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やはり真帆の言葉を受け止めきれない守。


-⑬ 何も失いたくない-


 少し気まずく、暗くなってしまった雰囲気を何とかしようと2人は店を出て屋外へと出た。外の空気を吸いながら散歩でもしようという事なのだろうか、店を出ると2つ先の交差点の向こうから何となく良い匂いがして来る。空腹により匂いに気づいた真帆は守の腕を引いて近辺にあるのぼりを指差した。


真帆「守兄ちゃん、お腹空いた。向こうの公園にキッチンカーが来ているんだって、行ってみない?ほら、お酒の屋台もあるみたいだよ。真帆、ケバブでビール呑みたい。」


挿絵(By みてみん)


 偶然にも2人は歩きで来ているのでビール片手にケバブ等の料理を楽しもうという事になった、汗が滲む程の今現在の暑さでは一番欲しくてたまらない組み合わせだ。

 ただ2人には1つ気になる事があった、先程からパトカーのサイレンが鳴り続けていたのだ。


真帆「何だろ、うるさいね。」


 真帆の言葉を聞いた買い物帰りの女性が声を掛けた、見た目50代位の感じだ。


女性「あれね、信号無視を続けてる暴走車がまだ止まって無いんだって。」

真帆「何それ、怖いですね・・・。」

女性「まぁ心配しなくても良いんじゃない、この歩道歩いていれば大丈夫よ。」


 そんな中、遠くのパトカーからスピーカーの警官の声が響いていた。ただ何処からか頼りなさを感じる台詞なのだが。


警官①「そこの車、止まりなさーい・・・。えっと・・・、止まらないと・・・、お前のアイス食べちゃうぞ・・・!!」


 勿論そんな言葉で暴走車が止まる訳が無い、ただスピーカーからは別の警官の声もした。どうやら、先輩警官らしいのだがこっちも何となく頼りない。


警官②「馬鹿かお前は、アイスは駄目だろう。ほら、止まらないとお前の・・・、ラムネ飲んじゃうぞ!!」

警官①「先輩もじゃないですか、ラムネって何なんですか。」

警官②「暑い時はラムネだろ、俺はそうだぜ。」


 警官達の頼りないやり取りを響かせている中、街中の警察署では美恵と文香が調べものをしていた。特に美恵は気になる事が数点あるらしく、長年のパートナーである文香の力を借りる事にした。


美恵「文香、ちょっと良い?」

文香「何、どうした?」

美恵「好美が働いていた工場の我原 悟って何処に住んでいるか分かる?住民票が見つからないのよ。」

文香「この前偶々聡さんのカフェに行ったんだけど、一緒には住んでいないみたいよ。それで私聞いてみたんだけど、今の居場所は分かって無いんだって。それもそうとさ、この盗難の被害届が出てるこの写真のやつなんだけどどっかで見た事あるのよね。」

美恵「私も最近見たような、本当にごく最近。」

文香「そう言えばさ、少し引っ掛かる事があるんだけど。例の工場ってずっと前運搬用のトラックが一気に消えたって事件があったじゃない、あの事件の時期って何かと被る様な気がしてならないのよ、美恵さんは分かる?」

美恵「そうね・・・、ちょっと待って。」


 美恵は分厚いクリアファイルを取り出して数ページ捲って文香に見せた。


美恵「ほら、この時期じゃない?ピッタリだもん・・・。」

文香「怪しいわね・・・、調べがいがあるわ・・・。」


 そんな中、2人の近くの警察無線から応援要請が出た。

 美恵と文香が覆面パトカーで要請に応えて警察署を出た頃、守と真帆はキッチンカーが止まっている公園まであと交差点1つという所まで来ていた。どうやら腹を空かせる為、時間をかけてゆっくりと歩いていた様だ。目の前の歩行者用信号は「青」。


真帆「信号「青」だよ、早く行こう。」


 右からの爆音に気付いた守はこの光景に既視感を感じた、しかし直接自分に関する物ではなかった。ただ考える間もなく守は真帆の腕を掴んで歩道へと導いた、その後数秒もしない間に例の暴走車が信号を無視して通り過ぎて行った、腕の中で真帆は泣いていた。


真帆「守兄ちゃん、ありがとう・・・。真帆、守兄ちゃんとまたお別れするかと思った。」


いつか、誰かが流した涙が救った命。

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