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夜勤族の妄想物語3 -6.あの日の僕ら2~涙がくれたもの~-  作者: 佐行 院


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先程までの真希子の表情が嘘のようだと思える状況だった。


-㊿ 信じたくない-


 結愛の発言に驚きの表情を隠せない守、急ぎ家へと戻りトイレの扉を叩いた。ドアノブを見てみると扉の鍵は閉まっていた、まぁ、当然の事か。


守「母ちゃん!!母ちゃん!!中にいるんだろ!!開けろって!!」


 まさか「トイレに行ってくる」が母の最期の言葉になるとは思いたくない守はドアノブを必死に動かしていた、しかしドアはピクリとも動かなかった、これも当然の事。


結愛「守待てよ、落ち着けって。もしドアが開いて、お前の母ちゃんが生きてたとしてもしも脱いでたらどうするつもりだよ。俺がやるからどかんかい。」


 自らも死者だからか、やたらと落ち着いていた結愛は守と交代して中にいると思われる筆頭株主に声をかけた。しかし・・・。


結愛「おば様、いるんでしょう!!返事して下さい!!」


 一瞬にして落ち着きを無くした結愛、やはり恩人を亡くしたくないが故に心中は息子以上に必死になっていた様だ。ただ、扉の向こうからの反応は全くない。


結愛「守、悪い。ぶち破るぜ!!」


 結愛が勢いよく扉に体をぶつけると中から真希子が倒れ込んできたので守が下から受け止めた、社長によるとどうやら用を済ませた後でちゃんと服は着ている様だ。

 守は母をすぐそばに寝かせて救急車と警察署にいる美恵に電話をした。


美恵(電話)「守君、落ち着いて。すぐに文香と行くから現場をそのままキープしておいて。」


 電話を受ける守の声は何処か暗かった、母を亡くしたかもしれないので当然だ。


守「分かった・・・、外に出ておいた方が良い?」

美恵(電話)「うん、その方が良いかも。すぐに行くからね。」


 5分後、数名の警官と共に美恵と文香が駆けつけた。家の周辺に規制線が張られ警官達が家の中に流れ込む様に入って行った、結愛はいつの間にか消えてしまっていた。


文香「それで・・・、守君が外で待ってた時に中々出てこなかったから様子を見に行ったって訳ね。」


 流石に亡くなった事が報道された社長に知らされたなんて言えない。


守「うん、そこにある母さんのくる・・・、あれ?」


 守は自らが立っていた場所を指差した、何故か真希子のスルサーティーが消えていた。


美恵「どうしたの?」

守「そこにあったはずの母ちゃんの車が無くなってて。」

美恵「真希子さんの車って確か「紫武者」のスルサーティーだよね。守君が乗って行った訳では無く?」

守「俺は別に車があるもん、ほら。」


 守は母に買い与えられた車の方向を指差した、本人の車はちゃんと残っていた。

 そんな中、真希子が救急車で運ばれた。母はやはりピクリとも動かなかった。


守「俺も一緒に行ってくる・・・。」

文香「そうね、それが良いかも。後で病院に行くからお話、聞かせてね。」


 救急車の車内で救急救命士が心臓マッサージを続ける中、守は祈り続けた。先程結愛に言われた言葉はきっといつもの悪い冗談だろう、そう思いたかった。


守「母ちゃん、母ちゃん・・・。」


救急車が病院に到着し、真希子は救急治療室に運ばれた。ただ医師は守をすぐに呼び出し、号泣しながら告げた。


挿絵(By みてみん)


医師「宝田 守さんですね、残念ですがお母様は既に息を引き取っておられます。」


 結愛の言葉は冗談ではなかったらしい、その事を知った守は初めて泣き崩れた。虚しく鳴り響く心電図の電子音、恋人に続き母までも守の側からいなくなってしまった。

 守は、再び孤独になった。


これから、どうなるのだろうか

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