⑫
久々の初デート(?)はどうなるのだろうか。
-⑫ 試着-
2人は待ち合わせ場所からゆっくりと歩きだした、別に恋人同士と言う訳でも無いので歩幅を合わせたり手をつないだりと言う心遣いは全く持って無い。
朝早い時間帯が故か、そこら辺中通勤中のサラリーマンやOL、そして通学中の学生達が右往左往していた。
そんな中、互いに休みだった2人は一先ず緑色の看板で有名な全国チェーンのカフェに入った。珈琲の良い香りがそこら中に広がる中、2人は珈琲やサンドイッチ、そしてクロワッサンを頼んで屋外のテラス席へと向かった。
真帆「今日、何しよっか?」
突然決まった事なので別に予定が決まっている訳では無い、しかし実際に行動しながらこの後の予定を一緒に決めるのも楽しみの1つと言っても良いのではないだろうか。
しかし、今でも好美以外の女の子と出かけるイメージが無かったから守は全くもって案が浮かばなかった。
守「真帆ちゃんに任せるよ、何がしたいとかある?」
真帆「真帆、守兄ちゃんと服見に行きたい。」
守「う・・・、うん・・・。」
守は少し抵抗した、初めて好美と出かけた時も衣服を買いに行った事を覚えているからだ。でも背中を押してくれた好美の気持ちには少しでも応えたいという思いがあった。
守は念の為に財布と相談し始めた、一応財布の中には十分な資金が入っていた。しかし、あの時みたいに奮発する必要があったのだろうか。
守「まぁ・・・、良いか・・・。」
守はこう呟きながら財布をポケットにしまった。
真帆「何が良いの?」
どうやら守の独り言は真帆に聞こえていたらしい。
守「何でも無い、行こうか。」
真帆「うん・・・。」
真帆は少し寂しそうな顔をしながら店へと向かった。
店へと入ると、真帆は数点ほど手に取って姿見を見ながら合わせていった。守は今度こそ失敗するまいと必死について行った、前回は別の場所で服を見ていたので好美に怒られた事を覚えていたからだ。
真帆「守兄ちゃん、真帆試着したい。」
守「勿論良いよ、しておいで。」
真帆は手に取った数着ほどを持って試着室へと入り、数分程ゴソゴソと動いた後に守に声を掛けた。
真帆「守兄ちゃん、目の前にいる?」
守「うん、いるよ。」
真帆「新しい服を着た真帆の姿見てくれる?」
守「勿論、見るよ。」
真帆「守兄ちゃん・・・。」
真帆は試着室のカーテンを開きながら意味深げに聞いた。
真帆「ずっと真帆と一緒にいてくれる?」
真帆の目には涙が浮かんでいた、これは心からの告白だった。
真帆「守兄ちゃん・・・、大好きだよ・・・。もう真帆から離れないで。」
守は数秒程考え込んだ、やはり心の片隅に好美がいる守は少し抵抗を覚えていた。やはり新しい恋には踏み出せそうにない。
守「真帆ちゃん・・・、俺・・・。」
真帆「やめて!!これ以上は聞きたくない!!お圭にも言われたんでしょ、もう過去の恋愛じゃん、いつまで引きずるつもり?!」
守「うん・・・。」
真帆「お願い、少しずつでも良いから真帆の事好きになってよ。一番でなくても良いから。」
守「悪い・・・。」
守はどれだけ女の子を泣かせるつもりなのだろうか。