62
守は何かを忘れている気がした。
-62 警視総監の心遣い-
結愛達の手で母の死により一生食べる事が出来ないと思っていた大好物が温まって行く中、守は大事な事を思い出して慌ててある場所に電話を掛けた。そもそも自分はどうして家に帰って来たのかを忘れかけていたのだ。
守「結愛、すまん!!」
自らが経営する会社の筆頭株主となった守の唐突の謝罪に驚きを隠せない代表取締役。
結愛「何だってんだよ・・・、何で謝るんだよ!!」
守「それさ、松龍に持って行っても良いか?」
結愛「勿論、俺と光明は良いけどよ・・・。なぁ?」
光明「確かに大丈夫だぜ、でも龍さんは良いって言ってたのかよ?そもそもこの時間帯って店が閉まっているだろう。」
確かに時計は松龍が昼営業を終えて中休みをしている時間帯を指していた、ただ今日は真希子の葬儀への参加により臨時休業になっていた。
守「実はな、この後その龍さん達と呑む事になっているんだよ。」
光明「良いじゃねぇか、じゃあ風呂敷に包んでやるから持って行けよ。」
光明は火を止めて粗熱を取ってから風呂敷で再び鍋を包んだ。
守「お前らも来いよ、龍さん達会いたがっていたぞ。」
光明「悪いな、俺達すぐにあっちの世界に戻らないといけないんだよ。仕事が立て込んでてさ・・・、また今度な。」
守「そうか、すまん事をしたな。」
守は玄関先で光明から風呂敷包みを受け取ると松龍へと歩き始めた、結愛達に向かって手を振ろうと振り返ると既に2人の姿は無かった。
守「あれ?もう行っちゃったよ、次あいつらと呑む約束したかったのにな。」
少し残念そうにしながらも歩を進める守、ただ2人の事だからいつかまたやって来た時に会えるだろう、そう思いながら松龍へと到着すると・・・。
結愛「おう、遅いじゃねぇか!!先に始めちゃってるぜ!!」
まさかの生中片手に赤くなっている結愛達の姿が。
守「おま・・・、おま・・・、お前ら仕事は?!」
結愛「何とっくの昔的な事を言ってんだよ、もう数時間前に終わったって(※しつこい様ですが、現実世界と異世界では時間の流れにずれがありますのでご了承下さい)。」
鍋の入った風呂敷を両手に抱えながら開いた口が塞がらない守、あっちの世界でも結愛は一流のビジネスマンらしい。
龍太郎「それで?例の鍋ってのがこれか?」
守「うん・・・、〆に温めて食べようと思って。」
守から鍋を受け取った店主兼警視総監は少し温もりを感じたので勿体ないと思ったのか、中のハヤシライスソースを少し中華鍋に移して加熱し始めた。
守「な・・・、何やってんの?」
龍太郎「お前が好きだった物にこいつをかけたら絶対美味いと思ってな。」
そう言うと龍太郎は別の中華鍋でバターライスを作った後、皿の上にあけてその鍋に卵を流し込んだ。守はその様子を見て懐かしい気持ちになった。
守「これってもしかして・・・。」
龍太郎「ああ、お前が高校生の時にいつも食ってた「オムライス」だ。ただ呑む前だから少し少なめだがな。」
そう言うと守が高校生時代に食べていた物に比べたら一回り小さな「この店での好物」に「母親の作った好物」を合わせて守の目の前に置いた。
龍太郎「ほら、オムハヤシだ。今日というかお前だけの限定メニューだから味わって食うんだぞ。」
守は言われるがままに1口・・・、そして2重の懐かしさが涙を誘った・・・。
龍太郎の優しがが何より嬉しかった様だ。




