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安正と美麗にはどんな歴史があるのだろうか。
-68 嘘がきっかけの夜-
連続でのプロポーズがあった後で守には少し気になっている事があった、安正と美麗が本格的に付き合い始めたきっかけが香奈子の引っ越しの日に繰り広げられたドッキリだった事は覚えているがそこからどういった経緯があったか、そしてどういった進展があったかを全くもって耳にしていなかったからだ。
守「なぁ安正、ドッキリのあの日からお前と美麗の間にあった良い思い出の話でも聞かせてくれないか?酒の肴にでもしたいんだけど。」
安正「おいおい、こんなに美味そうな料理が並んでいるのにそれ以上の肴を俺が用意出来るとでも思うか?」
真帆「真帆も聞いてみたい、美麗お姉ちゃんにあった幸せなエピソード。」
安正「真帆ちゃんが言うなら・・・、でも酒が不味くなっても知らねぇぞ・・・。」
これは美麗が福来子達とドッキリを仕掛けた数週間後の話だ、安正は友人と大学近くにある鶏料理が自慢の食堂でランチをしていた。
友人(当時)「安正、最近彼女さんとどうなんだよ。今夜だってちゃんと考えているのか?」
安正(当時)「今夜って何なんだよ成久、俺は今夜バイトだぞ。」
安正の友人である加州成久はちゃんと恋人の為の行動を安正がとっているか心配だった、予想はしていたがバイトを理由に元々高嶺の花と呼んでいた彼女の事を蔑ろにして欲しくは無かったからだ。
成久(当時)「ちょっと待てよ、じいちゃんに電話してみるから。」
安正(当時)「店長に?」
そう、成久は当時の安正がバイトをしていた弁当屋の主人の孫だった。成久が片手に持った箸にチキン南蛮を挟んだまま携帯を操作して店に電話を掛けると電話に出たのは話に出て来た本人の祖父だった。
祖父(当時・電話)「お電話ありがとうございます、出来立て弁当のカシューナッツです。」
いくら苗字が加州だからって店名の決め方が雑過ぎやしないだろうか、ただ今現在での論点は決してそこでは無い。成久は笑いを堪えながら祖父に声をかけた、その傍らで箸に挟んだままのチキン南蛮からはタルタルソースが完全に落ちてしまったみたいだ。
成久(当時)「あ、もしもしじいちゃん?今夜って忙しいの?」
祖父(当時・電話)「何だ成久か、今夜か?忙しいも何も、今日は昼営業だけにしているはずだぞ?誰か出鱈目でも言ったのか?」
成久(当時)「いや、そう言う訳じゃ無いんだけど・・・。じゃあ安正も今夜は彼女さんとゆっくり楽しんでも良いんだよね?」
祖父(当時・電話)「当たり前だろうが、俺も今夜はばあちゃんと現地に行こうと思っているからゆっくりして来いって伝えておいてくれ。」
祖父が言った「今日は昼営業だけ」と言うのは孫に頼まれてわざとついた嘘だった、最近ずっとバイトを詰め込み過ぎていた安正に1晩位は恋人とのゆっくりとした時間を過ごして欲しいという気遣いからだ。しかし、シフト表をしっかりと頭に入れていた安正には効果が無さそうだった。
成久がスピーカーフォンに切り替えると安正は必死の形相で話しかけた。
安正(当時)「店長、嘘を言わないで下さい。今日、俺はラスト(0:00)まで仕事が入っているはずですけど。」
祖父と孫はまさかと思っていたがやはり安正は鋭かった、成久から電話を奪い取った安正に対して店長は成久の思惑を知っていたので何とか叶えようと必死だった。
祖父(当時・電話)「私だって人間だ、たまには人生を楽しみたいんだぞ。今夜位夫婦水入らずの時間を過ごしたって良いじゃないか、とにかく今夜は店を閉めるからお前も彼女さんとゆっくりするんだ、分かったな?」
安正(電話)「わ・・・、分かりました・・・。」
安正から電話を取り返した成久は電話を切ると急いでメッセージを送った。
成久(当時・メッセージ)「じいちゃん、忙しい時に悪いな。」
