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夜勤族の妄想物語3 -6.あの日の僕ら2~涙がくれたもの~-  作者: 佐行 院


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43/83

守は兎に角真実を知りたかった。


-㊼ 来ると思わなかった文-


 2次会の宴もたけなわとなり、参加した面々が各々の家路につき始めた頃、守は体を小刻みに震わせながらさり気なく帰ろうとする結愛と光明を呼び止めた。


守「待てよお前ら、俺に言わないといけない事があるんじゃないのか?」


 守の言葉に惚けたふりをする結愛、どうやら何事も無かったかのようにその場を離れたかったらしい。


結愛「何だよ、俺がお前に隠し事をした事があるか?」

守「お前らの事、龍さんに聞いたんだぞ。ちょっとこっちに来いよ!!」


 守は自らの気持ちを表すかのように強く結愛と光明の腕を引いた。


結愛「痛ぇよ、スーツが破れるだろうが!!これ新調したばっかりなんだぞ!!」

光明「守、お前何興奮してんだよ、ちょっと落ち着け!!」


 守は至って冷静だった、しかし以前龍太郎から聞いた事が本当に事実なのか確かめたかったのだ。


守「お前ら、幽霊なのか?竜巻で一度死んだって聞いたぞ。」

真帆「守、どういう事?真帆、初めて聞いたよ!!」

守「今から全てが分かるよ、ちょっと待ってて。」


 恋人を怯えさせる訳には行かないと優しく声をかける守。


光明「守には嘘つけないな。結愛、この際ハッキリと言ってしまおうぜ。」

結愛「仕方ねぇな・・・、全て話すよ・・・。」


 結愛は先日、原因不明の竜巻で自らを含めた貝塚財閥の人間数人が亡くなった事、そして異世界に転生を果たして魔法使いになった事を話した。


結愛「死んだって実感が無いんだよ、それに「転生」って言っても姿はこのままだから「転移」って言った方が良いかも知れん。ただ「神様」ってやつのお陰で色々と便利な生活をしているのは確かなんだ。」


 話の次元が違い過ぎるので頭が追いつかない守、その横で真帆も頭を悩ませていた。


真帆「結愛さんは「あの世」から蘇ったって事?」

結愛「そうでは無いんだな・・・、向こうの世界の人間だけどこっちの世界を訪問したって考えてくれた方が良いかも知れんな。」


 守は挙式の時に受け取った結愛からの手紙の事について問いただした。


守「「好美に会ったら」ってどういう事だよ、お前あいつと面識ねぇだろ。」

結愛「えっとな・・・、ダルランさんを通して知り合ったんだよ。」

守「ダルラン?俺の知り合いにそんな名前の人いねぇぞ。」

結愛「悪い、光さんだよ、吉村 光さん。あっちの世界で結婚して苗字がダルランになったんだ。その光さんから紹介されたのが好美ちゃんって訳さ、まさかお前の恋人とは知らなかったぜ。」

真帆「「元恋人」ね!!今は真帆が彼女だもん!!」

結愛「悪かったよ、そうだよな、今は真帆ちゃんが守の恋人だもんな。そうだ、好美ちゃんで思い出した。今日は守にこれを渡しに来たんだった、忘れてたよ。」


 結愛は胸ポケットをごそごそとし始め、一通の手紙を取り出した。目の前の社長が言うにはこっちの世界と異世界とでは時間にかなりのズレが生じているらしく、あっちの世界に光や結愛が行ってから十数年後に好美が転生したと言うらしい。ただ転生者は歳を取らないと言うので亡くなった時からずっと姿は同じなんだそうだ。そんな中で好美が異世界で毎日忙しくしている事を伝えられ、遠くにいる恋人の手紙からもその事が伺えた。


守へ

 あの日ドジしちゃった所為でこっちの世界に来てからどれだけ経ってるか忘れちゃったけど今でも守の事を忘れた事は無いよ、元気でやっていたら嬉しいな。ただ結愛さんから新しい彼女が出来たって聞いて驚いた、少し嫉妬しちゃうけど「あの時」からずっと話せないままだったしこっちの世界に来ちゃったから仕方ないよね。それに私、今恋愛どころじゃないんだ、夜勤をしたりマンションや拉麵屋、コンビニのオーナーをしたりで忙しいから会えそうにもないので敢えてそっちの世界に戻ろうとは思わない様にしてるの。

 守、間違ってもこっちの世界に来ようとしないでね。じゃあ、お元気で。   好美


挿絵(By みてみん)


守「嘘じゃなかったんだ・・・、奇跡って・・・、あるんだな・・・。」


この手紙により一晩涙を流した守、これから2人(というより守)はどうなるのだろうか。

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