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夜勤族の妄想物語3 -6.あの日の僕ら2~涙がくれたもの~-  作者: 佐行 院


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83

守の健康を何よりも優先させたい亮吾。


-83 愛情の度合い-


 守の命の恩人は事件の詳細を尋ねようとする警視総監を引き止めた、この時に至るまで2度も命を奪われかけた守の身を案じたからだ。


亮吾「守君は手術から復帰したばかりなんだぞ、今は安静にしといてやってくれ。」


 亮吾は龍太郎に注意しながらある事に気付いた。


亮吾「さっきから良い香りがするけど何だ?」

龍太郎「おっと、忘れてた。母ちゃんに怒られる所だったぜ。」


 どうやら香りは龍太郎の手土産からの物だった様だ、龍太郎が包みを開けると中には大きな水筒の様な物が入っていた。

 龍太郎は蓋を開けてひっくり返し中身を移すと守に手渡した。


龍太郎「中華粥だ、今はサラサラした物が良いだろうって母ちゃんに渡されたんだよ。」


 湯気の立つ優しいスープを一口飲んだ守は再び涙した。


守「ありがとう、女将さん・・・。龍さん・・・。」


 スープの温かさは守にとってまるで松戸夫婦の心の温かさを表している様だった、その光景にじんと来た亮吾は少し離れた所でもらい泣きしていた。


龍太郎「亮吾、何でお前が泣いてんだよ。気持ち悪いな・・・。」

亮吾「お前が泣かせるんだろうが、一体どれだけの人間を泣かせりゃ気が済むんだよ。」


 担当医が感動の涙を流す中、粥を持って来た中華居酒屋の店主は至って冷静だった。


龍太郎「お前、用があるからここに来たんじゃないのか?単に泣きに来たってんならサボりで逮捕すんぞ。」

亮吾「おいおい待てよ、お前が言ったらいくら冗談でも冗談に聞こえないだろうが。」

龍太郎「兎に角、守はいつ退院出来んだよ。」


 龍太郎に促された亮吾は手元のカルテを確認した、ただ口元から空腹と食欲を我慢しているのが目に見えた。


龍太郎「お前、もしかして腹減ってんのか?」

亮吾「実は・・・、昨日の晩から何も食って無いんだ。看護師と一緒にずっと守君の血液を吸い出していたからな。」


 自分の所為だと思った守は罪悪感から亮吾が徹夜や空腹で倒れてしまうかと心配した、しかしその心配も束の間だった。

 病室の出入口から今度は聞き覚えのある女の子の声がした。


挿絵(By みてみん)


女の子「パパ!!守は被害者なんだよ!!決して悪くないじゃん、責めないであげてよ!!」

亮吾「真帆・・・、悪かったよ。」


 娘に叱責された亮吾は改めて手元のカルテを見た。


真帆「それでパパ、守はいつ退院出来るの?」


 どうやら亮吾は普段、娘の尻に敷かれているらしい。


亮吾「まぁ待てって、経過をよく見なきゃダメだろうが。」

真帆「何、真帆に文句言うの?」


 誰よりも一番に恋人の身を案じていた双子の姉は本気の表情をしていた。


真帆「パパ、真帆の彼氏を死なせたらどうなるか分かるよね。一生パパと口利かないし、親子の縁を切るからね!!」

守「真帆・・・、そこまで言わなくても。先せ、いや亮吾さんが困っているじゃないか。」


 守の一言により真帆の怒りの矛先は彼氏に向けられた。


真帆「何で名前で呼んでんの、お義父さんで良いじゃん!!」

守「ま・・・、まだ早いと言われまして・・・。」

真帆「パパ!!真帆と守の事認めてくれたんじゃないの?!」


 真帆に責められた亮吾の汗の量は尋常ではなかった。


亮吾はどうして汗をかいているのだろうか。

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