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真希子がまさかの副店長だって?!
-61 故人の謝罪-
守は生前の母の職業を思い出していた、今まで1つの会社の社員や経営者として働いていた事が有った様には思えない。貝塚財閥の筆頭株主であった傍らで他の主婦に紛れる為パートでの仕事ばかりしていたという記憶しかなかった。
そんな母が・・・、1つの店の副店長・・・?それに光の旦那の店って・・・?
守「母ちゃんが光さんと働いているのか?」
結愛「ダル・・・、いや光さんは別の場所で働いてんだよ。さっきも言っただろう、お前の母ちゃんは光さんの旦那さんの店で副店長をしてるって。」
守「そっか・・・、それでその母ちゃんがどうしてお前に頼み事を?」
結愛「えっとな・・・、多分だがお前の母ちゃんは俺達と同等の魔力を持って無いからだと思うんだよ。こっちの世界に来るのには結構強めの魔力を要するからな。」
守「・・・、って事はお前やっぱり魔法使いなんだな?全くそうは見えないけど。」
生前と同じで結愛は相も変わらずパンツスーツだ、本人がそれで満足している様なので良しとしたいが何となくピンと来ない。
守「結愛・・・、お前魔法使いらしい格好じゃないな。」
結愛「そりゃそうさ、あっちの世界にも貝塚財閥はあるからな。」
守「じゃああっちの世界でも会社を経営してんのか?」
結愛「当たり前だろう、俺以外に誰が経営するってんだよ。」
確かにそうだ、もしも先に亡くなったとされる義弘が経営していたら最悪の独裁政治が再び行われることになる。特に・・・。
守「貝塚学園もあるのか?」
結愛「おう・・・、魔学校って形で学園を管理してるぜ。貝塚財閥は学校教育に協力的だからな。」
守「なるほどね・・・。」
結愛があっちの世界で何をしているのかは大体分かったが今気になるのは母の事だ。
守「それで・・・?あっちの世界でも社長をしているって言う結愛に母ちゃんが何を頼んだってんだよ。」
結愛「そうだ、思い出したぜ。えっと・・・、あれ?光明は?」
守「光明は見かけてねぇぞ。」
2人は周辺を探し回ったが光明の姿は無かった、試しに宝田家の横にある空き地に行くと光明が木陰に座り込んで涼んでいた。
結愛「お前ここにいたのかよ、早く来やがれ。冷めちまうだろうが!!」
光明「結愛が荷物を俺に押し付けたからだろ、これ結構重いんだぞ。」
結愛「おいてめぇ、女の俺に荷物持ちをさせる気かよ。男ならそれ位持ちやがれ!!」
光明(小声で)「いつもパンツスーツだし男勝りし過ぎてて女に見えねぇんだが。」
結愛「あん?何か言ったか?俺に文句あんのか?」
光明「いや・・・、何でも無いっす・・・。」
完全に結愛の尻に敷かれている光明は致し方なく荷物を守の家に運び込んだ、風呂敷に包まれた大きくずっしりと重い荷物。
光明「早く置かせてくれよ、熱くて仕方ねぇんだよ。」
守は耳を疑った、「冷める」や「熱い」だと?「重い」ではなく「熱い」だって?
守「取り敢えずそこのテーブルに置けよ、重たいだろう?」
光明「テーブルよりはコンロに置かせてもらうぜ、その方が助かる。」
守「良いけど・・・、何でコンロだよ。」
光明は1度テーブルに荷物を置くと風呂敷の結び目を解いた、中に入っていたのは深めの・・・、鍋・・・。光明はその鍋をコンロに置いて火をつけた。
光明「お前にこれを食わせたかったらしいぜ、ほら結愛。」
光明が鍋の蓋を開けて結愛がかき混ぜると甘酸っぱく懐かしい匂いが広がった、守と生前の好美が好きだったあの料理の味。
守「これは・・・、母ちゃんのハヤシライスの匂い・・・!!」
そう、真希子は守に対して自らも予期していなかった突然の死により孤独にしてしまった事に謝罪したかったのだ。決してハヤシライスでは表しきれない位の謝罪・・・。
つい子供に戻ってしまった守。




