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昔話を語る勢いで秘密を暴露してしまった王麗と何とか対応しようとする龍太郎。
-54 母が改めて実感させたかけがえのない存在-
珍しく天然をかましてしまった部下に呆れた様子の警視総監は頭を抱えながらも落ち着きを保っていた、一緒にいたメンバー以外には人気の無い廊下で大きくため息をついて2人の刑事の方向を見た。
龍太郎「美恵ちゃん、そして文香ちゃん。2点ほど約束して欲しい事が有るんだ。」
文香「はっ、警視総監、何なりと仰ってください。」
美恵「これまでの数々のご無礼を反省致しております。」
改まった様に緊張した様子で松戸夫婦に向かって敬礼する刑事達。
龍太郎「まぁまぁ、そう改まるな。簡単な事さ。①俺達が警視総監と警視だって知っている上で今まで通り付き合う事、俺達の事を知っているのは君たちの周辺では「めっちゃん」こと姪家警察署長位だからな。②俺達はこれまで通り中華料理屋の店主と女将としてひっそりとしていたいからくれぐれも俺達の事は秘密にしておく事、いいね?」
文香「分かっ・・・、た、龍さん。」
美恵「わ・・・、私も・・・。」
2人の言葉を聞いて安心した様子の龍太郎は一息ついて王麗に相談を持ち掛けた。
龍太郎「なぁ、この2人の活躍は母ちゃんも知っているだろう、そろそろあの事を伝えても良いんじゃないのかと思うんだけどどう思う?」
王麗「あたしゃ構わないけどめっちゃんはどう言ってるんだい?」
龍太郎「別に構わないって言ってるよ、一応俺は警視総監だからな。」
夫婦の会話に首を傾げる刑事達に真実(というより吉報)を知らせる事にした龍太郎。
龍太郎「倉下刑事、そして吉馬刑事。」
2人「は・・・、はい!!」
美恵と文香は珍しい呼び方で呼ばれたのでつい改まってしまった。
龍太郎「我々の独自捜査への協力や周囲の方々への無数の心遣い、誠に感謝しています。よって2人を警視総監である私の権限で警部へと昇格させて頂きます、おめでとう、そしていつもありがとう!!」
刑事達改め警部達2人にとって全く記憶に無い事だがまぁ良いかと昇格を受け入れる事にした。
さて、すっかりほったらかしになってしまった故人の葬儀なのだが遺書に書かれてあった通り身近な人間のみで密かに行われた。喪主となった守が葬儀後の参加した全員に火葬場で弁当を配っていると真帆が彼氏を手伝い始めた。
真帆「真帆、守の為なら何でもするって言ったじゃん。」
守「悪いな、参列してくれた上にこんな事まで。」
真帆「大好きな守の為と思えば喜んでやるに決まってるもん。」
幼少の頃から自らの事を好きだと言ってくれた真帆に心から感謝する守、恋人の存在に改めて感謝するばかりであった。
真帆「今の守には真帆が付いてるからね、決して寂しい思いはさせないからね!!」
参列者全員に弁当を配り終えた瞬間、真帆は守を火葬場の裏へと連れて行き、恋人の喪服を掴んで泣き始めた。
真帆「守は・・・、守は真帆が守るもん!!守はずっと真帆の物だもん!!真帆がいるから悲しまないで、ずっと笑ってて!!」
守「真・・・、帆・・・。くぅっ・・・。」
火葬が進んでいくにつれ、込み上げて来たたった1人の肉親を失ったが故の悲しみ、ずっと自分のそばにいてくれると言う目の前の恋人への感謝の気持ちで涙が止まらない守。
守「母ちゃん・・・、真帆・・・。」
真帆は留まる事と乾く事を知らない涙を延々と流す守を抱きしめて一言。
真帆「守・・・、もう何も言わなくて良いから!!」
そう言うと守に無理矢理唇を押し付けた真帆、2人は舌を絡め合わせて数十秒程濃密な口づけをずっと交わしていた。
守と真帆は互いにとってかけがえのない存在となっていた。
改めて真帆に感謝する守。




