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陸軍補給部隊、モーツ大尉から見た聖女さん。(1)

「だから!傷ついた人は助けなきゃいけないでしょう!!」


 聖女様とやらがキャンキャン騒いでいる。

 しつこくてかなわないが、追い出すと女神教がうるさいだろうと思えば、部下に追い出させるわけにもいかない。


「うん、そうだな。で、おまえの物資はどこだ」


 やる気があるんなら当然、どこかに持って来てはいるんだろう。戦場に不釣り合いな豪華な馬車と、戦場に不向きな侍女数名しか見当たらないが、たぶん、あるんだろう。

 この娘が正気なら。


「あなたが運んできたでしょ!!」

「これはうちの部隊の割り当てだが?」


 やっぱりこう来たか。

 女神教の連中は、国難のたびに『女神の御名(みな)のもとに、民の助けとなる』聖女を召喚する。そして国に恩を売ろうとするんだが、この聖女ってやつがまあ、とにかく役に立たないということで、軍の中では有名な話だった。


「うちの部隊が運んできたものは、うちの軍隊のために割り当てられたもんだ。聖女様の我儘(わがまま)で浪費するわけにいかないんだよ」

「聖女様の(おぼ)()しを無視するというのですか!」


 小娘に張り付いてるオバハンが、目を吊り上げて金切り声を上げた。


「なんと不遜(ふそん)な!」

「現場の飯を取り上げようってのの、どこが聖女様にふさわしいんだよ?」

「聖女様がお望みなのです、差し出しなさい!!炊き出しに使うのですよ!!」

「生きて帰りたきゃあ、その口つぐみな」


 飯を取り上げられそうになっていると気が付いた部下どもが、殺気を放ち始めているんだし。


「人殺しの(けが)れた下郎(げろう)が、(わきま)えぬか!」


 俺らのことを罵倒(ばとう)してるオバハンの始末は、いずれ部下どもに任せるとして。


「けが人に必要なのに!!」

「そういう取り決めなんだよ、嬢ちゃん」


 うちの兵隊のために用意した糧食(りょうしょく)を、勝手にくっついてきたあげくに怪我した連中に差し出すなんぞ、どこの軍隊だってやりゃあしない。


 勝手にくっついてくる連中については、もともとそういう取り決めになってるからだ。陸軍にくっついてきて商売したり、商売のために陸軍を盾にして移動することに目をつぶる代わりに、彼らが巻き込まれて何かあっても関わらない。そういうことになっている。

 ただまあ、さすがに、戦闘がおっぱじまるって時には警告はするがな。こっちだって連中を傷つけたいわけじゃねえし、なによりとっとと逃げてもらったほうが、俺らも色々やりやすいからだ。


 そういう諸々の都合を無視して、『そこにけが人がいるから、アナタの食料差し出しなさい』なんて言われたところで、困るんである。

 こちとら戦争しにきてるんだ、場違いな小娘のご機嫌取りのために兵隊どもの飯を差し出すいわれはない。


「なによ、戦争やってて人間らしさも無くなったの!?」

「嬢ちゃん、そろそろヤベエから口つぐめ?」

「人殺しばっかりやってて、けが人のこと見てもなんとも思わないんでしょ!」

「だからここでそんな事怒鳴るんじゃねえよ」


 下手なことを言って兵隊どもの恨みを買ったせいで、()()()()()()ったらどうすんだ、バカ娘が。


続きます

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