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『グラウンドの亡霊たち』 ―血と汗と裏切りの果てに―  作者: キロヒカ.オツマ―


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第91章 脱出と告発



 東条を倒した後、竜司と沙希は疲労で膝をつきながらも、互いの存在を確かめ合った。

 「……大丈夫?」

 沙希の声はかすれていたが、目には安堵と決意が宿っている。

 「大丈夫だ……でも、まだ油断できない。島から脱出しないと」

 竜司は荒い息を整えながら、洞窟を見渡す。


 外はまだ薄暗く、朝の光が海面に反射している。

 遠くの水平線には、東条の残党が巡回している船影が見えた。

 「奴ら、まだ追ってくる……」

 沙希が震える声で告げる。

 「でも、私たちには船がある……あれに乗れば安全圏に行ける」


 小型ボートを岸に引き寄せ、竜司はコンテナを慎重に積み込む。

 中身はカストリの原料と試験データの一部。

 「これを守り抜く……絶対に」

 竜司の目には強い決意が宿る。


 波の音と風のざわめきの中、二人はボートを漕ぎ始めた。

 島の影から出ると、東条の残党が気づき、追跡を開始する。

 竜司は冷静に波間を縫い、島の反対側へ進む。

 沙希も舵を握り、全力で操舵する。


 追手の船が徐々に距離を詰めてくる。

 竜司は咄嗟に小型爆発物を水中に投げ込み、追手を妨害する。

 爆発音と水しぶきが上がり、追手の船は進行を一瞬止める。

 「これで……少しは引き離せる」

 沙希は息を整えながら、竜司に頷く。


 ボートは波に揺れながらも、二人を安全な港まで運ぶ。

 竜司は港に近づくと、周囲の警察と協力してくれる信頼できる仲間のことを思い浮かべる。

 「このカストリを正式に告発する……もう二度と誰も犠牲にさせない」


 港に到着すると、待っていた仲間たちがすぐに二人とコンテナを迎えた。

 「竜司!沙希、大丈夫か!」

 竜司は深く息をつき、沙希を抱き寄せる。

 「なんとか生き延びた……」

 沙希も涙を浮かべながら、頷いた。


 警察の科学班がコンテナを開封し、カストリの原料とデータを確認する。

 「これは……完全に違法な新型薬物の原料ですね」

 専門家の声に、竜司は深く頷く。

 「これを使えば、東条の計画は完全に暴かれる」


 その夜、二人は港の小屋で休息を取った。

 沙希は窓の外を見つめながら言った。

 「竜司……これで、もう怖くない?」

 竜司は彼女の肩を抱き、優しく微笑む。

 「まだ完全には安心できない。でも、少なくとも俺たちは生き延びた。これからは、正しい方法で戦う」


 その時、無線が鳴った。

 「竜司……沙希……確認されたか?東条の残党がまだ動いている」

 竜司は深く息をつき、答える。

 「わかってる。でも今度は俺たちが先手を打つ」


 翌日、警察は正式にカストリ計画の捜査を開始した。

 竜司と沙希は証人として出廷し、東条の犯罪の全貌を語る。

 マスコミも注目し、社会的な波紋は広がる。

 しかし、二人の心は穏やかだった。

 「エリカさんの犠牲も、無駄にはしない」

 竜司は胸に誓い、沙希と手を握る。


 物語はまだ終わらない──だが、少なくとも、二人は東条の恐怖から一歩前に進んだのだった。

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