⑧
真帆は中学生活に少し不安を抱いていた。
-⑧ 懐かしい顔に-
突然だが話は守達が中学生だった頃に遡る、当時地元の中学校に通う守達が3年で高校受験を控える中、同じ中学校に真帆が入学して来た。その頃も、そして今も変わらず幼少の頃のショートボブを貫いていた。
幼少の頃から見慣れていたショートボブを見かけた守と真帆はほぼほぼ同時に互いの存在を認識したのだという、実は真帆が密かに守に対して想いを寄せていたが故に、守に自分だとすぐに気づいて貰える様にする為ずっと同じ髪型をしてきたそうだ。
桜の花が舞い散る中学校の体育館で、丁度真帆達1年生の入学式が終わった時だった。式を終えて友人と共に教室に戻ろうとする守に、大声で真帆が話しかけた。
真帆(当時)「守兄ちゃん!!」
守(当時)「ん?」
聞き覚えのある言葉をかけては来たがすっかり成長した真帆の声に守は一瞬違和感を感じていた、しかし制服を着た見覚えのあるショートボブの女の子が守に向かって手を振りながら近づいて来る所を見て幼少の頃よく遊んだ真帆だと分かったらしい。
真帆(当時)「ここの中学校に通ってたんだね。」
守(当時)「もしかしてあの真帆ちゃんか?!」
真帆(当時)「そうだよ、いつも遊んでた真帆だよ!!一緒に缶蹴りした真帆だよ!!ねぇ、今日一緒に帰らない?」
守(当時)「俺は良いけど、真帆ちゃん家は逆方向だろ。」
真帆(当時)「ちょっと寄りたいところがあるの。」
守を見つけてキラキラと目を輝かせている真帆の表情は本当に嬉しそうだった、少し不安に思っていたこれからの中学生活が守の存在を知ったお陰で見違える様だった。
ただ、守は別の方向から鋭い視線を感じていた。そう、笑顔の可愛い女の子と話す守を見た友人達が嫉妬していたのだ。
友人①「おい守、あの子もしかしてお前の彼女か?」
守(当時)「そんな訳ねぇだろ、俺モテた事ねぇもん。」
友人②「そう言う割には見せつけてくれるじゃねぇか。」
守(当時)「馬鹿言ってんじゃねぇよ、教室戻るぞ。」
友人①「顔赤くしやがって、こいつめ。」
友人②「やっぱり顔が良い奴は違うね。」
守(当時)「アホか!!」
守達が教室に戻ってから暫くして、担任が教室に入りホームルームが始まった。
担任「今から進路希望調査の用紙を配ります、希望する高校名を記入して下さい。まだ決まっていない場合は上の方にチェックを入れて空欄にしておいて下さい。」
守は迷いなく地元の県立高校の名前を書いた、念の為3校希望を出した。ただその中に「西野町高校(後の貝塚学園)」の名前は無かった。
担任の下に用紙が回収されるとホームルームが終わり放課時間となった、守は真帆との待ち合わせ場所である校門へと向かった。
友人②「おー、例の彼女と待ち合わせか?」
守(当時)「だからちげぇっての!!」
2人の会話を割く様に遠くから真帆の声がした、振り向いてみると体育館の時の様に真帆が息を切らしながら守の方へと走って来ていた。(挿絵の髪型に違和感を感じるかも知れませんが、物語自体に影響はありませんので予めご了承下さい。)
真帆(当時)「守兄ちゃーん!!」
友人①「「守兄ちゃん」って、妹か?」
守(当時)「連れの親戚だよ、ガキん時によく遊んでた時から「守兄ちゃん」って呼ばれてたんだよ。」
真帆(当時)「もしかして、私の話してたの?」
守(当時)「うん、昔遊んでた事をな。」
守と真帆はその後近所にある駄菓子屋へと向かった、そこはお好み焼き屋も兼ねており、中では数人が飲み食いを楽しんでいた。2人はラムネと駄菓子を数点買うと外にある青いベンチに座って食べ始めた、爽やかなラムネの味が疲れを吹き飛ばしてくれた。
そんな中、真帆が切り出した。
真帆(当時)「ねえ、守兄ちゃんは今年受験だよね。」
守(当時)「う・・・、うん・・・。」
真帆(当時)「何処の高校に行くか決めているの?」
守(当時)「一応・・・、地元の高校希望だけど。」
真帆(当時)「じゃあ真帆もそこに行くから一緒に通学しよ、約束だよ!!」
幼少の頃からのあどけなさが残る真帆。