㊶
披露宴を楽しむ友人達。
-㊶ 手紙が教えてくれた可能性-
披露宴会場で本日の主役の2人と共に笑いあり涙ありの宴が行われていた、余興として桃と美麗が新郎新婦席の2人の為にカラオケボックスに通い詰めて練習したと思われる最近でもベタだとされている某女性シンガーのとある曲を歌っていた。
香奈子「2人とも下手すぎー!!」
高砂で腹を抱えて笑う香奈子と裕孝、練習では上手に歌えてはいたのだがどうやら緊張を和らげようと酒を呑みまくったので2人共顔が赤くなり酔いが回っていたのだ。
最後の両親への手紙の時、2人共片親ずつだったのでウェディングプランナーの提案で2人から隆彦と光江への手紙となった。光江の離婚など懐かしきエピソードや、コンビニや病院での感動の再会について書かれた手紙の内容を聞いて母と父は涙を流していた。新郎新婦も同様に泣いていたらしい、「感謝と歓喜の涙」と言うやつだろうか。
守は感動の涙と共に終わった披露宴から有志での2次会への会場へと先に向かった、新郎新婦が会場に選んだのは勿論皆の集合場所とも言える「松龍」だ。
手紙の内容、特に最後の1文が気になったので龍太郎が何か知っているだろうと踏んだ守は店主に結愛からの手紙を見せて質問した。
守「龍さん、今時間大丈夫?」
龍太郎「ああ・・・、少しだけなら。裏庭に来いや。」
2次会の為の特別料理を作っていた龍太郎は1段落したので裏庭に守を連れて行き、煙草を取り出して燻らせ始めた。
龍太郎「どれどれ・・・、もう1度見せてくれるか?手書き・・・、の様だな。」
結愛直筆と思われるその手紙を受け取った龍太郎は守に質問した。
龍太郎「守、この手紙は誰から受け取ったんだ?」
守「会場の従業員さんからだよ、確か「結愛社長から手紙を預かっているのですが」と言って俺に渡して来たんだ。」
龍太郎「そうか・・・、その従業員の名札は見たか?」
守「ごめん、ただその人名札してなかったんだ。」
龍太郎「じゃあ、従業員ってどうして分かったんだよ。」
守「制服だよ、周りと同じ制服を着ていたんだ。」
龍太郎「そうか・・・、待ってろ。」
龍太郎は携帯を取り出して挙式と披露宴の会場を経営する会社へと電話を掛けた。
龍太郎「もしもし、私警視総監の松戸と申します。1つお伺いしたいのですが、そちらの従業員の方が名札をせずに業務をされる事はあるのでしょうか?」
偶然だが電話に出たのは、その会社の社長だった。
社長(電話)「有り得ないと思います、朝礼時に従業員同士で制服チェックをさせていますので。チェック項目に「名札がしっかりと付いているか」という物もございますから。」
龍太郎「そうですか・・・、分かりました。いや特に何も、ご協力ありがとうございます。」
電話を切った警視総監は守に結果を伝えた。
龍太郎「どうやら・・・、会場の人間じゃないみたいだぞ。」
守「そうか・・・、じゃあ、誰だったんだろう・・・。」
龍太郎「それは良いとして、これがその手紙なんだな?」
守「ああ・・・、ここが気になってよ。」
守は自分が気になっている部分を指差した、それを見た龍太郎は一服した。
龍太郎「結愛は面倒な社長だな・・・。守、今から言う事は秘密にしてくれ。」
店主は裏庭と店内の出入口を全て閉めてベンチに座った。
龍太郎「良いか、そこに書いてあるのは紛れもない真実だ。お前もこの前、街はずれで原因不明の竜巻が起こったのは知っているよな?」
守「確か・・・、物凄く大きかったって聞いたけど。」
龍太郎「そうだ、結愛と光明はその竜巻に巻き込まれて1度死んだ人間なんだ。貝塚財閥の意向で表沙汰になっていないが、今は乃木建設の社長が結愛の代わりをしているらしい。」
守「でもこの前、ここで飯食ってたじゃねぇか。」
龍太郎「本人が言うには異世界に行って魔法使いになったらしい、実は俺も訳が分からなくなってるんだ。」
守「もしかしてその異世界に好美が・・・?」
一気に繋がり始める「妄想物語」。




