㉙
王麗は緊急事態の発生に気付いた。
-㉙ 証言①-
王麗は娘に秘密の暗号について明かした後、辺りをずっと見廻していた。少し焦りの表情を見せているらしく、少し気を遣った美麗は母に声を掛けた。お客にバレてはいけない情報が含まれているかもしれないと思ったので勿論、中国語で。
美麗(中国語)「ママ、どうかした?」
王麗(中国語)「美麗、ここにあった唐揚げ弁当を見なかったかい?守君の所の真希子に頼まれて10人分用意したんだけど、1人前が見当たらないんだよ。」
美麗(中国語)「知らないよ、食べちゃったんじゃないの?」
王麗(中国語)「私はあんたと一緒に賄いの炒飯と父ちゃんが作り過ぎた麻婆豆腐を食べたじゃないか、本当に知らないのかい?」
美麗(中国語)「見て無いよ、さっきからずっと一緒にいたでしょ。」
王麗(中国語)「それもそうだね・・・、悪かったよ・・・。」
丁度その頃、警察署に着いた龍太郎は岡持片手に中に入って行った。そんな店主を美恵と文香が出迎えた。
美恵「あれ?龍さん、今日も出前なの?」
文香「私らは頼んでないけど・・・、誰?」
龍太郎「めっちゃんに頼まれて持って来たんだ、いるかい?」
文香「めっちゃんって・・・、聞いた事が無いけど誰の事かな?」
すると遠くから焦ってやって来た署長、「めっちゃん」こと姪家慎吾が急いで龍太郎を署長室に呼び込んだ。
慎吾「龍さん、やっと来たか・・・。腹減ったよ、早く早く。」
美恵・文香「署長!!」
龍太郎「ほら、こいつの苗字って「姪家」だから「めっちゃん」なんだよ。めっちゃんな、俺は嬉しいがいつも唐揚げ弁当ばっかりじゃバランス悪いぞ。だからそんな体形になるんだろうが・・・、偶には野菜炒め弁当とか頼んでだな・・・。」
慎吾「余計な事言わなくて良いから、早くこっち来て!!」
慎吾は龍太郎の背中を強く押して署長室の中に入って行った、そして中に入った瞬間中での会話を漏らさぬように扉をしっかりと閉めた後に2人は「警視総監」と「署長」の関係に戻った。
龍太郎「よし、誰もいないな?」
慎吾「はい、先程は大変失礼致しました、警視総監。」
龍太郎「構わない、俺達が同級生ってのは本当の事だからな。それにしても唐揚げ弁当を1つ持って来ておいて正解だったよ、やはりあの場で美恵ちゃん達が出て来ると思ったんだよな。」
そう、「松龍・唐揚げ弁当事件」の犯人は龍太郎だった。
龍太郎「あ、「宝田真希子様」って書いてんじゃん。こりゃ母ちゃんに一言言ってかないとまずい事になるし怒られちゃうな・・・。」
時すでに遅し、もう既に王麗はマジギレしている。
龍太郎は一先ず慎吾からの報告を聞く事にした。
龍太郎「さてと、状況を聞こうか。7000万円の入金があったのはいつか分かったか?」
慎吾「はい、こちらをご覧ください。結愛社長と銀行の店長のご協力の元で調べた義弘の口座の入出金履歴を印刷した物です。後例の「手紙」は実行犯以外の指紋無しです。」
龍太郎は慎吾から書類を受け取るとじっくりと目を通していった、特に入出金の日時。
龍太郎「指紋無しか・・・、そう言えばこの日付・・・、何か覚えがあるな。」
慎吾「あの警視総監、宜しいでしょうか。」
慎吾は龍太郎にある映像を見る様に促した、義弘の口座への入出金が行われた当時の銀行の監視カメラの映像だ。
龍太郎「確かお前の話だと代理人が銀行に直接金を持って来たって言っていたな。」
慎吾「はい、銀行の店長からそう聞いてます。」
龍太郎「「窓口」に直接だよな・・・。」
慎吾「大金ですので勿論そうかと、店長の連絡先を聞いてますのでお掛けになられますか?」
龍太郎「そうさせて貰おう、ここで話を聞きたい。」
慎吾は店長から手渡された名刺に書かれていた番号に電話を掛けてスピーカーに設定した、すると2人にとって聞き覚えのある声が響いて来た。
声の正体(銀行の店長)とは・・・。




