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夜勤族の妄想物語3 -6.あの日の僕ら2~涙がくれたもの~-  作者: 佐行 院


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本格的な捜査に乗り出した夫婦。


-㉕ 釈放後の様子–


 次の日の朝から龍太郎と王麗は行方不明とされていた義弘が暮らしていたと噂される山小屋へと向かった、暗い木々の中にひっそりと立つその山小屋は何処からどう見ても廃墟としか思えなかった。


王麗「父ちゃん、気味が悪くてどう見ても人が住んでいたなんて思えないよ。私、何か寒気がしてきたんだけどね。」

龍太郎「敢えてこういった場所を選んだんだろう、でないと行方を眩ませることなんて到底出来ないからな。ほら母ちゃん、見てみな。」


 龍太郎は少し遠くの方向を指さした、よく見てみるとコンビニのおにぎりの食べカスが捨てられている。何故か全部「ツナマヨ」だったのが少し気になったのだが。


王麗「あいつ、魚が好きな奴だったかね。」

龍太郎「ここに釈放されてすぐだったはずからほぼ無一文だったんじゃないか?これがやっと買える物だったんだろう。」


 それにしても不可解な事が一点あった、食べカスと一緒に何故か重箱が放られていたのだ、しかも1つだけではなく何個も。ただその数個もの重箱に共通して言えるのは全てが綺麗だった事だ、米一粒も入っていた形跡が無い。


王麗「おかしくないかい?お握りを買うのがやっとの奴がお重の弁当なんて食べていたとは思えないよ。」

龍太郎「お重だからって食い物が入っていたとは限らんだろう。」

王麗「それって・・・、まさか・・・。」

龍太郎「ほぼビンゴで間違いないようだな。」


 如何にして釈放されたばかりの義弘が生活してこれていたかが見えてきた時、山小屋の隅でとんでもない物を見つけてしまった王麗は思わず叫び声を上げてしまった。


王麗「あんた!!大変だよ!!」

龍太郎「母ちゃん、ここにいるのが周りの連中にばれたらどうするつもりだよ。」

王麗「それどころじゃないよ、あれ・・・。」

龍太郎「何だってんだよ・・・、って嘘だろ・・・。」

王麗「父ちゃん、これどこからどう見ても。」

龍太郎「ああ・・・、間違いなさそうだ。」


 2人の目線の先に転がっていたのは何と孤独死したと思われる義弘の遺体であった。


龍太郎「異世界に行っちまったっていう馬鹿げた噂も出ていたがやっぱり嘘だったな、もし本当だとしても証明できる奴がいない。現に目の前に転がっている義弘本人が証明しているんだからな。」

王麗「でも父ちゃん、遺体以外に見つけないといけない物があるだろう。一先ず遺体については署長に言っておくのが一番なんじゃないのかい?」

龍太郎「そうだな、俺達の正体を知る数少ない人間だからな。あいつに任せておけば大丈夫だろう、ついでに母ちゃんが気になっていることも調査させてみるか・・・。」


 龍太郎は携帯を取り出して署長の元へと電話した、ただ他の署員が出たので一先ず松龍の店主として電話をかけた事にした。


挿絵(By みてみん)


龍太郎「あ、もしもし。松龍の松戸ですが、署長さんはおられますか?今日の弁当の事聞いていませんでしたので。」


 勿論嘘だ、龍太郎と署長の間では「弁当」とは「緊急連絡」を意味する暗号だった。署長は1度も松龍で弁当など買った事はない。しかし、それがまずかったらしい。


署員(電話)「署長ですか?今日は天丼を食べていましたけど。」


 「あいつめ・・・。」と思いつつ龍太郎は何とか誤魔化すことにした。


龍太郎「そうですか、昨日ご予約の電話を頂いていたんですがね。」

署員(電話)「あらま、本人忘れっぽいですからね。あ、丁度昼休憩から帰ってきましたので替わりますね。」


 少しの間保留音が鳴り響いた後に署長に替わった。


署長(電話)「申し訳ございません、お待たせいたしました!!」

龍太郎「馬鹿野郎!!正体がばれたらどう責任を取るつもりだ、周りに誰かがいる時はいつも龍さんと呼んで普通に接してくれって言っているだろうが。」

署長(電話)「そうだったね、悪かったよ、龍さん。」


対応しきれてない署長。

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