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王麗は過去の思い出に浸っていた。
-52 親友-
王麗は薄暗い化粧室の一室で、若かりし頃の真希子と撮った写真を握りながら震えていた、スルサーティーを背に2人が屈託のない笑顔とピースサインをしていた仲睦まじい様子の思い出写真。
王麗「真希子、もうあんたのドライビングには乗れないんだね。」
当時刑事だった王麗は渚と同様、警察に協力する側の走り屋の1人として峠を攻めていた真希子の助手席に乗り犯人の逮捕に尽力していた。
王麗(当時)「全く・・・、あんたも無茶をする女だね。見てる私がヒヤヒヤするのに平気な顔しちゃってさ。」
真希子(当時)「良いじゃないか、あたしゃこのスリルを楽しみたくてこの車を買ったんだ。それにあんたは乗ってるだけで仕事が出来て給料が出るんだ、一石二鳥ってやつさ。」
この日も警察本部からの要請を受けた王麗は真希子が当時パートをしていたスーパーへと向かい、協力をお願いしていた。因みにこの事は2人以外に警察署長とこの店の店長しか知らない。
店長「真希子ちゃん、走るのは良いけど怪我だけはしないでおくれよ、王麗ちゃんはいいけど真希子ちゃんはウチの大事な従業員だからね。」
王麗(当時)「店長、それどういう意味だい。」
店長「刑事さんだからどんな事でも平気だろ?」
王麗(当時)「何言ってんのさ、刑事である前に私だって1人の女なんだからね。」
店長「悪かった悪かった、いつものサービスするから許してよ。」
王麗(当時)「そう来なくっちゃ。」
店長の言葉を聞いて笑顔で指パッチンをした王麗は早速惣菜コーナーへと向かい春巻きと公魚のフリッターを数本ずつ取った。
店長「おいおい、いくら何でも取り過ぎだって。しかも新商品の公魚まで。」
王麗(当時)「良いだろう、真希子の分だよ。」
店長「もう、調子良いんだから・・・。」
王麗(当時)「えへへ、あたしらに勝とうだなんて100年早いんだよ。」
店長「仕方ないな・・・。」
実は揚げ物はカムフラージュで「サービスをする」と言うのはこの店の地下にある2人のアジトを開放するという意味だった、2人は早速今夜の作戦を考え始めた。奥の壁に張られたスクリーンに今回のターゲットのデータが表示されていた。
2人は店長から貰った揚げ物を頬張りながら話し合った。
真希子(当時)「またこの犬どもか、懲りない奴らだね。」
通称「山犬」と呼ばれる暴走族がにらみを利かせた写真が映っていた、族の中には逮捕歴の多い人物も多く、毎日の様に警察官の手を焼かせていた。勿論、王麗もその1人。
王麗(当時)「そりゃそうさ、この前あんたにコテンパンにやられたからだよ。」
真希子(当時)「何さ、協力してるってのにそれじゃまるで悪者じゃないか。」
声に少し怒りが混じる真希子。
王麗(当時)「悪かったよ、感謝してるって。」
真希子の声に少したじろいだ王麗、ただこういった会話が交わされるのも無理は無い。過去に真希子は王麗が手錠をかけようとした相手を見様見真似でやった酔拳で失神させてしまった事があったのだ。
それからというもの、真希子は王麗にとって決して敵に回してはいけない、そしてかけがえのない仲間という存在だったのだ。
そんな事を思い出しながら霊安室に戻った王麗は涙を流しながら一言。
王麗「真希子、今の私がいるのは他でもないあんたのお陰だよ、ありがとうね。罵り合いも多かったけどあんたの事尊敬していたんだ、中国から日本に来たばかりだった私と一番に仲良くなってくれたのも常連だったあんただったね。あんたこそ大変な人生だったのに私の為にあそこまで・・・、本当に・・・、ありがとう・・・。」
美麗「ママ、真希子さんって昔から良い人だったんだね。」
王麗「ああ・・・、ママの最初で最後の、たった一人の親友さ・・・。」
王麗の言葉に涙する美麗、すると守が霊安室に戻って来た。
守「母ちゃんも同じ事言ってたよ、女将さんは最高の親友だったって。」
最高の親友は心も通じる




