㊷
会場の準備は続く・・・。
-㊷ 早すぎる再訪と新事実-
通常営業を止めて店自体を貸し切りにした龍太郎は普段のメニューではなく新郎新婦の為に特別に「満漢全席」の様な物を用意する事にした、本人は嫌だったらしいが致し方が無いので王麗が父である特級厨師・張朴に依頼して手伝って貰っていた。
龍太郎「けっ・・・、じじいに来させるほどの事じゃねぇだろ。」
張朴「師にむかって何を言うとるか、相も変わらず可愛げのない弟子じゃな・・・。さっきもわし1人に調理を押し付けるし・・・。」
王麗「もう・・・、2人共折角の宴なんだから喧嘩しないでよ・・・。」
龍太郎「仕方ねぇか・・・。」
店主は調理をしながら辺りを見廻した、先程まで裏庭にいた守しか見当たらない。
龍太郎「守、そう言えば他の連中はどうした?特に美麗なんだが・・・。」
守「もうすぐ来ると思うよ、俺先に来ただけだから。美麗なら桃と一緒に来るんじゃないか?2人でずっと呑んでたし。」
龍太郎「ずっと呑んでたって?あいつ・・・、手伝いの事忘れてやがんな。」
守「余興で緊張してたらしいぜ、俺で良かったら手伝おうか?丁度暇だから構わないよ。」
龍太郎はこの日使う円卓上の写真を守に見せた。
龍太郎「すまんがこの写真の通りにあそこに置いてある道具を並べてくれないか?」
張朴「すまんな守君、バイト代は弾んどくよ、儂の馬鹿な弟子がな。」
龍太郎「馬鹿とは何だ、くそじじい。早く作れよ。」
張朴「じじい使いが荒いの・・・、修業を終えて結婚したばかりの頃とは大違いじゃ。」
守「まあまあ、取り敢えずあれを並べるんだね。」
龍太郎「すまんが頼むわ。」
守が横に添えられた手袋をはめて円卓上に什器等の道具を丁寧に並べていると外から聞き覚えのある女性と男性の声が、しかも結構最近。
女性「お前な、昨日の内に書類済ませとくって約束だっただろうがよ。」
男性「俺の所為じゃねぇよ、後からリンガルスさんが追加して来たんだよ。俺じゃなくてお前のサインが必要な書類ばっかりだから何も出来なかったの。」
女性「願書へのサインはまだ日にちが大丈夫だろうが、ダンラルタ王国からの分がまだ来てないんだぞ。」
守「あの声・・・。」
守は聞き覚えのある声の主を確認する為に出入口に向かった、やはり最近はずっとスーツ姿の「あの2人」だ。
守「結愛に光明!!」
結愛「悪い悪い、光明が「仕事が終わらない」って呼び出すもんだからさ。挙式は無理でも披露宴は出席しようって急いで終わらせて来たんだよ。」
光明「幼馴染の結婚式だからな、やっぱり出席してやりたいじゃん。」
守「気持ちは分かるんだけどよ、お前らって確か・・・。」
結愛「何だよ、俺達の何を聞いたってんだよ。まさかお前・・・。」
守にぐっと近づいて来る結愛。
結愛「俺達が最近になってやっと英検3級に合格したのを知ってたのか?!」
守「え・・・、英検3級(中学卒業レベル)?大企業の社長と副社長が?今更?」
まさに「五十歩百歩」だが準2級(高校中級程度)を取得している守は思わず吹き出してしまった、きっと例の事を隠そうとしてジョークをかましているんだろう。守がそう思った瞬間、結愛が胸元から名刺サイズの合格証を取り出して見せつけた。
守「結愛・・・、そうやって出す奴じゃねぇぞ・・・。」
結愛「仕方ねぇだろ、苦手な英語を久しぶりに勉強してやっと取ったんだぞ。それにしても誰も居ねぇじゃねぇか、何してんだよ。」
守「まだ準備中だよ、美麗が来てないから人手が足りてないんだ。」
結愛「じゃあ俺達も手伝ってやるよ、なぁ光明。」
光明「当たり前だろ、龍さんだって早く終わらせて酒宴を楽しみたいだろうし。」
龍太郎「良いのか?大企業のお偉いさんに何か悪いな・・・。」
結愛「困った時はお互い様だろうがよ、これを運べば良いのか?」
龍太郎「ああ、冷めちゃいけないからそこにある蓋を閉めといてくれ。」
社長達が料理を運んでいると後から真帆と真美が店にやって来た。
真美「そこにいるのってあの「結愛」さん・・・?」
真美の言葉の意味とは・・・。




