ルート様もトコトコと駆け寄ってきた。
「ところで、体はどうでしたか?フランツェスカ。」
「死ぬことはないそうです。」
「良かった、本当に良かったわ。」
フリーダ様は泣きそうなほどに喜んだ。それを見て私も嬉しくなった。
「フランツェスカ姉さま、どこか痛いの?」
「痛くはないです。ルート様。」
「じゃあ、痛いの飛ばさなくて大丈夫?」
「大丈夫です。」
「なら良かった。」
ルート様がそういったのを聞いて、フリーダ様はなぜか笑った。
夕食を食べ終わってすぐに、アーデルヘルム様が子供部屋に来た。
「父様!」
ルート様がアーデルヘルム様とリーゼロッテ様のもとにかけていって、アーデルヘルム様に抱きかかえられた。
「こんばんは。お父様。」
フリーダ様は挨拶した。
「こんばんは、お父様。」
フリーダ様に続いて挨拶した。
「お父様…」
何故か、アーデルヘルム様はそういった。
「こんばんは、子どもたち、話したいことは山ほどあるが、今日はニクシーに話があってきた。」
「はい。旦那様。ハンナ、ケリー、フランツェスカ様のお世話をお願いします。」
「「かしこまりました、ニクシー様。」」
そうして、アーデルヘルム様とニクシー様は大人の部屋に入っていった。
「フランツェスカ様…」
「はい。」
髪を乾かしてもらっている時、ハンナ様に何故か名前を呼ばれた。
「ケリー聞いた?フランツェスカ様、もう、名無しのお嬢様じゃないのよ。」
「無駄口叩いていると、怒られるわよ、ハンナ。でも、やっと、ボロ切れまとっていた名無しっ子が名前を得られて、居場所を得られたと思ったのに、病気なんて…」
「ケリーこそ、フランツェスカ様に同情なんてしないほうが良いよ。フランツェスカ様は、きっと病気なんて風でふっとばして、エルフリーデ様より元気になるわ。」
「言えてる。だからさ、フランツェスカ様、病気なんかに負けないでくださいね。」
「はい。」
今までの私は、ずっと魔石になることを求められていた。でも今は違う。ニクシー様にハンナさんもケリーさんもフリーダ様、ウンディーネの人たちだって、私が元気でいることを望んでくれている。
「病気なんかに負けません。」
みんなの顔を思い浮かべて、そう言葉に出すと、少しだけ、胸が暖かくなった。




