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夜勤族の妄想物語3 -6.あの日の僕ら2~涙がくれたもの~-  作者: 佐行 院


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74

真帆は酔った勢いで不安に思っていた事を聞いてみる事に。


-74 キス魔だらけの再会-


 友人の恩人と自らが亡くした母との思い出話によりその場が和やかな雰囲気に包まれる中、真帆はいつもは聞けない質問を酔った勢いで投げかけた。ただ、本人にとっては結構重要で、そして不安になっている案件だった。


真帆「ねぇ守、真帆は好美さんの代わりになれてる?」


 守は呑みかけたビールのグラスから口をゆっくりと離して答えた。


守「好美の代わりは誰にも出来ないよ、それに真帆は真帆じゃないか。」

真帆「やっぱり守にとっての1番は好美さんなんだね・・・。」


 少し寂しそうな表情を見せる真帆、ただその表情を見ても守は否定できなかった。


守「俺は人に順位を付けたくないだけなんだ、唯一言える事は俺は好美と同じくらい真帆の事が好きだって事だ。」

真帆「嬉しい・・・。」


 真帆は突然大粒の涙をぼろぼろと流し出した、付き合い始めてからずっと守に愛されている実感が湧いていなかったのだ。


真帆「ねぇ・・・、今すぐキスしていい?」


挿絵(By みてみん)


守「う・・・。」


 彼氏に答える間も与えずに真帆は持っていた小皿をテーブルに置いて守に口づけた、その光景を見た豊は顔を赤らめながら周りを見回した。すると・・・。


豊「おいおい、ここはキス魔だらけですか?」

王麗「この子たちが集まるといつもこうなんだよ、許しておくれ。」


 そう、他のカップル達も濃厚な口づけを交わしていた。折角の料理が冷めてしまいそうだった。


豊「ちょっと俺、トイレ行こうかな・・・。」


 数分後、トイレから出た豊は再び顔を赤らめさせた。


龍太郎「初めてこの光景を見た奴は大体そうなるんだよ、俺達はもう慣れたけどな。」

豊「これに慣れる・・・、事があるんですか?」

龍太郎「もう日常茶飯事ってやつだ、こいつらは恋人同士で集まると周りが見えなくなっちまうんだよ。」

王麗「恥じらいって言葉を知らないのかね、もう何の抵抗もないみたいなんだよ。」


 王麗は熱燗にした日本酒をグラスに注ぎ入れてチビチビと呑み始めた、肴は炙って七味マヨネーズを付けたスルメイカの干物だ。本当に中国人なのだろうか。


王麗「でもね、この子達のお陰で警察の人間でありながら細々と中華屋の人間として働くだけだと思っていた生活が一層楽しくなったのも事実なんだよ。今思えば色んな出来事が有ったね、笑った事も泣いた事も。」

豊「そうですか、この子達のお陰でどんな事でも楽しく笑える様になっていたという事でしょうか。」

龍太郎「ああ・・・、どれも良い思い出ばかりだよ。」


 最初に顔を離して抱き合ったのは美麗達だった、それから美麗は急に恥ずかしくなったのか急いでトイレへと駆け込んでいった。きっと、逆プロポーズが成功した事が本当に嬉しかったのだと思われた。

 数秒後、真美が松龍の前に到着した。走って来たのか、息が荒くなっていた。


真美「やっと・・・、着いた・・・、ってまた?しかも真帆まで・・・。」


 真美にとってもこのキス魔の集まりは見慣れた光景だった、その光景に昔の恩人がいた。


真美「豊さん!!」

豊「真美ちゃん、大きくなったな。あれからも勉強を続けているのかい?」


 実は真美が経済学に興味を持ちだしたきっかけは豊だったのだ、暴力団から足を洗った直後の豊は真面目に生まれ変わろうと松龍で稼いだ金で経済学の本を買い込んで独学で勉強していた、その光景を見ていた真美は豊の部屋へと足を運んで本を読んでいた。


真美「あの頃全然分からなかった事が分かる様になってきた事が何よりも嬉しいんです。」


真美が成長しているのが嬉しかった豊。

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