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工場長の人間性を疑う結愛達。


-④ 過去と変わらず-


 工場長への恨みを晴らす為の行動を開始しようとするメンバーは、狭い喫茶店の一角で悩みに悩んでいた。行動するにも何からすべきかを考える必要がある、正直に言うと工場長の関係者である聡と島木の存在は本当に大きく感じた。


挿絵(By みてみん)


結愛「1つお伺いさせて頂きますが、お兄さんは昔から怠惰な方だったんですか?」

聡「そうですね・・・、兄は小学生の頃、夏休みの宿題もなかなか手を出さずに毎年両親に怒られている様な人間でした。毎年の様に「来年はちゃんとする」と約束していたにも関わらずずっと同様の行動を繰り返していた事を覚えています。

 高校に入ってからはまともに通学する事も無く、毎日の様に狭い部屋で籠ってずっとテレビゲームをしていた様な人間でした。

これは私個人的な感情なのですが、きっと兄は人間として成長する気が無かったのだと感じたのです。

そんな兄がある日、「高校を辞めてある工場で働き始めた」と言っていました。それが「貝塚技巧」だったんです。それまでの兄とは打って変わって毎日必死に働いていましたので両親は一安心していました。

それから数年後、「働いている工場で工場長になった」と言って涙を流しながら帰ってきました、ただそれからなのですが日に日にブクブクと太りだしたのです。

兄の姿を見た私は嫌な予感がしました、「工場長になった事につけあがってまともに働かなくなってしまったのだ」と。

やはり私の嫌な予感は当たっていたのです、当時、風の噂ですが「貝塚技巧」が原因不明の経営不振に陥っているという事を聞いてしまいました。

それから毎晩の様に顔を赤くして仕事から帰って来る兄に質問したんです、「今の状態で大丈夫なのか」と。

すると兄はこう答えました、「お前には関係ない、全て上手く行く」と。」


 ここまでの聡の言葉を聞いて島木が口を挟んだ。


島木「我原先輩、いや聡さん、ここからは私が語っても宜しいでしょうか。」

聡「ああ・・・、そうだよな。俺より社内の人間であるお前の方が詳しいはずだよな、社長さん、宜しいでしょうか?」

結愛「勿論、宜しくお願いします。」

島木「工場長・・・、いや聡さんのお兄さんは定時に工場に来て定時に去って行くと言う行動をしていました。しかし決して作業場に入ることなく、事務所のデスクでずっと携帯を操作して取引先の電話に適当に受け答えをしていたのです。

 そのお陰で私は、在庫や設備の管理を中心に頭を悩ませていました。毎日の様に不必要な部品がやってくる上に、いつまでも老朽化した設備を改善・一新しようとしない。正直、腹を立てていました。

 遂に怒りが頂点に達した私は独断で設備等の改善を行い始めました、特に従業員からの要望が多かった安全対策と人員不足の問題を中心に。

 その時は貝塚社長に本当に感謝していました、防災用のネットや柵、そしてハーネスを与えて下さった事に。

 しかしそんな時に限り、珍しく作業場へとやって来た工場長は安全対策を見て「あれは何だ」と激昂したのです。きっとご自分の知らない所で変化が起こっている事が気に食わなくなったのでしょう、そのタイミングで入社してきたのが倉下・・・、いや好美さんでした。その時、好美さんの新入社員面接を行ったのは工場長ではなく私でした。

 工場長は面接の事を知っていたにも関わらず、取引先の方々とゴルフに興じていました。正直、工場に関してはほったらかしだったのです。

 好美さんが働き始めてから数日後、工場長は「経費が足らないのに何故人員が増えているんだ」と苦言をしてきました、だから私は言い返してやったのです、「経費の殆どはあんたが遊びに使ってしまっているじゃないか」と。

 その翌日でした、貝塚社長がご厚意で取り付けて下さった安全対策が全て取り外されていたのです。私は真っ先に工場長を問いただしました、「どうなっているんだ」と。

 その時私は工場長の返答に耳を疑いました、「従業員の安全などどうでも良い、それより必要なのは取引先と友好的に付き合う為の交際費だ」と言ったのです。

 それから数日後・・・、あんな事に・・・。守さん、大切な恋人をお守りする事ができなくて本当に申し訳ございませんでした!!」


 島木はずっと泣いていた、正義感の強さからだったのだろうか。


守「島木さん、貴方は好美を守ろうとした方の人間です。全ての罪は無責任な工場長にあるのです、決して謝らないで下さい。それより、俺と好美の大切な思い出の品を残して下さって本当にありがとうございます。」

島木「何を仰いますやら、私に出来る最低限の事をしたまでです。正直、何も出来なくて悔しい位ですよ。こうやって話し合っている間でも工場長が何食わぬ顔で遊びに出かけているという事に本当に腹が立っているのです、私で良かったら何でも仰って下さい。」


 島木の言葉を聞いてずっと考え込んでいた結愛が尋ねた。


結愛「島木さん、工場長だけに内緒にして小型の隠しカメラを仕掛けても良いですか?」


次回、「アイツ」も登場です。

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