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夜勤族の妄想物語3 -6.あの日の僕ら2~涙がくれたもの~-  作者: 佐行 院


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88

守は状況を把握しきれていなかったらしい。


-88 神との約束-


 ベッドの上で守は涙を拭いながら起き上がり、全知全能の神から聞いた助言などを思い出そうとした。


守「確か・・・。」


 目を瞑りゆっくりと頭を回転させていく。


ビクター(回想)「良いか守、助言の通りやるからと言って絶対にしてはならない事が2つ有る。そのどちらかを行ってしまうと一生好美に会えないどころかお前の下から消え去ってしまうだろう、俺との約束を守れるか?この世界に本人がいる事をお前に言った事がバレると、俺が好美に何をされるか分からないんだ。」


 どうやら学生時代の「鬼の好美」は健在らしい、それにしても好美は目の前の神に何かしたのだろうか。


ビクター(回想)「ただな、俺の娘達が好美の世話になっているみたいだから親として恩返しをしたくてね。やはり表では来ようとするなと言ってても死に別れた彼氏に会いたいと思っているはずなんだよ、だから頼むよ。」

守(回想)「でも俺達・・・、好美が亡くなる直前まで話せず仕舞いでした。」


 ビクターは守の肩に優しく手を乗せた。


ビクター(回想)「表面ではそうしていたとしても、心の底ではお前の事をずっと愛していたはずだぜ。自分が亡くなっても尚、大好きなお前には生きていて欲しいっていう気持ちがあったからお前への手紙を結愛に持たせたんじゃないのか?」

守(回想)「やはり・・・、結愛もこの世界に・・・。」

ビクター(回想)「ああ、あいつには困ったもんだよ。本来は禁忌とされているのに何度も何度も元の世界に帰りやがったから他の神に示しが付かなくなってしまってな・・・、ってそれは良いんだ。お前との約束だよ。」


 神は未だに守との約束を伝えることが出来ていない事を思い出した。


ビクター(回想)「じゃあ言うぞ、1つ目は「決してお前の方から好美を探そうとしない事」だ。好美はお前がこの世界にいる事をまだ知らない、お前が探していると知れば会いづらくなってその場から逃げ出すだろう。そして2つ目だ、「決して店主に「何を協力すれば良いか」を聞かない事」、あのライカンスロープの事だからお前の方から聞いてしまうと申し訳なく思って絶対に話さない。するとどうなるか、お前への依頼を他の人に回して最終的に好美に出会う機会はもう無くなってしまう。呑みの席などで必ずあいつの方から依頼を話す様に持って行くんだ、分かったか?」


 守は少し汗をかきながら重々しく答えた。


守(回想)「分かりました・・・、それにしてもケデールさんがライカンスロープって本当なんですか?ライカンスロープって狼男ですよね?」

ケデール(回想)「ああ、でもこの世界の者たちは種族関係なく皆平和に暮らしているから気にせずに同じ人として接したらいい。そうだ・・・、転生者皆にやっているんだがお前にも特別なスキルをやろう。きっとこれからの生活に役立つはずだぞ・・・。」


 守は神の言葉を思い出しつつも、全くもって実感が湧かなかった。本当にスキルを貰えたんだろうか、どうすれば使えるのかを説明を受けはしたが「助言と約束」を聞いた後は何故か虚ろだった為、しっかり理解できないまま夢から覚めてしまった守を扉の外から呼ぶ声がした。


声「守ー、朝ごはんだぞ。おいおい、起きてるか?まさか二日酔いしてないだろうな。」


 声の正体は先程神が言っていたあのライカンスロープ、ケデールだ。


守「あ・・・、店長、おはようございます。」

ケデール「起きていたんだな、おはよう。早速朝ごはんにしよう、良い匂いがするだろう。」


 朝日が差し込む部屋にふんわりと良い匂いがした、朝ならではと言いたいあの匂い。


守「本当ですね、俺味噌汁大好きなんですよ。」


 階段を降りて食堂に入ると炊き立ての白飯とだし巻き卵、そして先程から優しく香る味噌汁がテーブルに並んでいた。席に着くなり、店主は守に切り出した。


挿絵(By みてみん)


ケデール「守、料理は得意か?」

守「家庭料理程度なら・・・、一応。」


ケデールの質問の意味とは。

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