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約束はどうして果たされなかったのだろうか。


-⑨ 離れた理由-


 ラムネと駄菓子を存分に楽しんだ高校生たちは、各々の家路についた。1つ先の通りにある交差点で二手に分かれて帰って行った。

 まだ昼の2時だったのでゆっくりと景色を楽しみながら守は家までの道を歩いた、無意識に笑顔がこぼれて自然に鼻歌や口笛が出ていた。

 守が家に到着し、玄関の鍵を開けて引き戸を開けると奥からテレビの音が漏れていた。


守(当時)「あれ?母ちゃん、今日休みなのかな・・・。」


 普段、母の真希子はパートの仕事に出ているはずの時間帯なので音がはずは無かったのだが今日は違うみたいだ。

 廊下を歩くと、リビングの入り口から真希子がテレビを見ているのが見えたので守は一先ず一言声を掛けた。


挿絵(By みてみん)


守(当時)「母ちゃん、ただいま。」

真希子(当時)「ああ、守。お帰り、あれ?あんた今日お昼までじゃ無かったのかい?思ったより遅かったじゃないか。」

守(当時)「ああ、ごめん。久々に真帆ちゃんに会ってね、一緒に駄菓子屋に行ってたんだ。」

真希子(当時)「真帆ちゃんって、あの圭ちゃんの親戚の子かい?子供の時からずっと髪型が変わらない子だね。」

守(当時)「母ちゃん覚えてたのか、すごいな。」

真希子(当時)「あんた、まさかあんな可愛い女の子の事を忘れてたとか言わないよね。」


 何故か言葉に圧がある真希子、守は少したじろぎながら答えた。


守(当時)「ちゃ・・・、ちゃんと覚えてたさ。」

真希子(当時)「本当かい?まぁ、いいか。それにしても寄り道して駄菓子屋だなんて、今の学校は随分寛大なんだねぇ、まっすぐ帰れって言われなかったのかい?」


 何故かやたらと詮索してくる母、守はこれはただ事じゃないと察知してリビングに入りソファに座った。


守(当時)「全然、それに母ちゃんも昔寄り道とかしたろ?」

真希子(当時)「そりゃあね、母ちゃんも昔はよく渚と寄り道して商店街にある肉屋のコロッケを買ったもんさ。それはそうとあんた、ちょっと話があるんだ。取り敢えず着替えてからまたここに来てもらえるかい?」

守(当時)「嗚呼・・・。」


 守はそら来たと思いながら自室に戻り、制服から部屋着に着替えた。話が終わり次第やろうと思っているので、鞄から数学の問題集を取り出しておいた。

 守がリビングに戻ると真希子は先程と同じ体制で座っていた、息子に緊張感を持たせない為なのだろうか。


守(当時)「母ちゃん、来たけど何?」

真希子(当時)「ああ、待ってたよ。急なんだけどさ、1つ聞いても良いかい?」

守(当時)「うん、何?」

真希子(当時)「あんた・・・、受験面倒くさくないかい?」

守(当時)「そりゃあ、確かに否定はしないけど。」


 一母親の台詞とは思えないが、受験生の守からすればとても嬉しい一言だった。


守(当時)「でも母ちゃん、何でそんな事聞くの?」

真希子(当時)「あのね、あんた「西野町高校」って知っているかい?」

守(当時)「確か私立の大きな学校だよね。」

真希子(当時)「あそこで良かったら入試免除になるよ、どうだい?」


 いきなり意味不明な事を言い出す母、夢を見ているのかと疑った守は頬を抓った。


真希子(当時)「ははは・・・、夢だとでも思ったのかい?あのね、母ちゃんあそこの理事長とちょっとした知り合いでね、守の事を話したら入学金に授業料、それに入試まで免除してくれるって言ってんだよ。どうだい、行かないかい?」

守(当時)「うん、行く。」


 実は真希子が学校を経営する会社の筆頭株主なので入学金や授業料が免除になったのだった。何よりも家計の助けになる、守は真希子がただのパートで投資家だという事を知らなかったから当然の答えだった。そして入試免除と言うのが嬉しい、しかし真帆にどう説明したら良いのだろうか。その答えが分からないまま月日が流れ、卒業の日を迎えた。


真帆(当時)「次会うのは高校でだね、守兄ちゃんはど・・・。」

友人「真帆ー、すぐにこっちに来てー。」


守が恵まれていたが故だった。

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