2.素頓狂な出会い
俺の通うフォークス学園は、ここサクリフィキウム王国の中心的な教育施設だ。
教えられる内容は実戦向きの知識や動きが多く、いわゆる士官学校に近い趣を感じる。にも関わらず、通う生徒の3割程度はこの国の貴族の子息だ。
"戦いを理解することは民を理解すること"と考える貴族は思いのほか多く存在し、そういう者達が主に国を支えている。
俺自身はというと、この国の宰相を父に持つ。
俺はこの学園に通うことにあまり乗り気ではなかったのだが、父の意向であえなく入学することになった。
その際、入学試験や面接などはなく、いわゆる"コネ"で入学したという形になってしまった。
そういう面でも、俺にヘイトを向ける生徒も少なくはない。
「今日は……ここらで食べるとするか」
俺は学園外に出ると、敷地内にある林の中に入り腰をおろし、弁当の入った包みをほどく。
重箱の中には、とても昼食とは思えない量ものが詰まっていた。それを見て、俺はため息をついた
「こんなの持って、食堂になんて行けるわけがないよなぁ…」
両親は、過去のとある事件がきっかけで、俺に対し異常なほど過保護になっている。
俺自身もその事件が引き金となり、"ある魔法"の研究に今までの生の約半分(7年ほど)を捧げた。
努力し、寝る間を惜しんで尽力し行き着いた先は、そんな魔法は実現不可能だという現実だった。
それからの虚無感が今となり、先の講義のときのように、ときどき俺は黄昏れている。
多すぎる昼食の量にやれやれと思いながら、フォークを手に持ち野菜にその尖端を突き刺そうとすると…。
『ガサ……ガサガサ……』
と、近くの草むらから奇妙な物音が聞こえてきた。
(なんだ、猫か……?それとも先客が居たのか……?)
音の方向に目をやると、より一層その音は強くなり、近付いてくる感じがする。
その様子を不審に思い、身構えると、音の正体が飛び出し、その姿を現した。
「なぁっ──────!?」
その姿は、華奢で背丈の小さな身体を持つ少女。
色白な肌、浅葱色の腰まで届く長い髪の毛、金色の瞳を持つ少女。
この学園の制服は着ていなく───制服は着ていないというか────
──全裸だった。