祖父(当時・メッセージ)「じいちゃんは構わないがお前は良いのか?お前だって今夜を楽しみたいだろうに、安正君の代わりに手伝ってくれるだなんて。」
成久(当時・メッセージ)「良いんだよ、安正と違って俺は1人者だからな。」
孫の事を不憫に思った店長は今夜の時給を2割程アップさせる事を心に誓った、そんな中で偶然にも同じ食堂に美麗が友人を連れてやって来た。
-69 いつもと違う雰囲気を楽しむ恋人達-
美麗は相も変わらずのチャイナ服で大学の授業を数コマこなした後に友人の安倉 優と安正達のいる食堂へと入った、2人はこの日朝から連絡を取っていなかったのでまさかこのランチタイムにこの食堂で会うとは思ってもいなかった。
優(当時)「ねぇ美麗、今日もあんたは昼限定ランチで良いよね。AとBのどっちにする?」
美麗(当時)「じゃあ・・・、Cで!!」
優(当時)「Cね・・・、何のセットだったかな・・・、ってあるかぁ!!」
美麗(当時)「それと、お腹空いてるからご飯は小盛ね!!」
優(当時)「どっちなのよ!!ボケを連発しないでよ、ツッコミが追いつかないじゃん。」
どうやら当時、学科内で美麗はクラスのボケという役柄を担っていた様だ。その事を一切知らなかった安正は恋人を見かけてポカンとした様子だった。
安正(当時)「美・・・、麗・・・?」
美麗(当時)「安正?!何でいんの?!」
安正(当時)「たまにはここで食うかってなったんだよ、この後授業無いから。」
後は帰るだけになった安正は大学より自宅からの距離が近いという理由だけでこの食堂を選んでいた。
優(当時)「本当にこの人と付き合ってたんだ、じゃあ今夜も一緒に?」
美麗(当時)「いや、残念だけどバイトがあるんだって。」
安正は淋しそうな表情を見せる彼女を急いで宥めた。
安正(当時)「それがさ、今夜休みになったんだ。夜は店閉めるって言ってたから。」
安正の言葉に黙っていなかったのは他の誰でも無く優だった、優は安正のバイト先の常連だったそうで本人にとってはかなり重大な緊急事態が発生したらしい。
優(当時)「じゃあ今夜私が予約してる焼肉弁当は?18:00に5人ま・・・!!」
成久(当時)「待って、ちょっとこっち・・・。」
優の言葉に焦りの表情を見せた成久は優を少し離れた場所へと連れて行った、優は成久の咄嗟の行動に驚きの表情を隠せなかった。
成久(当時・小声)「すいません、安正達に2人の時間を過ごして貰おうと嘘ついたんです。じいちゃんが言うには勿論今夜も営業しますし、焼肉弁当は肉多めで用意しますから話を合わせて頂けますか?」
優(当時・小声)「ふふん・・・、ご飯も大盛りに出来ます?」
優のノリの良さは地元でも評判があったらしい。
優(当時)「予約・・・、明日だったのを忘れてました。それで結局美麗は今夜どうする訳?」
美麗(当時)「安正と・・・、過ごしたい・・・。」
安正(当時)「じゃあ、夕方5:00に迎えに行くよ。」
安正は緊張していたのか自らが指定した時間よりかなり早く松龍へと到着した。
龍太郎(当時)「お前早すぎないか?まだ美麗は帰って来てないぞ。」
安正(当時)「じゃ・・・、じゃあ今何処に?」
すると丁度店の前に帰って来た美麗が声を掛けた、いつもと違って今日は純和風の装い。
美麗(当時)「ここだよ、早かったね。」
龍太郎(当時)「じゃあ、安正・・・。くれぐれも・・・。」
安正(当時)「分かりました、お義父さん。」
龍太郎(当時)「馬―鹿、まだ早いって言ってんだろ。」
松龍からゆっくりと歩いたいつもの公園に沢山の屋台が並んでいた、ただ美麗は何よりも安正と一緒に来れたのが嬉しかった様だ。
美麗(当時)「ねぇ、何の出店から見て回ろうか?」
楽しそうな美麗の横顔でお腹いっぱいな気分の安正、顔を赤らめながら質問に答えた瞬間は少し歯痒い気持ちでいた。
安正(当時)「じゃあ・・・、綿菓子で。」
美麗(当時)「良いよ・・・、美味しいもんね。」
緊張で目線の先の出店を指定した安正。




