↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/84

064 光

「僕は……そうは思わないよ」


 僕は初めてルイーゼの言葉に異を唱えた。ルイーゼやラインハルトの言い分も分かる。ルイーゼだけではなく、ラインハルトまで賛同しているということは、それだけ勝算も高いのだろう。僕の言ってることは、まったくの見当違いの間抜けな間違いで、僕が必要以上に怯えているだけかもしれない。でも、それでも、僕がここで流されてはいけない。以前と同じ失敗は繰り返さない。たとえその結果パーティのメンバーから不愉快に思われても、僕はここで一度踏み止まらなくてはいけない。


「だから、1つずつ行こうよ。次はレベル6のダンジョンにしよう。その次にレベル7のダンジョンに挑戦してみよう。きっとすぐだよ」


 なにも急ぐ理由なんて無い。無理をする必要なんてどこにもないのだから。


「それじゃあ遅いかもしれないじゃない……」

「え……?」


 遅い? ルイーゼはなにを言ってるんだろう?


 僕たちのダンジョン攻略の速度は、たしかに慎重な歩みだけど、他の冒険者パーティからしたら、異例の攻略速度と言っていい。誰かに比べて遅れているということはないはずだ。『極致の魔剣』のダンジョン攻略速度をも上回っているだろう。


 たしかに、僕たちの余裕の上に余裕を持たせたダンジョン攻略は、【勇者】の力を持つルイーゼからしたら遅々としたものだったかもしれない。レベル5のダンジョンボスを一撃で屠ってみせたルイーゼだ。もしかしたら、ダンジョンの攻略に物足りなさを感じているのかもしれない。


 それで、一つ飛ばしという荒業をしようというのだろうか?


 しかし、ルイーゼの顔に浮かんでいるのは、不満ではなく不安そうな焦燥感だった。まるで、なにかに怯えているようにも見える。


「とにかく! 次に行くのは『万魔の巨城』よ! これしかないわ!」


 なぜルイーゼはそんなに『万魔の巨城』に拘るのだろう? ルイーゼの言葉に思わずいつものように頷きそうになったけど、僕はなんとか踏み止まる。ここで流されてはいけない。人の判断に従うのはとても楽だ。自分が責任を負わなくていいから。でも、それじゃダメなんだ。僕はもう、自らの口を閉じて楽に流されて後悔なんてしたくない。


 僕はこのパーティのリーダーだ。リーダーである責任を果たさなくちゃいけない。


「やっぱり、いきなりレベル7のダンジョンに潜るのは危ないよ。もっといろいろ経験してから……」

「経験なら大丈夫よ!」


 ルイーゼが自信たっぷりに言う。すごいな。僕もそれだけ自分を信じることができたらいいのに……。


「なんでそんなに……?」


 気が付いたら、僕はルイーゼに問いかけていた。どうやったらルイーゼのような自信を身に付けることができるのだろう?


 僕はこのパーティのリーダーになっても、これほどの自信は身に付かなかった。むしろ、自分の決断がパーティを全滅に追い込むこともあると思うと、僕のちっぽけな自信など木っ端微塵に消し飛んでしまう。


 それでもなんとか自分を奮い立たせてリーダーの役割を果たしてきたけど……。


 僕は弱い自分のことが嫌いだ。昔からそうだった。いつもアンナの言うことを聞いてばかりで主体性が無くて、すごく情けないし、要領が悪いし、かっこわるいヤツだと思う。とてもルイーゼのように自分のことを信じられそうにない。だから、目が眩むほど眩しく見えた。思わず憧れてしまった。欠点ばかりの嫌いな僕だけど、ルイーゼのように、自分のことを信じられる自分になりたかった。それが自分のことを“華”と誇れるようになる第一歩のように思えてしかたなかった。


 僕の憧れの視線と、ルイーゼの意思の強そうなまっすぐな視線が交差する。どれほど見つめ合っただろう、ルイーゼの視線がふっと緩んで、柔らかいまるで僕を包み込むような優しい視線へと変わった。僕の鼓動が高鳴るのを感じた。


「あなたがいるから」

「え…?」


 僕がいるから…? ルイーゼの眩しいほどの自信の正体は僕だった。ルイーゼにそれほどまでに信用されて嬉しい気持ちと同時に、不安に押し潰されそうになる。僕はルイーゼに信用されるような、そんな大層な人間じゃない。臆病だし、間抜けだし、ルイーゼたちの幼馴染の輪の中に本当に入れるか不安だったし、長い年月と共に育まれた美しい幼馴染の絆に嫉妬する醜い男、それが僕だ。


「あなたがいるから、大丈夫よ。あなたがいるから、あたしたちは迷わずに進むことができる」

「僕がいるから……」

「そうよ。あなたは、暗い道を照らして、あたしたちを導く光だわ」

「ッ……」


 僕はルイーゼの言葉に目頭が熱くなった。


 僕には、高レベルのダンジョンで通用するような戦闘能力も無ければ、ポーターとしても半人前のポーターもどきだ。そんな僕が唯一できること。それが、これまでの経験や知識を活かして、地道な情報収集を繰り返し、パーティの行く先を少しでも明るいものにすることだけだ。


 正直な話、僕はダメで無力なパーティリーダーだろう。


 でも、ルイーゼの言葉で報われた気がした。初心を思い出すことができた。そうだ。僕は皆の行く先を照らし、導く光になりたかったのだ。

よろしければ評価、ブックマークして頂けると嬉しいです。

下の☆☆☆☆☆をポチッとするだけです。

☆1つでも構いません。

どうかあなたの評価を教えてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓こちらが新作連載小説になります。よろしくお願いします。↓
パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
― 新着の感想 ―
[気になる点] これが前にラインハルトが言ってた杞憂? そのラインハルトさえ、大して期間置いてないのに、 もう無謀になってるじゃないか 勇者スキルの副作用で、気が大きくなるってことかな? 主人公をリー…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。