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067 周知

「あの……すみません」

「………」


 僕は勇気を出して厳つい顔をした中年の男に声をかける。だけど……無視されているのか、反応が無い。僕は先程よりも大きな声を出すために大きく息を吸った。


「あの!」

「あーもう、うるせえな! てめぇと話すことなんざねぇよ! とっとと失せろ!」

「そこをなんとか……」


 邪険に扱われるのは分かっていたけど、実際に怒鳴られると怖いし辛い。思わずビクリと震えてしまう体を叱咤して、僕は言うべきことを言う。


「僕たち『融けない六華』は、6日後『万魔の巨城』の攻略に出発します。なにか『万魔の巨城』について情報があったら教えてください!」


 僕は殴られて追い払われるのも覚悟の上で中年の冒険者に大声で告げる。頭は決して下げない。むしろ、睨むような気持で男の目を見つめる。僕は今『融けない六華』のリーダーだ。個人的には頭を下げることに抵抗は無いけど、それでは『融けない六華』の全員が下に見られてしまう。僕は今や、気安く頭を下げることは許されない。こんな態度では相手によく思われないし、情報が貰えるなんてことは無いけど、もし貰えたらラッキーだし、最低限の用事は果たせる。


「あぁ!? てめぇらこの間やっとレベル4ダンジョンを攻略したところだろうが! 『万魔の巨城』はレベル7だぞ、くそがっ! 最近の若い奴らはダンジョンを舐めてやがる!」


 僕の目の前で荒ぶる厳つい男は、レベル6パーティ『穿つ明星』のメンバーだ。『穿つ明星』は、もう長いことレベル6で足踏みしている。そろそろレベル7ダンジョンに挑戦するのではないかと、もっぱらの噂だ。きっと『万魔の巨城』の情報も集めているだろう。


 高レベルパーティ『穿つ明星』が長年かけて集めた情報だ。その情報は、たしかに喉から手が出るほど欲しい。だけど、情報の対価になにを要求されるか……恐ろしく高くつきそうだ。『穿つ明星』の持つ情報はたしかに気になるけど、今回の本命はこっちじゃない。6日後、僕たち『融けない六華』が『万魔の巨城』を攻略に向かうという情報を相手に伝えることだ。


 僕が最も心配している要素が“人”である。レベル7のダンジョンは魔境だ。この間のレベル3ダンジョンのようにダンジョン内に潜み、別のパーティを襲うレッドパーティは、さすがに居ないと思うけど、攻略中に別のパーティに出会う可能性は十分にありえる。僕が今しているのは、事前に僕たちが『万魔の巨城』へ向かうことを周知して回っているのだ。少しでも他のパーティとバッティングすることを避けるためである。


 僕は一度『万魔の巨城』の攻略に付いて行ったことがあるし、地図も持ってる。『万魔の巨城』攻略に必要な情報は最低限揃っていると判断しても良いだろう。相手がダンジョンのモンスターでもトラップでも、たとえボスであろうと問題は無いと言っていい。僕が警戒しているのは、ダンジョン以外の要素。“人”だ。


 僕はこの“人”という不安要素を排除したくて、6日後『融けない六華』が『万魔の巨城』を攻略すると冒険者たちに周知しているわけだ。ようするに、オレたちが行くからお前らは来るなよと喧伝しているのだ。だいぶはた迷惑な話だけど、これが高レベル冒険者の常識らしい。


 冒険者たちは、とりわけレベル6以上の高レベルの冒険者たちは、ダンジョンを独占したがる傾向がある。己の力だけでダンジョンを攻略したと証明したいのだ。だから、他のパーティが来ないように、己の向かうダンジョンを事前に表明する。自分たちならこのダンジョンを攻略できると、自分たちの実力を知らしめたいのだ。


 今回は、この冒険者の習性を利用する。僕たちが『万魔の巨城』を独占する。


「いいか若造よく聞けよ! ダンジョンの認定レベルも! 冒険者の認定レベルも! 伊達じゃねぇんだ! てめぇらの認定レベルはまだ3とか4だろ? それがレベル7のダンジョンに挑むなんて正気の沙汰じゃなぇぞ!」

「はい……」

「10年だ! オレたちがレベル6に認定されてから10年! オレたちはレベル7の壁を超えられねぇ……。それだけ高いんだ! レベル7の壁はよぉ! てめぇら甘く見てるんじゃねぇか?!」


 怒鳴られて殴られるかと思えば、よく聞けば僕たちを心配してくれているようだ。『穿つ明星』の『兄貴』の二つ名を持つ冒険者。見た目すごく怖いけど、意外と良い人なのかもしれない。


「んだ!? その目はよぉ! これだけ言っても止めるつもりは無いってか!?」

「はい!」

「くそっ! 最近のガキは生き急ぎ過ぎだ……バカ野郎が……!」


 『兄貴』は一瞬目を伏せ、吐き捨てるように言うと、そのまま冒険者ギルドの外に行ってしまった。僕たちを心配してくれる『兄貴』には悪いけど、僕たちの覚悟はもう決まっているのだ。ここまできて引くわけにはいかない。ルイーゼが、イザベルが、マルギットが、リリーが、ラインハルトが、僕のために危険を顧みず覚悟を決めてくれた。その覚悟を裏切ることなんて、僕にはできない。


 僕は去り行く『兄貴』の背中に、ちょこんと少し顎を引く形で頭を下げるのだった。

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パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
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