表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/16

第12話 『お薬』の正体

チーズパンをちぎって食べようとすると、伸びていったので、テーブルを汚さないように即座に置いた。…どうしよう、このままだと食べられない。そう考えていたときだった。

 「すみません、女将さん。」

 ニクシー様が女将さんを呼ぶ。どうやら、ニクシー様もパンが食べられないようだ。ゾヤ様は、チーズパンに齧り付いて、器用にチーズを音を立てずに飲み込んでいく。私もそうしたいけど、そんなことしたら、エミリア様に怒られてしまう。

 「はい。どうした?」

 「小さいフォーク2本ありますか?」

 「デザート用だけど、それでいいかい?」

 「はい。」

 そう言うと女将さんは小さなフォークを2本持ってきた。

 「何に使うの?」

 「シュヴァルツヴァルト流の食べ方をフランツェスカ様には教えなければなりませんので。

 「シュヴァルツヴァルトはお上品な食べ方を競う文化でもあるの?」

 「ありますね。」

 「シュヴァルツヴァルトって大変ね。フランツェスカちゃん、めげないで頑張ってね。」

 「はい。」

 シュヴァルツヴァルトの一員として頑張ることがチェルノレスを守ることにも繋がる。たとえ、色々、理由がわからなくても頑張るしかないのだ。

 「それでは、パンを小さくちぎります。」

 「はい。」

 促されるままにちぎると、今度は普通にちぎることができた。

 「冷めてしまいましたね。そのまま食べましょう。」

 「はい。」

 冷めると美味しくないと女将さんが言っていた。美味しくなくなってしまったのだろうか…残念だ。

 そう思いながら口にパンを含むと、複雑な味わいが口の中に広がった。独特な感じがするが、美味しい。

 「…冷めても美味しいですね。」

 「まあ、美味しいよね。」

 ゾヤ様はそう答える。

 「美味しくないって、女将さん言ってましたが。」

 「でも、熱いほうが美味しいよ。」

 どうやら、美味しいものを食べ逃してしまったようだ。

 「フランツェスカ様、いつか、また、食べましょうね。」

 「はい。」

 ニクシー様の言葉に私は頷く。また食べられるなら、落ち込む必要はない。


 ご飯の後に、お風呂に入った。その後は、みんなでハーブティーを飲むことになった。ハーブティーのポットが机の上に置いてある。私のところにだけ、小さな小皿の上に四角い小さな直方体が置いてある。

 「あの、この直方体はなんですか?」

 「これはキャラメルといいます。口に含んで噛んで食べるミルクキャンディです。」

 「はい。いただきます。」

 そうして、口にキャラメルを含んで噛むと、とても甘くて美味しかった。…でもこれ、いつまで噛んでいれば良いんだろう?そうしているうちに、小さくなっていった。

 「小さくなったら飲み込んで大丈夫ですよ。」

 ずっともぐもぐしていると、ニクシー様にそう言われた。大丈夫らしいので飲み込んだ。

 「すごく、美味しかったです。」

 「それは良かった。女将さんに明日お礼言うのよ。」

 「はい。」

 

 「ところで。」

 ゾヤ様は少し、真剣な顔をした。

 「ニクシーには言う必要ないのはわかっているけど、お薬、大事にしてね。」

 「命にかえても守ります。」

 「ニクシーならそう言うと思った。」

 真剣なニクシー様と笑うゾヤ様。やっぱりそこでもお薬だ。

 「あの、お薬ってなんですか?」

 そう言うと、ゾヤ様は少し驚いて、ため息をついた。

 「マリナ、説明してないの?」

 「マリナ様、シュヴァルツヴァルトの専門医になることを決意なさったので、お忙しかったのだと思います。」

 「マリナが!嘘でしょう?」

 ゾヤ様が驚きのあまり、急に立ち上がった。

 「周知の通り、シュヴァルツヴァルトには魔法種族特有の魔力の病気を診られる方がいません。そのため、マリナ様直々にフランツェスカ様の主治医になることを決めました。」

 それを聞くとゾヤ様は椅子に座った。

 「まあ、そうなるか…マリナならそうするか。じゃあ、私から、お薬について説明するね。正式名称は『身体用魔法治療器具』。通称お薬…人間は聖遺物と呼んだりしたりしなかったりするもの。」

 「はい。」

 「お薬は、調整して、スイッチを入れると、ウンディーネの魔法の効果が発動するものなの。それによって、血が止まったり、いろいろするから、私達はお薬って呼んでいる。」

 「はい。」

 なるほど、人の怪我を治すものは、確かにお薬だ。

 「で、なんで大切にしてほしいかというと、お薬って、ウンディーネが死んだ後の魔石から作られているんだよね。人間に対しても、魔法種族に対しても、ご遺体には失礼のないようにするのが人の礼儀なんだ。」

 「毎日ありがとうって言って使うようにします。」

 そう言うと、ゾヤ様は私の頭を撫でた。

 「フランツェスカちゃんは素直だね。」

 「素直ってなんですか?」

 「ちゃんと人の言うことを聞く子ってことだよ。」

 言うことを聞かないと、何もわからないから聞いているだけだ。

 「わからないことだらけですので。」

 「そうか…そうだ、ニクシー、フランツェスカちゃんが反抗期になって、凄い口答えするようになったら?」

 「その時は、度を越していたらしかりますので、ご覚悟を。」

 「そんなことしません。」

 ニクシー様を悲しませようとは思わない。怒らせたくもない。

 「そうか、じゃあ、もう、フランツェスカちゃんは寝る時間かな?」

 「そうですね。」

 私も眠くなってきた。

 「じゃあ、私は部屋を見張っておくよ。」

 「私も交代で見張ります。」

 ニクシー様がすかさずそう言う。

 「いやいや、私の見守り対象、ニクシーも含んでいるから。見守り対象に見張りさせる護衛がどこにいるの?それに、旦那様と女将さんも交代で見張るから、そんなに心配しなくて良いよ。」

 「それではお言葉に甘えさせていただきます。」

 そして、私達は部屋に戻って、眠りについた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