㉖
ひっそりと過ごす事に拘る龍太郎。
-㉖ 見え始めた真相–
龍太郎は少し焦りながらも冷静さを取り戻して会話を続ける事にした、本人からすれば署長を通して警視総監である事がばれないと良いのだがとただただ願うばかりであった。
龍太郎「本当に頼むぜ、中華居酒屋をしながらひっそりと過ごしたいんだからよ。」
署長(電話)「悪かったよ、それでどうしたって言うんだい?」
龍太郎が周りに誰もいないかを確認させると再び保留音が鳴った、どうやら署長室に向かったようだ。
署長(電話)「すみません、警視総監。」
龍太郎「良いか?よく聞いてくれ、今俺と母ちゃんは義弘が生前暮らしていたとされている山小屋にいるんだが、そこに何があったと思う?」
署長(電話)「食べカスがあるとはお伺いしておりますが他に何か?」
龍太郎「義弘の遺体だ、しかも死後硬直の様子から1週間は経っている可能性がある。そこでお前に何点か頼みたい事があるんだ。」
署長(電話)「どの様なご用件でも何なりと仰ってください。」
龍太郎「じゃあ一先ずお前が昼に食った天丼を俺にも食わせてくれ。」
署長(電話)「へ?天丼ですか?」
王麗「こんな時に馬鹿な事言ってんじゃないよ。」
電話の向こうにいる署長にも聞こえる位の大きな音を立てて王麗が拳骨した、この夫婦の主従関係はいつでも変わる事はない。
龍太郎「痛ってぇなぁ・・・、母ちゃんは相変わらず強すぎんだよ。」
王麗「あんたが下らない冗談を言うからだろ、美麗が聞いたら呆れるに決まっているね。」
龍太郎「まぁ、一先ずだ。天丼は冗談として取りあえず義弘の遺体を検死と司法解剖してくれるか?出来るだけ正確に死んだ日を知りたい。」
署長(電話)「分かりました、遺体を取りにすぐに向かいます。」
龍太郎「それとだ、義弘の個人口座の入出金履歴を調べてくれ。ここ1カ月の物で構わない。」
署長(電話)「貝塚財閥の結愛社長に頼めば何とかなるでしょう、聞いてみます。」
龍太郎「急いでくれ、頼む。それと、この前の犯人とまた話がしたいんだがいいか?」
署長(電話)「勿論大丈夫です、なるべく早く手配致します。」
王麗「父ちゃん、我原 悟はいつ逮捕するんだい?」
電話をきったばかりの龍太郎に間髪を入れることなく王麗が声をかけた。
龍太郎「証拠が揃い次第だ、これで守と好美ちゃんの無念も晴れるだろう。」
2人が山中で捜査をしていた前日、そう、夫婦が隠しマイクを通して貝塚技巧の従業員と思われる客の会話を聞いていた時だ、守は真帆と隣町の居酒屋で呑み直していた。真帆が帰れなくなってはいけないと考慮した結果だ。
真帆「こんなに呑んだの大学の新歓以来だよ、楽しいね、守兄ちゃん。」
守「楽しいからって呑みすぎるなよ、明日休みなのか?」
真帆「休みじゃなくても関係無いもん、今が楽しかったらいいんだもん!!」
その言葉通り真帆は後先も考えずに呑みすぎたらしく、ふらふらになっていた。守は系に電話で真帆の家の場所を聞いて送っていく事にした。
言われた通りの場所に着くとすぐさまインターホンを鳴らした、すると中から真帆と瓜二つの女の子が出てきた。
女の子「守兄ちゃん、久しぶりだね。」
守「もしかして、真美ちゃんか?」
そう、そこにいたのは真帆の双子の妹である森田真美だった。大人になってもそっくりなのはやはり変わらないようだ、これが一卵性双生児というやつなのだろうか。
真美「うん、真美だよ!!・・・って、お姉ちゃんふらふらじゃん。」
守「かなり呑んじゃったみたいでね、送って来たんだよ。」
真美「ごめんね、迷惑かけたね。今度お礼とお詫びさせるからね。」
守「そこまで気にしなくてもいいよ、俺も学生の時よくあったし。」
そう、今の真帆みたいに何回も好美を自宅まで送って行った事があったのでこういった事には慣れてしまっていた。
守「ははは・・・、そうだったよな・・・。」
不意に好美の事を思い出した守は少し切ない気分になっていた。
まだ思い出に浸る守。




